SORACOMの通信が「Sigfox」に対応 LoRaWANでも新展開 新たな事例も
ソラコムが、同社のIoT通信プラットフォームに「Sigfox」を採用。LoRaWANと衛星通信を連携させた実証実験も行う。同社のサービスを採用した最新の事例も紹介した。
ソラコムは7月4日、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」が、「Sigfox」の通信に対応したことを発表した。「SORACOM Air for Sigfox」として7月5日からサービスを提供する。
Sigfoxは、免許不要で920MHz帯を利用できる無線通信規格「LPWA(Low Power Wide Area)」の1つ。日本では京セラコミュニケーションズが基地局を設置。現在は東京23区、川崎市、横浜市、大阪市をカバーし、2020年3月に人口カバー率99%を目指している。通信速度は100bps(現在は上りのみ)と低速だが、最大数10kmという広範囲をカバーできるほか、基地局が電池で数年稼働するという省電力性も特徴。高速通信を必要としない、IoTやM2M向けの新たな通信手段として期待される。
事業者は、SORACOMのWebコンソールからSigfox端末を購入でき、1デバイスあたり140回/日までの送信が可能。デバイスは7種類のセンサーを内蔵した「Sens'it」(8478円)、接点監視装置「ドライコンタクトコンバーター」(3万9800円)などを提供。データ通信を暗号化する「SORACOM Beam」か、特定のクラウドサービスと連携できる「SORACOM Funnel」でサーバにデータを送信できる。IoTデバイスからのデータを収集、蓄積する「SORACOM Harvest」も利用できる。
LoRaWANと衛星通信を連携させた実証実験も
ソラコムは、同じくLPWAの1規格である「LoRaWAN」の通信サービスも提供している。Sigfoxとのすみ分けについて、ソラコムの玉川憲社長は「Sigfoxは基地局を京セラコミュニケーションズが管理していること、LoRaWANはプライベートネットワークを自由に構築できること」と説明した。
そのLoRaWANは、ゲートウェイ(基地局)が既に40以上設置されており、「2月から着実に広まっている」と玉川氏は手応えを話す。
SORACOMのプラットフォームをLoRaWANに対応させた「SORACOM Air for LoRaWAN」では、スカパーJSATの衛星通信を用いた実証実験も2017年6月に開始。これはモバイル通信が圏外の地域での利用を想定したもので、現在、モバイル通信が使われているLoRaゲートウェイからSORACOMまでの区間を、衛星通信サービス「ExBird」で補完する。
ソニーとソニーセミコンダクタソリューションズが独自開発したLPWAネットワーク技術とSORACOMを連携させた実証実験も7月から行う。ソニーのLPWAでは、これまでの実験で、山頂や海上など障害物がないところでは100km以上の遠距離通信に成功し、時速100km/hの高速移動中でも安定して通信できることが確認されたという。
あわせて、IoTデバイスの稼働監視や設定管理などができる「SORACOM Inventory」と、IoTデバイスがやりとりするパケットの解析やマルウェア検知、帯域制御、フィルタリングなどの処理ができる「SORACOM Junction」も7月5日から提供する。
7000社以上のパートナーがSORACOMのサービスを採用
SORACOMのサービスは、大手企業からスタートアップまで7000以上のパートナーが採用しており、2016年4月の3000社から倍以上に増えている。玉川氏は、新規パートナーの事例をいくつか紹介した。
ダイドードリンコは、自動販売機の「スマイルスタンド」15万台にSORACOM Funnelを活用し、安全にデータを送信できるようにした。
大阪ガスは、ガスと電気のメーターに外付けデバイスを取り付け、10分ごとにデータを送信。ユーザーに使いすぎなどの情報を通知するようにした。
ローソンは、物流トラックの動態管理にSORACOMのSIMを活用。車両に取り付けた各種センサーと合わせて、運転状況をリアルタイムに把握できるようにした。
この他、ソーラー蓄電システムの遠隔監視、エレベーターの環境情報取得(故障や部品交換の必要性を把握)、(クッキーなどにプリントする)可食プリンタの運用管理、会議利用状況の分析サービス、排出を予知するウェアラブル端末、鳥獣対策向けの自動撮影カメラ……などにもSORACOMのSIMが使われている。
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