KDDIはなぜUQ mobileを統合するのか ターゲットはY!mobileと楽天モバイル?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
KDDIは、10月1日に傘下のUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」を統合することを発表した。UQ mobileの統合は、サブブランドを強化するのが目的だ。今の市場環境やUQ mobileの歴史的経緯を踏まえつつ、KDDIの狙いを読み解いていきたい。
ターゲットはY!mobileと楽天モバイル? 統合の背景とKDDIの狙い
KDDIがUQ mobileの統合を決めた背景には、ユーザー層の変化があるという。高橋氏は、「今の市場を見ると、お客さまの多様化が進んでいる。多様化された市場では、1ブランドで対応するより、複数のブランドでアプローチしていくのが自然な姿」と語る。UQ mobile以外はMVNOのままだが、Webでの獲得に強いBIGLOBEモバイルや、ケーブルテレビの営業力やサポート力を活用できるJ:COM MOBILEといった形で、ユーザー接点ごとのすみ分けも進んでいる。
グループ全体での基盤を強化することで、まずKDDI全体からの流出を抑止する。同時に、競合のサブブランドやMVNOからの新規獲得も強化できる。また「第3段階として、5Gの高品質通信や体験価値向上を通じて、アップセルを狙う」(高橋氏)という。流出を抑止しつつ、サブブランドでユーザーを増やし、その一部がauに切り替えることで、収益も高めることができる。これが、UQ mobileを統合するKDDIの狙いだ。
とはいえ、時系列で見ると、サブブランド戦略に後れを取ったのも事実。UQ mobileにとっての直接的な競合といえるY!mobileは、2019年度にスマートフォンの累計回線数が500万を突破しており、UQ mobileとは2倍以上の開きがある。宮内氏によると、ソフトバンクとY!mobileの2ブランドを扱うショップは、全国で1800店に上り、リアルな販路も2年で1.5倍に増加した。直接的には語れなかったが、UQ mobileの統合は、勢いを増すY!mobileに対抗する構えを本格化させたと見ることができる。
高橋氏の「楽天モバイルのMVNOを離れる方がわれわれに来てもらえるよう、UQを含めて準備が整った」というコメントからは、楽天モバイルを“草刈り場”と考えていることもうかがえた。楽天モバイルは、MVNOの新規契約を自社回線の本格サービス開始前日の4月7日に終了しており、ユーザーにはMNOへの切り替えを促している。
一方で、楽天モバイルのMNOだけが、ユーザーの移行先になるわけではない。楽天モバイルはMVNOからMNOへの切り替えに限り、MVNOの料金プランをそのまま引き継げるようにしているが、そのまま移行しただけではユーザーにとっての恩恵が少ない。現時点では料金やデータ容量がそのままで、エリアが狭くなってしまうからだ。MVNOの終了時期は未定だが、いずれにせよ、ユーザーの流動性は確実に高まる。こうした事情を踏まえると、今、UQ mobileを強化するのは必然だったといえそうだ。
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