5Gの普及には「ミリ波」が不可欠の理由 通信速度だけでないメリット、Qualcommが解説(2/2 ページ)
Qualcommは2022年6月8日にメディア向けラウンドテーブル「Qualcomm NOW」を開催。クアルコムジャパンの須永順子代表社長は、ミリ波はモバイルネットワークの費用効率化と品質向上をもたらすことを説明。5Gのポテンシャルを発揮できるミリ波を早期普及させることが不可欠だと力説した。
ミリ波の効果と有効な活用事例とは
続いて、Vice President, Business Development, Qualcomm France S.A.R.Lのフィリップ・ポジアンティ氏が登壇し、5Gにおけるミリ波のメリットと、そのユースケースについて説明した。
フィリップ氏によると、5Gのミリ波は帯域幅の広さ、世界中で採用されていること、技術が確立されていること、既に150以上の端末が存在しデバイスのエコシステムが成熟していること、そして費用対効果が高く早期にコスト回収できることなどから、既に「成熟したエコシステムと考えている」と説明。そのユースケースも広がりを見せつつあるという。
代表的な活用事例の1つは、デジタルデバイドの解消に向けたワイヤレスファイバーへの活用で、主に米国の農村部やオーストラリア、東南アジアなどで活用されているという。またミリ波は上りの通信速度が高速なことから、法人での活用も多くなされているとのことだ。
そこでフィリップ氏は、法人でのミリ波活用事例をいくつか紹介。イギリスの精密農業における事例では、センサーから情報を取得してクラウドに情報を送信、膨大なデータを分析して作物に合った水や肥料を調整している。ブラジルの事例では、サンパウロでのサンバカーニバルで撮影した高画質の映像を、モバイル通信事業者のクラウドを通じてアップロードし、テレビの視聴者にライブで届けるという取り組みを行っている。
そしてもう1つ、フランスのSNCF(フランス国有鉄道)の事例では、高速鉄道のTGVのメンテナンスに5Gのミリ波を用いている。列車に2台の5Gのミリ波に対応したセンサーを搭載し、従来手動で実施していた車両に関する大量のデータのアップロード作業を自動化しているとのことだ。
加えてフィリップ氏は、5Gのミリ波は混雑した場所での利用にもメリットがあると説明。ミッドバンドの場合、混雑した場所でのダウンロード速度が大幅に落ちやすいが、ミリ波であれば混雑した場所であっても、ミッドバンドにおける非混雑時と同じくらいのダウンロード速度を実現できるという。
そうしたことからスタジアムや駅、ショッピングモールなど、人が多く集まる場所でミリ波を活用すれば最高のユーザー体験を提供できるとフィリップ氏は話す。うまく収益化すれば年間の売り上げが3%伸ばせる上、2027年度には10%の成長が見込めるとしており、投資コスト回収の短さを考えても、ミッドバンドを使うよりもメリットがあるとしている。
最後にフィリップ氏は、日本における5Gミリ波のパフォーマンスの変化についても説明している。5G試験サービス時点の2019年4月と、商用サービスが始まりエリア整備も進んだ2022年4月の通信速度を比べた場合、ダウンロードのピーク速度が3年間で66%向上しているとのことだ。
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