Qualcommが「Snapdragon 8 Gen 2」のお披露目で“メッセージ”を変えた理由:Snapdragon Summit 2022(2/2 ページ)
Qualcommは毎年、「Snapdragon Tech Summit」と銘打ったイベントを実施してきたが、2022年はイベント名が「Snapdragon Summit」に変更された。メッセージも変わってきており、ユーザー体験を重視したものになった。コロナ禍の中でQualcommに起きた大きな変化の1つは、その主力製品のブランディング強化にあった。
ブランディング重視のSnapdragonをあえて技術面から眺める
Snapdragonのみならず、近年のモバイルSoCではAI方面の演算性能、特に「推論」エンジンを強化する傾向が強い。これはPC向けプロセッサも例外ではなく、次期Intel Coreプロセッサの「Meteor Lake」ではVPU統合が予告されている。加えて、Appleは「Apple Silicon」と呼ばれる「M1/M2」系のSoCにおいてGPUを特に強化するなど、アプリケーション要求に合わせたCPUコア以外の周辺ユニットの強化を進めつつあるのがプロセッサ業界の現状だ。
この傾向は「Snapdragon 8 Gen 2」でも変わらないが、同SoCではCPUコアそのものが強化されており、シリーズ最速を更新している。テストマシンでベンチ結果を計測したところ、Geekbenchのスコアでシングルコアが1501、マルチコアで5285だった。概略だが、前世代の「Snapdragon 8+ Gen 1」搭載スマートフォンとの比較でおおよそ2〜3割前後は増加している。一部リーク情報ではAppleのA15 Bionicを超える程度とされていたが、よりA16 Bionicに近い水準にあると判断している。
おそらく、Gen 2では前世代のGen 1よりもパフォーマンス寄りのチューニングが行われている。特にマルチコアまわりの伸びが大きいため、このあたりに秘密がありそうだ。実はGen 2ではCPUコアの構成が変更されており、従来は「プライムコア+パフォーマンスコア+高効率コア」で「1+3+4=8」だったものが、Gen 2では「1+4+3=8」という形でパフォーマンスコアと高効率コアの数字がひっくり返っている。
高効率コアはアイドル時に低消費電力でスレッドの低消費電力動作を行う目的で主に存在しており、SoC全体の低消費電力動作の要ともいう存在だ。コアのサイズも小さいため、ダイ面積を専有しないというメリットもある。
ところが今回はこのコアを1つ削り、代わりにパフォーマンスコアを1つ増やしている。PCとは異なり、スマートフォンなどでは一番正面で動作するアプリがリソースの大部分を消費し、他のアプリの動作が隠れる形となるため、PCほどマルチコア動作全体でのパフォーマンスの要求が高くない。プライムコアを1つだけ搭載する構成も、このニーズを受けてのものだ。Gen 2でマルチコア性能が高めに出るのも、この部分の改変が大きいのではないかと推測する。
ちなみにGen 1でのコア構成は「Arm Cortex-X2+Cortex-A710×3+Cortex-A510×4」だったが、Gen 2では「Arm Cortex-X3+Cortex-A715×2+Cortex-A710×2+Cortex-A510×3」となっている。2×2で4つのパフォーマンスコアはCortex-A715が64ビット用、Cortex-A710が32ビット用という区分けになっており、適時使い分けが行われるようだ。
「32ビット用」という表現があるあたり、Androidを含む汎用(はんよう)プロセッサとしての用途を想定するSnapdragonらしく、このあたりは5年前にリリースされたiOS 11で64ビットに完全移行を果たしたAppleとの違いを感じさせる。いずれにせよ、Gen 2はSnapdragonの中でも「プレミアムパフォーマンス」を志向した製品らしく、シリーズ最高の性能を体験できる仕上がりになっているだろう。
(取材協力:クアルコムジャパン)
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