「公衆電話」はどこにある? どうやって使う? 緊急時の備えに知っておくべきこと:緊急時の備えに(1/4 ページ)
KDDIと沖縄セルラー電話の携帯電話ネットワークの障害を受けて、公衆電話に注目が集まっている。しかし「どこにあるの?」「どうやって使うの?」といった声もある。そこで、知っておくべき情報(知識)をまとめようと思う。
昨今、日本における自然災害は激甚化する傾向にある。ひとたび災害が発生すれば、携帯電話の基地局(無線局)も被害を受けてしまう可能性がある。各キャリアは停電時用の基地局にバッテリーや発電機を装備したり、停止してしまった基地局を別の基地局でカバーできるようにしたりと、そのような事態を避けるための対策をしている。しかし、それが全てうまく機能するとは限らない。
加えて、7月2日から61時間25分に渡って継続したau/UQ mobile/povo携帯電話の通信障害や、2021年10月14日に約半日間継続したNTTドコモ携帯電話の通信障害に見られるように、災害以外の要因で発生する通信障害もある。
何にせよ、携帯電話に通信障害が発生した際に、緊急通報番号(110/118/119番)に電話できなくなることは最もクリティカルな問題である。固定電話を始めとする別の通報手段を持っていれば何とかなるかもしれないが、最近は携帯電話だけで全てを済ませる人(世帯)も少なくない。固定電話を持っていたとしても、それが携帯電話ネットワークを利用する「ワイヤレス固定電話」であれば携帯電話ネットワークの障害に巻き込まれてしまう可能性は高い。
そんな中、携帯電話の通信障害が発生すると「公衆電話」の存在が再評価されている。しかし、公衆電話についてSNS上では「どこにあるのか分からない」「そもそも使い方が分からない」といった声も見受けられる。
そこで、公衆電話について知っておきたい情報をこの記事にまとめておく。“何か”が起こる前に、この記事を読んで備えてほしい。
そもそも「公衆電話」って何?
その名の通り、公衆電話は不特定多数の人(公衆)が自由に使える電話である。日本では、大きく分けて以下の公衆電話がある。
第一種公衆電話
「第一種公衆電話」は、電気通信事業法と同法の施行規則に基づいてNTT東日本とNTT西日本が設置しなくてはならない常設の公衆電話である。「社会生活上の安全および戸外での最低限の通信手段を確保する観点」から、設置面で以下の条件を満たす必要がある。
- 誰でも常時利用することができる場所、または誰でも容易に出入りできる施設の目に付きやすい場所に置く
- 市街地は1km四方に、その他の場所は2km四方に少なくとも1台置く(※1)
- 「市街地」は「人口集中地区」に指定された地域
- 「その他の場所」は市街地以外で、世帯(人家)または事業所(店舗や工場など)が存在する地域
加えて、第一種公衆電話では以下のサービスに対応する義務もある。
- 無料での緊急通報(110/118/119番)
- 離島特例通信(※2)
(※1)従来は「市街地は500m四方に、その他の場所は1km四方に少なくとも1台」だったが、2022年4月に改正施行規則が施行されて現在の基準となった
(※2)離島の単位料金区域(MA)において、結びつきの強い本土のMAを特例で「隣接区域」と見なす制度(MAについては後述する)
現在の第一種公衆電話は、大きく分けると緑色のものと灰色の「ディジタル公衆電話」の2種類が存在している。通話料金は現金(10円/100円硬貨)またはテレホンカードで支払うことになる(※2)。
法令に基づいて設置される第一種公衆電話は、いわゆる「ユニバーサルサービス」に位置付けられている。そのため、維持/運用にかかる費用の一部は「ユニバーサルサービス料」から捻出される。
(※2)一部にテレホンカード専用電話もある。なお、停電時はテレホンカードを利用できない(硬貨による通話や緊急通話などは可能)
第一種公衆電話はユニバーサルサービスの1つとして提供されるため、誰でも常時利用できる場所(道路のそばなど)、または誰でも簡単に出入りできる施設の目に付きやすい場所(鉄道の駅やバスターミナルなど)に設置されている(写真は緑色の最新モデル)
