春商戦の先手を打ったY!mobile 楽天モバイルも“サブブランド化”で勢力拡大:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2018年春商戦に向けて、Y!mobileが学割や新機種を発表するなど先手を打った。MVNOの対抗馬として注目したいのが楽天モバイル。プラスワンマーケティングのMVNO事業を買収したことで、さらに勢力を拡大している。
POM社買収で勢力を拡大、サブブランド化する楽天モバイル
サブブランドの勢いに押されるMVNOだが、全て会社、ブランドが均等に勢力を落としているわけではない。先に挙げた楽天モバイルは、この状況をむしろチャンスだと捉えている節がある。同社のMVNO事業を統括する大尾嘉宏人執行役員は、「オーガニックグロース(自然な成長)よりも、M&A(買収)の方が、1人あたりのお客さま獲得コストが安いのであれば、ありえる話」と語り、さらなる買収に意欲を示した。
POM社のFREETEL SIMは、買収時点で約35万のユーザーを抱えていた。これを楽天モバイルと合算すると140万を超え、個人向けMVNOのシェア1位に躍り出た格好だ。2018年1月には、FREETEL SIMのブランドを楽天モバイルと統合する予定。料金プランはそのままだが、FREETEL SIMのユーザーから不満点として挙がっていた、中継電話サービスの「FREETELでんわ」の回線を、「楽天でんわ」と同じものに変更するといった改善はしていく。
もっとも、楽天モバイルは仮にPOM社のMVNO事業を買収していなかったとしても、「新規契約者は、昨対で上回っている。それも1桁ではない」(大尾嘉氏)と、順調にユーザー数を増やしている様子がうかがえる。9月に導入した「スーパーホーダイ」が好調で、「月を追うごとに伸びている」という。
Y!mobileと比べるとまだまだ少ないが、楽天モバイルの取り扱い店舗も、「3月までに200を超える」(大尾嘉氏)という。10分の1のリアルな拠点でこれだけ契約者数を伸ばせていれば、むしろY!mobileよりも効率的といえるかもしれない。
新規の出店にはビッグデータの分析を活用。「店舗を乱立させずに、戦略的、効率的、効果的に出店している」(大尾嘉氏)。ネットでは“三木谷割”の愛称で親しまれる大幅な端末値引きも、楽天の得意とするところ。効果的な端末のセールは、新規ユーザーの獲得にも貢献している。
勢いを増す大手キャリアのサブブランドだが、楽天モバイルはここに十分対抗できているようだ。1980円からと、料金プランの金額がY!mobileやUQ mobileと横並びになったことで、「ある種便乗して、サブブランドとして見られている」(大尾嘉氏)。楽天モバイルなどのMVNOに回線を貸すドコモは、以前から自身でサブブランドを展開しないと明言しているが、その空白のポジションを、(ある種勝手に)楽天モバイルが埋めつつあることがうかがえる。
ただ、ソフトバンクが直接サービスを提供するY!mobileと比べ、楽天モバイルなどのMVNOは、借りられる帯域が限られており、お昼休みなどのピーク時に速度が低下しがちだ。大手キャリアに支払う回線の接続料も、収益を圧迫する要因になる。「単月では黒字を出せている」(大尾嘉氏)というものの、逆にいえば、テレビCMなどのマーケティング施策を増やすと、まだ赤字が続いている状況で、予断を許さない。
これは楽天に限った話ではなく、他のMVNOも多かれ少なかれ、同じ境遇にある。サブブランドに対し規制を求める声も聞こえてくるが、規制で場当たり的に対処するのは、ユーザーにとってもマイナスが大きい。逆に、帯域あたりで料金がかかる接続の仕組みを変えるなど、MVNO側に何らかの助け舟を出す時期に差し掛かっているのかもしれない。
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