ドコモの値下げでauとソフトバンクはどう動く? 3社の決算会見で語られたこと:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
3社とも決算の数字だけを見ると好調と総括できるが、来期には官邸の意向を受けた“料金値下げ”が待ち構えている。仕掛けたのはドコモだが、KDDIやソフトバンクもこれに追随する方針。決算説明会で見えてきた3社の現状と今後の見通しをまとめた。
アップグレードプログラムには見直しも? 端末販売や店舗も変わる可能性が
既に分離プランを導入しているauとソフトバンクだが、総務省の緊急提言では、いわゆる“4年縛り”とも呼ばれるアップグレードプログラムにも改善要求が突きつけられている。この影響は、2社にどう出るのか。KDDIの高橋氏は「端末ラインアップをどうするか大きな課題」としつつも、現状では明確な方針を示していない。一歩踏み込んだのが、ソフトバンクの宮内氏だ。
同氏は「完全分離しろという方向で動くと、端末は端末として粗利を取って販売する方向に収束していくと思う。われわれができる努力は、最高にいい端末を開発するなり、見つけてくるなりことをすることになる」と語り、ラインアップや販売の仕組みは変えざるを得ない見通しを示した。「端末は、(ユーザーの)層ごとに売れていくパターンになる。それをマーケティングする世界になる」というのが宮内氏の見解で、これはドコモのミドルレンジ重視に近い。
現状では、緊急提言で示されている「完全分離」がどの程度の意味になるかが不透明だが、「完全に分離するとなると、端末を量販店で買ってきて、通信契約だけをソフトバンクショップでとういことになる」可能性もある。仮にこのシナリオ通りになったとき、宮内氏が懸念しているのは、サポート体制だという。
「現実として、10%の人は全部自分でできるかもしれないが、ソフトバンクショップに来るお客さまの大半が、データ移行やLINEの設定などをお店に依存している。完全分離になったら、(サポートを)有料化する動きも出てくるかもしれない」
端末に加えて、「付随するサービスをどう提供していくのか」も課題になりそうだ。ソフトバンクは、PayPayやDiDiといったサービスの案内をショップでも行っていく方針。先に挙げたように、ドコモやKDDIの非通信領域を強化している。端末販売が事実上難しくなると、ショップがこうしたサービスの販売や宣伝の場として機能しなくなる。料金を下げたうえで、別の収益の道も絶たれてしまう恐れがあるというわけだ。
宮内氏の懸念は、ある意味“最悪の事態”を想定したものだが、確かにガイドラインの内容次第では、業界の構造が大きく変わってしまうことになるかもしれない。
ただ、アップグレードプログラムの「半額サポート」に関しては、「4年縛りを作ったつもりはない」と反論。「分離体制になっても買いやすくするためには、継続すべきだと思っている。例えばiPhoneをAppleから買うと2年の割賦で1カ月、5〜6000円になるが、4年だと2500円や3000円になる。そうしないと、本当に高い値段の端末は全く売れなくなる懸念がある」と語った。
一方で、ガイドラインが出れば、それに従わざるをえなくなる。新たに「エントリーバリアが少ないものにしようと、計画を榛葉副社長が練っている」(宮内氏)と、半額サポートの見直しも示唆した。これはKDDIも同様で、秋ごろに出るとみられるガイドライン待ちだ。高橋氏は「総務省ともディスカッションしながら、お客さまの理解をえていきたい」と語っていた。分離プランを新たに導入するドコモだけでなく、au、ソフトバンクも販売の仕組みは変わっていくことになりそうだ。
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