鉄道・バスで「Visaのタッチ決済」が1年で38倍に “キャッシュレスの島”沖縄の現状(2/2 ページ)
鉄道やバスで「Visaのタッチ決済」の導入が広がっている。Visaは6月30日にオンライン説明会を実施し、タッチ決済を推進する狙いを語った。“キャッシュレスの島”となりつつある沖縄から、琉球銀行と東京バスの担当者が登壇し、キャッシュレス化の現状が紹介された。
バス路線に30台の決済端末を導入
沖縄県では、県主導で公共交通にVisaのタッチ決済を導入する動きもある。琉球銀行では、沖縄県と連携し、バス路線にキャッシュレス決済の端末の導入を進めている。2021年度は実証実験として、沖縄本島で運行する5つのバス事業者にて、タブレット型のキャッシュレス端末を計30台導入した。
説明会では、実証実験でVisaのタッチ決済を導入した観光系バス会社を代表して、東京バスの佐藤智彦取締役が登壇した。東京バスは沖縄本島南部の新たな観光地を結ぶ路線バス「ウミカジライナー」などを運行している。
今回、キャッシュレス端末を新たに導入された5社の路線は観光客の利用が多い、空港などを起点とする観光系のバス事業者が運営するバス路線となっている。その多くは、これまで現金決済のみに対応していた。
「OKICA」という独自の交通系ICカードがあり、ゆいレール(モノレール)で一部の路線バスや導入されているが、OKICAは県外では利用できないため、観光客向けには普及が進んでいない。
そこで、バス路線では県の補助金を活用し、Visaのタッチ決済に対応するタブレット型の決済端末を導入。一部の事業者ではAlipayやPayPay、J-Coin PayといったQRコード決済にも対応した。決済端末はタブレット1台で完結する方式で、三井住友カードの決済プラットフォーム「stera」を活用している。
2022年初に導入した時点では、新型コロナウイルスのまん延によりバスの利用自体が少なかったが、4月〜5月に個人の観光客の客足が戻りつつあるにつれて、キャッシュレス決済の比率は増加傾向にあるという。特に5月のゴールデンウイーク期間中には、1日最高で93件、割合にして38%がキャッシュレス決済で支払われたとしている。
佐藤氏は導入の効果として、ユーザーにとっては利便性が向上したと説明。運転士の現金収受の手間の軽減についても、キャッシュレス利用が進むにつれて効果がでてくると見込んでいるという。
ウミカジライナーでのVisaのタッチ決済の利用状況。ゴールデンウイークにはキャッシュレス比率が最高値の38%を記録した。6月に入って観光客が増加傾向にあり、キャッシュレス比率も30%を超える状況で推移している
Visaのタッチ決済で改善するべき点として、決済スピードの向上が挙げられた。現行の方式では、オンラインでオーソリゼーション(与信照会)を行う仕組み上、Suicaのような交通系ICカードと比べて、決済完了までの時間がかかりやすいという性質があるためだ。
また、沖縄県の実証事業で導入したキャッシュレス決済端末が、乗降口が別れている路線バスとの相性が良くないため、決済にかかる手間が増えているという。導入した端末はタブレットのようなシンプルな形状で、ユーザーがタッチパネルで決済方式を選べるようになっている。
一方、東京バスの路線は中乗り・前降りの乗降方式で、運賃変動制を採用している。現金で支払う場合、乗車時に後ろのドアで整理券を引き、運賃箱に料金と整理券を入れる方式だ。
タブレット端末1台で決済を行う場合、乗車地を記録する方法がない。そのため、東京バス、Visaのタッチ決済で利用する場合も紙の整理券を引いてもらい、乗車時にタッチパネルで乗車地を申告する方式を取っているという。
キャッシュレス決済の方式としてはやや特殊な方法となっているため、東京バスではバス車内などに利用方法を案内するチラシを多数掲示し、ユーザーへの案内の拡充も図っている。
一方で、Suicaのような全国交通系ICカードを導入するバスでは、乗車時と降車時に2回タッチする「ツータッチ方式」が主流となっている。東京バスでは今後、Visaのタッチ決済でもツータッチ方式の決済が可能な端末を導入を検討しているという。
また、MastercardなどVisa以外の国際ブランドについては、沖縄県の要望も受けており、対応を進めている。2022年度には、MastercardやAmex、JCBなども利用可能になる見込みだ。
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