新ミッドレンジ「AQUOS sense7」開発秘話 カメラもデザインも大刷新を遂げた理由(3/3 ページ)
ど真ん中のスマートフォンを目指して開発してきた「AQUOS sense」シリーズのイメージを覆したのが「AQUOS sense7」だ。カメラに最大の特徴があり、ミドルレンジモデルながら、一部ハイエンドモデルが採用していた大型の1/1.55型センサーを採用する。デザイン面も、AQUOS Rシリーズに近づけ、AQUOSとしての共通イメージを抱きやすくなった印象がある。
オンラインでの売れ行きが特に好調、価格上昇はミッドレンジの中心点が動いた影響
―― ディスプレイは、先代のAQUOS sense6からIGZO OLEDになりましたが、やや残像が目立つような印象があります。これは60Hzだからでしょうか。
小林氏 OLEDは駆動方法が液晶と違います。液晶はパパっとバックライトがついて明るさを表現していますが、OLEDは自発光なので、光る時間の割合で明るさを表現しています。その違いもあり、液晶からOLEDになると残像が見えやすくなるのは事実です。「AQUOS sense7 plus」では、その残像を、黒挿入で消しにいっています。
清水氏 リフレッシュレート競争も徐々に始まっているので、今後、検討しなければいけないところだと思っています。
―― 発売後の反響はいかがですか。
清水氏 正直、かなり評判がよく、売れ行きは順調です。特筆すべきは、オンラインでの売れ行きで、これは倍になっているところもあります。われわれもすごく驚きましたが、いろいろな情報を得てから選ばれる方にきちんと届いているのではないかなと思っています。ITmediaにも「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー」に選んでいただけましたし、レビューサイトの評価もsense6に比べて大幅によくなっています。ご評価いただけているということは、われわれも感じています。
―― ただ、価格が徐々に上がっています。もともとAQUOS senseは3万円台というイメージでしたが、AQUOS sense7は今や5万円台です。物価高や為替相場が原因でしょうか。
清水氏 いくつかの要因があります。初号機は3万円ちょっとで買える端末でしたが、そこから5年、6年と続け、真ん中を進めていくために必要なことをやると、価格のポイントも少しずつ上がってきます。真ん中の価格が上がり、そこに合わせているというのが1つです。もう1つは、昨今の経済状況で、おっしゃっているように、円安などの影響も少なからずあります。
小林氏 マーケットサイドからは、2つのトレンドの変化がありました。1つ目が19年の電気通信事業法改正で、これによってスマホの売り方が大幅に変わりました。一気に高いものが売れにくくなったこともあり、真ん中の中心点が少しずつ動き始めました。その後、キャリアの残価設定型プログラムが始まり、ある程度長い間端末を使ったあと、お返しして新しいものを買うという販売形態になり、また中心点が動きました。初代senseが出た17年と比べると、中心の位置が動いているということはあります。
AQUOS sense7 plusはオープンマーケット向けには投入しない?
―― AQUOS sense7の上位モデルとして、AQUOS sense7 plusがありますが、どういう経緯で企画された端末なのでしょうか。
清水氏 sense7はど真ん中というお話をしましたが、plusがつく端末はいつも1つチャレンジをしています。今回、そのチャレンジになるのが動画視聴です。なぜ動画かというと、スマホを買い替えたとき、もっと楽しみたいというニーズがあるからです。その最たるものは最初にお話ししたカメラですが、もう1つが動画だと考えています。
―― 具体的に、どういったplusをしたのでしょうか。
清水氏 こだわったのは画面表示と音です。黒挿入を含めた240Hzの高速駆動ができるディスプレイを搭載した他、専用ICを積み、動画のフレームを補間することもできます。最大で5倍、24fpsを120fpsまで補間します。例えばサッカーだと、カメラを振ることが多いですが、その際のガクガクした動きが黒挿入とフレーム補間ではっきり見えるようになります。
もう1つの音は、ステレオスピーカーにするのは当然として、ボックス構造で2つのスピーカーが干渉しないよう中で空間を切り、臨場感のあるサウンドにしています。それ以外の機能は、AQUOS sense7と共通です。
―― 今回、plusはソフトバンク限定です。オープンマーケット版の予定はないのでしょうか。
小林氏 今のところ、予定はしていません。AQUOS sense7 plusは、ソフトバンクが戦略的に扱う商品としてご提案しています。ソフトバンクも、戦略的な商品を開拓したいという意思をお持ちでした。AQUOS sense7はいい商品なので悩まれていましたが、もう少しアクティブに使うお客さまに持っていただきたいということもあり、こちらになりました。AQUOS sense7は中心点ですが、もっともっと使ってもらう方向にシフトしている状況においては、動画をどうやって見てもらえるかが重要です。その思惑は、ソフトバンクと一致しています。
取材を終えて:ミッドレンジにもシャープらしさが波及してAQUOS Rへの注目度も上がるか
ど真ん中を求めてきたAQUOS senseだが、インタビューにもあったように、その中心点は徐々に上にシフトしているようだ。確かに、最近はミドルレンジモデルのカメラ機能も、以前より向上している。AQUOS senseといえども、カメラには力を入れなければならないというわけだ。その際に生きてくるのが、フラグシップモデル開発のノウハウだ。シャープはAQUOS R6に1型センサーを採用するとともに、ライカと協業。画質を大きく底上げすることに成功した。この技術の一部を落とし込んだのが、AQUOS sense7になる。
あわせて、デザインもAQUOS Rシリーズとそろえることで、“AQUOSとしての一体感”が出るようになった。かつてのAQUOS senseは、AQUOS Rとは別路線の端末だったが、これだとイメージが分散してしまいかねない。デザインをそろえることで、AQUOS Rの購入を断念したユーザーをAQUOS senseで受け止められるのと同時に、より高機能な端末が欲しいユーザーがAQUOS Rに目を向ける可能性も出てくる。フラグシップモデルでシャープらしさを出せた効果が、AQUOS senseにも波及し始めているといえそうだ。
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