povoはどのくらいの契約数? パックプランはもっと増やす?――KDDI高橋社長一問一答(2022年1月編)(2/2 ページ)
KDDIが2021年度第3四半期の連結決算を発表した。この記事では、報道関係者向けの決算説明会における注目すべきやりとりを紹介する。
ローミング収入と3G停波
―― 今回の決算でも、ローミング収入が増益要因として大きな部分を占めているように思えるのですが、実際の貢献度合いはどのくらいのものなのでしょうか。楽天モバイルとのローミング契約は今後大幅な縮小が見込まれますが、間もなく迎える3Gの停波と合わせて、どうバランス(均衡)を図っていくつもりなのでしょうか。
高橋社長 ローミング収入について具体的な数字は開示していませんが、グループMVNO収入との合算では630億のプラスがありました。多くはローミング収入が占めていると見てくださって構いません。(楽天モバイルとの)ローミングについては、契約に従って(解除を)進めている所ではありますが、この四半期もローミングによる収入は(むしろ)増えていると思ってよいです。
来期(2022年4月)以降をご心配される向きも結構あると思うのですが、ローミングは一定の計画のもと縮小していくことになります。従って、ローミング収入も2025年に向かって徐々に減っていく見通しです(急に減少することはない)。現在の所、エリア整備条件において8つの県が未達となっている(契約を解除する条件を満たしていない)ので、2022年度も(ある程度の収入が)残ると思っています。
ローミング収入が徐々に減収していくことや、昨今の通信料値下げによる減収分をローミング収入で補っているという見方は正しいと思います。ただ、ローミング収入があったおかげで3Gの終了を他社よりも速く実行できたというのは大きいとも考えています。2022年度は3Gに関連する設備が終了していくので、減価償却費や運用コストが大きく減ります。これでローミング収入の減少分は十分に補えます。
2022年度は、料金値下げで減収した分を5Gで取り返していく重要な年になると思います。引き続き、努力をしていきたいです。
―― 3月31日に3Gの停波を迎えるわけですが、現時点の状況を教えてください。
高橋社長 (3Gの残存契約数は)開示はしていないのでお答えできませんが、ほぼ計画通りに進んでいると考えています。(新型コロナウイルスの)オミクロン株の影響で、現場は2月、3月はバタバタしそうですが、予定通りに終了する方向で進めます。
5Gへの投資やエリア整備について
―― 5G設備投資について、政府は「デジタル田園都市構想」を掲げています。地方への5G基地局整備の加速が求められる一方で、(設備投資への原資となる)利益が携帯電話料金の値下げで減っている状況です。今後5Gに対してどのように投資をしていくか、方針を聞かせてください。
高橋社長 5Gに対する投資は、今後も積極的にやっていきます。
今週、ICT総研の調査において「日本の携帯電話料金が調査対象の国の中で最安値」ということが話題になったかと思います。通信容量20GBで米国だと7300円くらいな所、日本では2445円で済んでしまいます。CPI(消費者物価指数)を引き下げることになってしまいましたが、(政府が求めてきた)値下げという観点では一定の成果は出たと思います。
今回、岸田政権が掲げたデジタル田園都市構想は「成長」と「分配」がテーマの1つです。この「成長」のど真ん中に5Gの展開が据えられたことは、投資面において結構大変ですが、よい意味で前向きな動きになると思います。
「分配」という面では、5Gネットワークを地方にも広げるという約束をしております。これが進めば、地方にもDX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透するチャンスが増えます。これは良いことだと考えます。私たちが取り組む「mobi」や、弊社から分社して設立する「KDDIスマートドローン」もそうですが、地方の活性化につながる事業を5Gと共に広げていくことも大切です。
3Gの巻き取りも終わりますので、今後はより積極的に5Gをお客さまに届けていきます。デジタルディバイドを解消するための「携帯電話教室」も積極的にやっていきたいです
―― 2021年度末に「5Gの人口カバー率90%」という計画について、前回の決算説明会では「黄色信号だ」と説明していたかと思います。目標は達成できそうでしょうか。
高橋社長 私たちとしては2021年度末に90%台に持って行きたかったのですが、オミクロン株の影響に、半導体不足の影響も重なって遅れが出てしまっています。2022年度のできるだけ早い時期に達成したいと思っています。
料金値下げや他社の動向について
―― 今回の決算を見ると、料金を値下げしているのに「増収増益」になっています。このことは、どう捉えればいいのでしょうか。経営環境が厳しくなったことに合わせて、経営努力をした結果なのでしょうか。
高橋社長 (他社と同様に)料金の値下げは、私たちも影響が出ています。業績予想では1年間の通信料金の減収幅を600億〜700億円になると見込んでいたのですが、詳しい額は言えないものの見込みよりも減収幅が膨らみそうな状況にあります。
私たちは民間企業です。「減収したので(ストレートに)減益します」というわけには行きません。増益に持って行くためには、幾つか取り組まなければならないことがあります。普通の会社もそうだと思うのですが、社内では「売り上げ最大、経費最少」がスローガンになっています。
先ほど5Gユーザーの平均トラフィックが2.5倍という話をしましたが、それを手がかりとして通信ARPUを引き上げていく必要があると考えています。その取り組みを進めているのが米国や韓国(のキャリア)です。5Gを頑張って広げて、もう一度ARPUを伸ばすように取り組みます。
一方で、通信だけでは成長に限界はあります。私たちが成長領域と定めているビジネス分野や、電力、金融といったライフデザイン(非通信)領域で売り上げを最大化していきます。コスト削減も重要で、社内では血のにじむような努力をしています。
―― キャリアメールについて、大手キャリアが持ち運びサービスを始めました。これによってMNP(携帯電話番号ポータビリティー)に何らかの影響はあったのでしょうか。
高橋社長 正直にいうと、あまり影響がない感じです。総務省の意向や、お客さまの利便性を向上する観点を踏まえて導入してみたものの、現時点では市場に大きなインパクトを与えたというほどではありません。
―― いわゆる「格安スマホ」について、NTTドコモが「ドコモのエコノミーMVNO」始めました。市場の競争環境について、どう見ていらっしゃいますか。
高橋社長 ドコモのエコノミーMVNOに対しては、私たちのpovoで十分対抗できていると考えています。マルチブランド戦略をしっかり進めていこうと思います。私たちは(子会社として)JCOMとビッグローブがあり、それぞれの得意分野でMVNOとしてお客さまにサービスを提供しています。これも引き続き成長させていきます。
「値下げ」とか「マルチブランド」に関する競争は、各社共にひと息ついた感じがあります。お客さまのご期待にも応えられてきたと考えていますが、引き続きより分かりやすい料金プランを提供しつつ、5Gの展開に軸足を移して、DXを進めることで(社会全体の)付加価値を高めていきたいと思います。
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