Xiaomiの激安ハイエンドスマホ「POCO F4 GT」を解説 あえて“ゲーミング要素”を抑えた理由:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
Xiaomiが、日本のPOCOブランドのスマートフォン「POCO F4 GT」を導入する。Snapdragon 8 Gen 1を搭載しながら7万4800円という価格は“激安”と言っても過言ではない。一方で、Xiaomi Japanは、ゲーミングスマートフォンというカテゴリーの端末として、POCO F4 GTを打ち出していくつもりはないようだ。
日本でPOCOを展開する理由 市場の変化に対応する狙いも
では、XiaomiはなぜPOCOシリーズを日本で展開することを決めたのか。ワン氏は、ここには3つの理由があると語る。1つ目が、既に日本には「少数だがコアなファンがいる」(同)ことだ。ワン氏によると、グローバルで発売されたPOCOシリーズの端末を越境ECで取り寄せるユーザーの中で、日本の比率は10%にも上るという。また、「発表会をすると、日本のユーザーがかなりTwitterを見てくれる」というのも、日本でPOCOを展開する決め手になった。あらかじめ、市場があることをつかめていたというわけだ。
2つ目の理由は、Xiaomi Japan自身が新しいビジネスモデルを模索したかったことだ。ここには、「日本政府の政策の変化がある」(同)という。2021年にはahamo、povo2.0、LINEMOなど、オンライン専用の料金プラン/ブランドが登場したが、ahamo以外の2サービスでは端末を販売していない。SIMカードだけを契約し、端末はこれまで使っていたものを継続するか、別の方法で調達してくるのが基本だ。こうしたニーズを捉えるため、POCOはオンライン限定での販売になる。
3つ目の理由が、市場の変化だ。ワン氏が「今年(2022年)に入り、為替の変動もあって、スマートフォンがどんどん値上がりしている。特にフラグシップモデルの値上がりが目立っている」と語るように、ハイエンドモデルは軒並み10万円を超え、高いものは20万円に迫りつつある。これに対し、POCOは「Xiaomiと独立したプロダクトラインを持っている一方で、Xiaomiとはリソースを共有している」(同)。オンラインでの販売に特化し、マーケティング費用もかけないことで、「値段を極限まで下げることができる」(同)。Xiaomi Japanはここに商機を見いだしたということだ。
先に述べたように、POCOはハイエンドモデルだけのブランドではなく、メインブランドのXiaomiと同様、ローエンドモデルやミドルレンジモデルも取りそろえているが、なぜ最上位モデルのPOCO F4 GTを真っ先に日本に投入するのか。この疑問に対し、ワン氏は、「POCO F4 GTはPOCOのブランドを表せる製品だから」と答える。POCOは、「テクノロジー愛好家のために立ち上げたブランド」(同)。その実力を的確に示すには、最上位モデルを投入するのが手っ取り早い。
マーケティングコストをかけず、「いい製品をいい価格で出し、口コミによって知名度を拡大していきたい」(同)というのがXiaomiの方針。こうした戦略を取る以上、差別化が図りにくいエントリーモデルやミドルレンジモデルを投入するのではなく、まずはフラグシップモデルでブランドイメージをきっちり作り上げることが必要になる。POCO F4 GTは、POCOブランドを日本に浸透させるための足掛かりといえる。
一方で、Xiaomi Japanにとっては、市場を拡大するため、実験的に投入している側面もあるという。製品ラインアップをどう拡大するかは未定で、「初めてXiaomiが日本に来たときのように、まずはユーザーの反応や市場での手応えを見ながら、効果を発揮しているかどうかを確認してロードマップを決めていきたい」(同)という。もしPOCO F4 GTの販売状況がかんばしくなければ、今後、フラグシップモデルの投入が見送られてしまう恐れもある。フラグシップキラーが日本市場でどう受け止められるのか、その成果にも注目しておきたい。
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