楽天モバイルがKDDIローミングの7割を終了 コスト圧縮で契約者獲得へ本腰か:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
楽天モバイルが、10月1日からKDDIのローミングを大幅に縮小する。KDDIローミングは従量課金で設定されているため、その費用が重石になっていた。ローミングを停止したことで不都合があれば、MVNOの端末や小型アンテナの貸し出しなどを行っている。
かさむローミングコスト圧縮も狙い、契約者獲得に本腰を入れる可能性も
楽天モバイルが赤字を脱却するためにも、KDDIローミングの終了は急務だったといえる。先に述べたように、KDDIローミングは従量課金で設定されている。ユーザー向けの約款を見ると、1GBあたりの料金は約550円。KDDIへの支払額、つまり楽天モバイルにとってのコストも、この金額にかなり近い数値のようだ。
UN-LIMIT VIではKDDIローミング利用時のデータ容量は5GBに制限されているが、仮にユーザーがこれを使い切った場合、2750円程度のコストが楽天モバイルに発生する。一方で、ユーザーが支払う料金は2178円。1円の利益にならないどころか、使われれば使われるほど赤字が発生してしまう計算になる。同社CEOの三木谷浩史氏が、決算説明会で「かなりローミング費用が高い」とこぼしていたのもそのためだ。
実際、KDDIは楽天モバイルからのローミング収入を含んだ「モバイル通信料収入」と自社ユーザーからの収入のみを抜き出した「マルチブランド通信ARPU収入」を分けて開示しているが、その差額が徐々に膨らんでいる。2020年4月からの2021年度第1四半期は約108億円だったのに対し、直近の2022年度第1四半期では約330億円にまで拡大している。モバイル通信料収入には国際ローミングなども収入も含まれるが、コロナ禍で海外からの渡航者が大幅に減っている中でも差が広がっているのは、楽天モバイルが大半を占めているからだ。
ユーザー数が急増しているとはいえ、新規参入直後で売り上げも少ない楽天モバイルには、KDDIローミングの費用が重石になっていたことが分かる。自社回線の人口カバー率が96%に近づきつつある今、KDDIローミングは一刻も早く打ち切りたい――先に引用した三木谷氏の発言は、そんな本音が思わず漏れた一幕だったといえる。矢澤氏も、「人口カバー率で7割減るということは、かなり近い将来、ローミング費用が下がる」と期待をのぞかせる。
ローミング費用が下がれば、コスト面の問題で契約者獲得を抑える必要性は薄くなる。その意味で、10月1日からの大規模なKDDIローミングの終了は、楽天モバイルがアクセルを踏み始める号砲といえるかもしれない。一方で、大手3社は一通り4Gのエリア構築は終え、既に競争軸は5Gのエリアに移りつつある。特にKDDIやソフトバンクは、4Gから転用した周波数帯を積極的に活用していることもあり、エリアの広がり速い。2社は2022年3月までに、5Gの人口カバー率を90%まで引き上げる目標を掲げている。
楽天モバイルも「4Gの基地局にはほぼ全てに5Gを載せられる」(同)というが、現時点でのエリアは限定的だ。5Gは4Gよりも周波数帯がかなり高くなるため、同じ基地局を5G化しただけでは十分な広さのエリアにはなりづらい。今は“パケ詰まり”などの速度低下は顕在化していないが、ユーザーが増えてくれば5Gを含めてキャパシティーをどう確保するかも課題になりそうだ。
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