郵便局で「IIJmio」を販売する狙いは?――200万契約を目指し、IIJは次のフェーズへ:MVNOに聞く(2/3 ページ)
個人向けの格安SIMサービスではシェア1位を獲得するなど好調を維持しているIIJ。郵便局での取り扱いも話題を集めている。同社はMVNE事業にも注力しており、個人を含めて2016年度に200万契約を目指す。IIJの最新動向やその背景を聞いた。
U-mobileには提供したが、IIJmioではデータ定額は予定していない
―― U-mobileが始めた定額プランも、その一例でしょうか。確か、IIJさんはトラフィック的な観点で「やらない」とおっしゃっていた記憶があります。
佐々木氏 U-mobileさんは、これまでもほかのMVNEさんとパートナーシップを結び、定額プランを出されていました。IIJにも、そういったプランを(ユーザーに)ご提供したいという、強いご要望をいただいていました。条件についてはビジネスのお話になってしまいますが、「ぜひ」とご提供しています。
―― でも、IIJmioではやらない。
佐々木氏 われわれのプランとしては、ないですね(笑)。われわれのプランに対するポリシーと、パートナーのポリシーは当然違ってきます。そこはパートナー第一。あとはお金の問題が別途ありますが、われわれのシステムが許す限りはご提供します。
―― MVNEを強化するという方針は2016年から出したものなのでしょうか。
佐々木氏 今年度(2016年度)200万回線ということで、大きな成長をしなければなりません。今後の成長に向け、1社でできることはやっていきますが、多くのパートナーさんにご利用いただける柔軟さやベネフィットを出していくというのが、大きな方針です。ただこれは、直近でそのように転換したというわけでもありません。
堂前氏 昨年(2015年)から他社とやっていくという戦略はありました。こういったことは、「やりましょう」となっても来月からできるわけではなく、お値段の交渉からシステムの連携までいろいろとあり、それが実りだしたのが最近だということです。私たちとしても今年に入ってアクセルを踏んだという感覚はなく、以前の成果が実っているという感じですね。
―― 成長という意味だと、ユーザーを増やす方向だけでなく、ARPUを上げる方向もあると思います。こちらはいかがでしょう。
堂前氏 最近では、コンテンツも強化しています。コンテンツ会社とタイアップして、ユーザーの方々にご提供する。IIJのカラーは真面目なので、変にひねった料金は作りません。初年度は安いが2年目から高くなるということもやらず、トータルで本当に適切な訴求なのかを考えています。
ですから、コンテンツをやるにしろ、端末をやるにしろ、これはこのお値段と割り切れる形にしています。
端末はミドルレンジを2、3機種そろえる
―― 端末の販売に関しては、どのような方針なのでしょうか。
堂前氏 端末自体もかなり伸びていて、これ自体はいいことです。IIJでは、端末を何でもかんでも扱うというより、ミドルレンジで2、3機種をそろえる形にしています。われわれの端末販売は、マニアな方に選んでいただくというより、端末がないと困るという入門者に向けています。まずはこれなら安心という形でご提供することが多いのです。それが1機種だと欠品の問題が出てしまうので、2、3機種が常時入れ替わる形にしています。10機種近くあっても選べないですからね(笑)。だったらそこまで手を広げるより、今はこれと選んでもらえる方がいいと思っています。
―― 伸びているということは、よりライトなユーザーが増えているということですね。
堂前氏 いろいろと思うところもありますが(笑)、良かった、悪かったではなく、変わってきているというのが実情です。メーカーさんともいろいろとお話をしていて、商談だけでなく、IIJmio meetingに来ていただくようなお付き合いもしています。
―― ネットワークの機能の検証としてのお付き合いもありそうですね(笑)。
堂前氏 それもありますね。うちに持ってくると、スペックシート以上のことを調べだしてしまうので(笑)。スペック表でも、「この表記はおかしくないですか?」「この機能はどうなっているんですか?」などと伺うこともあります。そうするとお返事をいただけることもあり、それはいいことだと思っています。
例えば、最近では各社大丈夫になってきましたが、初期のころはメーカーさんがBandの番号ではなく「800MHz」というような表記をしてくる。では、「それはBand 6ですか、Band 19ですか」と聞くと、「本国に確認してきます」となってしまう。そういったところでも、お互いにとっていいところに着地できます。
郵便局での取り扱いを始めた背景
―― 8月から郵便局での取り扱いも始めます。これについては、どういった経緯があったのでしょうか。日本郵便とMVNOの話は、以前から臆測が多かったこともあるので、あらためて経緯を教えてください。
政田氏 昨年(2015年)の夏ごろから、弊社がご提案していました。郵便局のターゲット層はご高齢者や主婦の方ですが、ここは弊社がリーチしづらかったところもあります。また、エリア的には地方をカバーできます。ターゲット層とエリアの掛け算が必要だったということです。
―― 念のための確認ですが、郵便局は販売店という位置付けですねよね。
政田氏 左様です。サポートも基本的には弊社が行います。最初の地域は東海エリア4県で2050局から、全体的には2万4000ほどあるので約1割です。
郵便局には資料請求のカタログを置き、お電話でも受け付けをする形を取りました。まず弊社にご連絡いただき、お客さまには申込書一式をお送りします。郵便局ではこの形が一番慣れていて、展開もしやすいということでこういった形になっています。紙で申し込めるというのもいいですね。申し込まれる方は、必ずしもインターネット環境をお持ちではないので。
―― むしろ、カタログ販売に慣れているということですか。
政田氏 中古車だったり、ウォーターサーバだったりと、なかなかそこに現物を置くことができないものを扱っています。始めるにあたりいろいろとお話はしましたが、こういう形が、郵便局のお客さまにとっては一番いいということです。
―― 将来的には、郵便局で即時MNPができるようになったりもするのでしょうか。
佐々木氏 まだ始まってもいないサービスなので(笑)。始まればいろいろなお話が出てくると思いますが、まずは……ですね。
堂前氏 あちらも初めてなので、慎重な部分はあると思います。サンプルも、全部用意すると2000台になってしまうので(笑)。
政田氏 予備まで考えると5000台ですね……。
―― 確かに、SIMフリー端末でその台数はさすがに厳しいですね。サンプルだけで総販売数の数%になりますし(笑)。ただ、大きな一歩であることは確かです。
堂前氏 今までにないタッチポイントということは、大きいですね。当然、まだ全国津々浦々まで置けるわけではなく、ビックカメラさんのように売り慣れてもいないので、ジワジワと広がっていくイメージは持っています。その割には話題が先行してしまい、ちょっとドキドキしているのですが(笑)。
佐々木氏 海外だと、MVNOが郵便局をやっているのは珍しいケースではありません。事業者がさまざまな取り組みをしていて、ポテンシャルも高いと思います。海外事例でいうと、郵便局はバンキングをやっているところがやはり多く、タッチポイントとしては、特にルーラルエリア(地方)が強固です。先行している郵便局は、自前でSIMカードを持ち、決済サービスなどもどんどん取り込んでいます。それを日本でやるには、われわれ自身がフルMVNOになるというハードルを越えなければならないのですが。
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