「スマホおかえしプログラム」の誤解とは? ドコモに聞く、新料金施策の手応え(3/3 ページ)
6月1日に、ドコモの新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」がスタートした。分離プランなので端末価格が上がることが懸念されるが、ドコモはハイエンド端末向けに「スマホおかえしプログラム」を提供。新料金プランの反響や、スマホおかえしプログラムの狙いを聞いた。
下取りとは異なる「代物弁済」
―― 下取りではなく、“おかえし”という名称になったのには、どのような意味があるのでしょうか。
杉崎氏 下取りと距離を取ったというわけではなく、一般のお客さまに認識されやすい、分かりやすい表現にしたかったというのがあります。端末をご返却いただければ、割賦の支払い義務をなくするということで、なじみやすい表現は何かと考え、“おかえし”にしました。
ただ、“おかえし”にしたため、絶対に返さなければいけないと誤解されている方もいるようで、そこはもう少しコミュニケーションが必要だと思っています。スマホおかえしプログラムでは、36回分支払ってそのまま使い続けてもいいですし、人にあげたり、中古業者の下取りに出したりするのも自由です。
御牧氏 基本的には、入っておいて損はないプログラムになっています。月額料金はかかりませんし、必ず権利を行使しなければならないものでもありません。
―― ユーザーにとって不利な条件はないのであれば、自動適用でもよかったのではないでしょうか。
杉崎氏 強制感が出るのがどうか、というのはあります。確かに損はないのでいいのかもしれませんが、あくまで選択権はお客さまにあるという形にしました。
御牧氏 ただ、36回の割賦は必須になるので、長い割賦が嫌だという方は一定数いらっしゃると思います。
―― なるほど。確かに一括で買えば、量販店ではポイントも付くため、そちらがいいという方もいるかもしれません。ちなみに、12回分の割賦を免除するということは、補助ではないんですよね。
杉崎氏 (民法上の)代物弁済という形で、請求を止めています。考え方としては、もので弁済していただき、その対価を請求しないということが基本になります。
―― 「ナニワ金融道」でしか聞いたことがない用語です(笑)。なぜ、下取りではなく、こういう形を取ったのでしょうか。
杉崎氏 下取りとは別という考え方をしています。請求を止めるということなので、止める部分を何で埋め合わせるかということですが、そこを端末で弁済していただく仕組みです。下取りだと、請求は生きたまま、下取りした分のお金を差し上げることになりますが、請求がなかったことにした方がいいなると、おのずと代物弁済になります。
御牧氏 これだと、一律で3分の1になる分かりやすさもあります。
杉崎氏 下取りだと価格が乱高下するため、それも分かりにくいと考えました。
過去の機種にさかのぼって価格を見直している
―― 分離プランの開始に伴い、月々サポートだけでなく、端末購入サポートもなくなったとうかがっています。一方で、在庫処分の必要もあるかと思いますが、その場合、どうするのでしょうか。
杉崎氏 今はなくしています。(在庫処分の方法については)分離プラン開始からもう少し時間がたったときに考えなければいけないことです。行政側で議論されているものも踏まえての対応になると思います。いろいろなパターンはありますが、まずは発注量を見誤らないことが大事です。
―― 端末の粗利を頑張ったというお話もありましたが、粗利を頑張るだけで、ここまで他社と差が開くものでしょうか。「Xperia 1」に至っては、ソフトバンクと3万円近い差があります。
杉崎氏 それぞれのビジネスモデルがあるので、よく分かりませんが、私たちの努力と、比較された先の考え方が違うのかもしれません。
御牧氏 もっと分かりやすくいうと、私たちが努力し、あちらが乗せていれば、差はそのぐらいになります。邪推ですが、端末代を高くしておいて半額にすれば、安く見えますからね……。
―― 過去に発売した機種についてはいかがですか。
杉崎氏 価格は変わっています。販売コストはありますが、粗利を頑張ろうということなので、過去の主力機種もさかのぼって売価を見直しています。調整の世界で、若干上がってしまっているものもありますが、基本的には低減しようとしています。
―― iPhoneはあまり変わっていませんね。しかし、今のままだと、新機種が発売されたとき、ストレートに価格比較ができそうです。
杉崎氏 iPhoneはバリエーションの差がないので、如実に横で比較ができます。競争対抗上、どの水準にするかはそれぞれの端末で考えていきます。分離の世界なので、端末は端末、料金は料金で、魅力的なオファーをしていくつもりです。
取材を終えて:縛りの緩い、ドコモらしい仕組み
月々サポートが残っていると、料金が上がってしまうこともあり、新料金プランへの移行は徐々に進んでいくはずだ。カケホーダイを導入した際には、一気にユーザーがプランを変更し、ドコモの読み以上に収益率が悪化してしまったが、今回の移行は、ある程度計画通りに進む可能性が高い。シェアパックからの移行を、どのように店頭でフォローしていくかは、今後、重要になりそうだ。
この新料金プランが生きてくるのは、対になるスマホおかえしプログラムがあってこそだ。割賦と端末返却の組み合わせ自体は他社と同じだが、どうすればユーザーの“縛り”が緩くなるかは、しっかり練られている印象がある。後出しにはなるが、4年割賦を使ったアップグレードプログラムの問題点を、うまく解消した格好だ。結果として3分の1と、免除される額が小さくなるため、総務省が定める端末割引の上限を超えない可能性も高くなる。他社との差分を端末価格そのものの低価格化で補う力業も含め、実にドコモらしい仕組みだと感じた。
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