“キャリア端末”のセット販売を仕掛けるイオンモバイル SIMロック禁止で変わる端末販売の在り方:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
イオンモバイルが10月から料金プランの値下げをするが、それ以上に衝撃的だったのが、端末販売の新戦術だ。イオンリテールは、大手キャリア3社の販売するスマートフォンと、イオンモバイルのSIMカードをセットで販売していく方針。同様の方法で販売を行うMVNOが増えてくると、キャリアとメーカーの在り方に与えるインパクトも大きくなる。
SIMロック禁止後も残る周波数問題、マルチキャリアMVNOが有利か
中でも、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が取り扱う前提のiPhoneは、1つの端末で全ての主要な周波数帯をカバーするよう設計されているため、MVNOにとっても扱いやすい。位置付けもAndroidの主要なスマートフォンとは少々異なり、iPhoneはあくまで“AppleのiPhone”。キャリア各社はAppleから端末を仕入れて、自身のサービスをセットにした上で販売しているため、特定のキャリアに最適化した場合でも、SIMロックフリーも含めた全てのiPhoneにそれが適用される。
保証サービスも、Apple自身が「AppleCare+」を提供しているため、安心して購入できそうだ。MVNOで利用する場合、APNが自動設定されず、「構成プロファイル」のダウンロードが必要になるのは初心者にとってのハードルの1つだが、店頭でサポートができるイオンモバイルにとっては強みを生かすことができる。
対するAndroidは、フィーチャーフォン時代の慣例を引きずっていることもあり、世界各国と比べると少々特殊だ。キャリアが要求仕様をある程度決め、メーカー側がそれを基づいた端末を個別に開発して納品する。そのため、メーカーの端末はキャリアごとに最適化されたものになる傾向がある。端末名の後に、キャリア独自の型番が付与されているのは、そのためだ。ドコモの「Xperia 1 III SO-51B」とauの「Xperia 1 III SOG03」は、一見同じ端末に見えるが実は別物。基づいている仕様が異なるため、型番が分かれているというわけだ。
Androidは、同じ端末でもキャリアごとに使用が分かれていることがほとんど。写真はドコモ版のXperia 1 IIIだが、ご覧の通り、ドコモ仕様のホームアプリを選択できる他、対応周波数や背面のロゴなどもau版やソフトバンク版とは異なる
結果として、同じ端末でも対応している周波数が異なるケースがある。4社で共通している周波数帯もあるため、全く使えなくなるわけではないものの、プラチナバンドがつかめずエリアが狭くなったり、通信速度が遅くなったりといったデメリットが生じる恐れはある。マルチキャリア対応していないMVNOにとって、SIMロックフリースマホ以上に売りづらい端末になる可能性があるといえそうだ。
こうした状況では、マルチキャリアで回線を提供するMVNOが優位に立てそうだ。イオンモバイルに関しては、ドコモとau、それぞれの回線を提供しているため、ドコモ回線を契約するユーザーにはドコモ端末を、au回線を提供するユーザーにはau端末を販売すれば、対応周波数の問題は起こらない。ソフトバンク回線がないのはネックだが、SIMロックフリースマートフォンだけを販売していたときより、ラインアップの幅は大きく広がる。キャリアの代理店とMVNOの両方を展開している強みを発揮できるというわけだ。
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