第一種公衆電話のうち、灰色のものは「ディジタル公衆電話」と呼ばれており、アナログ(固定電話)回線またはISDN回線に対応するモデムをつないでデータ通信を行うこともできる。ただし、ディジタル公衆電話は徐々に緑色の最新モデルへと置き換えられている(写真はディジタル公衆電話のテレホンカード専用版)
その他の公衆電話
法令上、明確な定義が定められた公衆電話は「第一種公衆電話」のみである。しかし、公衆電話は他にも存在する。主なものを簡単に紹介する。
【第二種公衆電話】
「第二種公衆電話」は、NTT東日本とNTT西日本が“任意に”設置する常設の公衆電話である。機能/サービスや機種は第一種公衆電話と同一で、パッと見では区別が付かない。ただし、第一種とは異なり一般人が容易に立ち入れない場所(工場の敷地内など)に設置されることもある。
一方、第二種公衆電話はあくまでも任意設置であるため、維持/運用にかかる費用はNTT東日本やNTT西日本の“自腹”となる。「公衆電話が減った」と話題になることもあるが、現時点で減っている(撤去された)公衆電話のほとんどは、採算の取れなくなった第二種公衆電話である。
ただし、2022年4月に行われた設置基準の見直しにより、今後は第一種公衆電話も順次台数が削減される見通しとなっている。
第二種公衆電話は、NTT東日本とNTT西日本が任意設置する公衆電話で、機能/サービスや機種は第一種公衆電話と同一となる。ただし、最近は採算が取れないなどの理由で撤去が急速に進んでいる(総務省資料より:PDF形式)
2019年度末時点で、第一種公衆電話は約10.9万台、第二種公衆電話は約4.3万台設置されている。最近は不採算(月収4000円未満)の第二種公衆電話が急速に撤去されてきたが、設置基準の見直しにより第一種公衆電話の撤去も進む見通しだ(総務省資料より:PDF形式、資料内の設置基準は2022年3月までのもの)
【特殊簡易公衆電話(ピンク電話/Pてれほん)】
「特殊簡易公衆電話」はNTT東日本とNTT西日本が提供している常設公衆電話の1つで、設置者(店舗など)がサービスの一環で設置するものだ。かつての専用電話機がピンク色のボディーだったことから「ピンク電話」とも呼ばれている。
第一種/第二種公衆電話はNTT東日本やNTT西日本が直接サービスを提供するのに対し、特殊簡易公衆電話は設置者を通してサービスを提供するという形態となっている。利用者の通話料金は原則として第一種/第二種公衆電話に準じており、現金(10円/100円硬貨)またはテレホンカード(※3)で支払う。通常の加入電話(NTT東日本とNTT西日本が提供する固定電話)の通話料金との差額からオプション料金を差し引いた金額が設置者の収入となる。
従来は来店客へのサービスとして設置される例がほとんどだったが、最近では撤去されてしまった第一種/第二種公衆電話の代わりに公共施設が設置する例もある。
(※3)テレホンカード対応の特殊簡易公衆電話は現在販売されていない。なお、テレホンカード専用の特殊簡易公衆電話は停電時にテレホンカードによる通話ができない
特殊簡易公衆電話は専用の電話機を購入した設置者がサービスを提供する。過去の電話機はピンク色のボディーを採用していたことから「ピンク電話」とも呼ばれているが、現行の電話機はピンク色ではない(製品名の「Pてれほん」の「P」に名残がある)(画像は最新モデル「PてれほんCII」)
【特設公衆電話(災害時用公衆電話)】
その名の通り、「特設公衆電話」は NTT東日本やNTT西日本が臨時設置する公衆電話だ。“特設”とはいっても災害時の連絡手段を確保するための手段として設置されるので、一般には「災害時用公衆電話」と呼ばれている。特性ゆえに通話料金も無料である(※4)。
特設公衆電話は通常、災害発生時に地方自治体がNTT東日本やNTT西日本に要請すると設置される。最近では事前設置された特設公衆電話(災害時に電話機とケーブルをつなぐだけですぐ使えるもの)や衛星回線を活用した特設公衆電話(回線工事なしで迅速に運用できるもの)も用意されている。
(※4)災害発生時は、当該地域に設置された第一種/第二種公衆電話も通話料が無料となる
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