「サブブランド」優遇 してる? してない?――KDDI、UQ、ソフトバンクが説明(2/2 ページ)
大手キャリア(MNO)やそのグループ企業が運営する、いわゆる「サブブランド」と呼ばれる通信サービスに対して、一部MVNOから批判が噴出している。総務省が主催する会合において、当事者たちが反論した。
ソフトバンク:自社内のコストコントロールで安価を実現
ソフトバンクのサブブランド「Y!mobile」は、同社とウィルコム沖縄が“MNO”として直接サービスを提供している。
同社から見たY!mobileブランドは、他社における「低料金プラン」と同じ位置付けだという。他社対抗の低料金プランを「ソフトバンク」ブランドに新設する代わりに、すでにあるY!mobileブランドを活用して対抗する、という戦略を取っているのだ。
ソフトバンクブランドとY!mobileブランドの差別化は、料金面だけではない。前者では高価格帯のスマートフォン中心の端末ラインアップとし、電話窓口の通話料を原則無料としている。それに対し後者では端末ラインアップを低〜中価格帯中心として、電話窓口の通話料を有料としている。
低価格を実現しつつ、Y!mobileブランド単体での収益性を高めるためにこのような「差別化」を図っているようだ。
ネットワーク設備にかかるコストについて、同社では自社ブランドとMVNOが利用帯域幅に応じて「応分負担」する仕組みとなっているという。ネットワークコスト負担において、ソフトバンク、Y!mobile、MVNOに「差はない」ことを訴えた形だ。
先述の通り、ソフトバンクではY!mobileブランド単体での採算性の向上に努めているという。
しかし、親会社(ソフトバンクグループ)が発表する決算資料では両ブランドの経営成績が「移動通信サービス」としてまとめて示されるため、外部からはY!mobileブランド単体の経営状況が分からない。そのため、ソフトバンクブランドとY!mobileブランドの会計を「分離」して、客観的に経営状況を検証できるようにできるようにするべきだ、という声も会議の一部構成員から挙がっている。
そのような声に対し、同社はブランドごとに会計を分離計算して検証することは「同一会社のブランディング」であるため不要との見解を示した。ただし、検討会の議論によって会計を分離して試算することになった場合、以下の点を整理した上で行うように注文を付けた。
- 「検証目的」と「検証結果に対する評価方法」の検討
- 経営形態の違いを踏まえた検証方法の検討
NTTドコモ:唯一の「禁止行為規制」対象 NTTグループも同条件
NTTドコモは、今回ヒアリングに参加したMNOで唯一サブブランドを持たない。強いて言えば、兄弟会社であるNTTコミュニケーションズ(NTT com)が提供する「OCN モバイル ONE」がそれに相当するとも言えなくもない。
しかし、ドコモは電気通信事業法第30条の規制対象で、NTT comは同社の「特定関連法人」として指定されている。法規制によって、OCN モバイル ONEを“特別扱い”できないのだ。
そのこともあって、同社はNTTグループ企業を含む全てのMVNOに対して公平かつ公正な条件で回線を貸し出していることをアピールした。
電気通信事業法第30条(禁止行為規制)
総務省令の定める条件を満たす移動体(携帯電話)通信事業者は、以下の行為が禁止される。
- 接続業務に関して知り得た情報を目的外利用したり他社に提供したりすること
- 特定の電気通信事業者を不当に有利(不利)に扱うこと
記事執筆時現在、この規制の対象になっている移動体通信事業者はNTTドコモのみ。また、NTT comを含むNTTグループの主な通信事業者は、この規制における「特定の電気通信事業者」として指定されている。
1月30日に開催される次回(第4回)会合では、引き続き事業者からヒアリングを行った上で、意見交換が行われる。会合は全6回の予定で、あと3回で検討会としての「結論(提案)」が出る見通しだ。
今回の会合に参加した総務省の小林史明政務官(衆議院議員)は、この検討会のゴールは「二度とこのような会を開かなくて済むようにすること」であると語った。
果たして、「会を二度と開かなくて済む」ような結論が出るのだろうか。引き続き動向を注視したい。
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