5Gのエリア拡大とともに広がるミッドレンジスマホ ソフトバンクとauの戦略を解説:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
5Gのエリアが広がるとともに、端末のバリエーションも広がり始めている。当初はフラグシップモデルが中心だったが、2020年の秋冬ごろから徐々に5万円を下回るエントリーモデルが増えてきた。ソフトバンクとKDDIが、春商戦向けの安価な5Gスマートフォンを発表。両社の戦略を中心に解説する。
背景にあるエリアの急拡大、ソフトバンクも周波数転用をついに開始
2万円から3万円前半のエントリーモデルを拡充したソフトバンクやKDDIだが、背景には、春ごろから5Gのエリアが急拡大することがある。KDDIは、4Gからの周波数転用を2020年12月に開始したが、春には周波数に700MHz帯が加わる。KDDIのパーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 次世代ビジネス企画部長、長谷川渡氏によると、「春には山手線全駅や大阪環状線全駅を(5Gエリアに)できる」という。700MHz帯は「帯域はそれほど広くないが、屋内浸透も含めてベースになる」(同)というのがKDDIの考えだ。
ソフトバンクも、2月15日に4Gから転用した周波数帯で5Gのサービスを開始することを発表した。ソフトバンクが利用するのは、3.4GHz帯と1.7GHz帯、700MHz帯。2月15日から東京都、千葉県、愛知県の一部エリアで順次転用を開始する。同日、ソニーモバイル製「Xperia 5 II」がアップデートで新周波数に対応。AQUOS sense5Gも、2月18日から利用が可能になる予定だ。先に挙げたRedmi Note 9Tは、4月以降順次アップデートを実施していくという。
同社の代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮内謙氏が「iPhoneのソフトウェアアップデートは3月末から4月ぐらい。そうすると、『おおっ』と言うほど、5Gがあちこちにある世界になる」と語っていたように、ソフトバンクも、4Gから転用した周波数帯で、エリアを急速に拡大させていく方針。約1年後の2021年3月には、KDDIとソフトバンク双方とも、5Gの人口カバー率を90%に引き上げる見通しを示している。そのエリアが広がりに合わせ、端末ラインアップの裾野を広げたというわけだ。
一方で、ドコモにはエントリーモデルが少なく、2社と比べるとややラインアップの広がりが遅れている印象も受ける。同社の5G対応スマートフォンで最も低い価格を打ち出しているのはシャープのAQUOS sense5Gだが、売れ筋なだけに、KDDIやソフトバンクと横並びだ。KDDIのGalaxy A32 5Gや、ソフトバンクのRedmi Note 9Tのように、独占的に取り扱うエントリーモデルの“顔”がない。ドコモは3月1日にオンライン専用料金プランのahamoに対応する端末を発表すると予告しているが、ここでの追加モデルを期待したい。
ドコモ以上にラインアップが手薄なのが、楽天モバイルだ。同社が扱う5G対応モデルは、自社ブランドの「Rakuten BIG」とシャープのハイエンドモデル「AQUOS R5G」のみで、バリエーションの広がりに欠けている。同社は、夏ごろまでに4Gの人口カバー率を96%に拡大する方針を打ち出しているが、5Gのエリアは現時点で限定的だ。楽天モバイルの代表取締役会長兼CEOの三木谷浩史氏は、「カバー率を4G並みにしていくよう、どんどん進化させていく」と語っているものの、人口カバー率のような指標は公表されていない。端末のバリエーションが広がるのは、もう少し時間がかかりそうだ。
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