ドコモはARPU減少も「irumoが好調」「通信品質は着実に改善している」 NTT島田社長がコメント
NTTが2月8日、2023年度第3四半期の連結決算を発表した。ドコモはARPUが減少しているが、低容量帯プランの「irumo」が好調だという。島田社長は、ドコモのネットワーク品質について「着実に改善している」と評価する。
NTTが2月8日、2023年度第3四半期の連結決算を発表した。第1四半期からの累計売り上げは9兆7169億円で前年比1443億円増、累計営業利益は1兆4862億円で前年比346億円減の増収減益となった。
固定電話やインターネット回線の地域通信事業が471億円の赤字となっており、これが減益に影響した。2023年度は四半期ごとに利益は改善しており、島田明社長は「コスト削減施策の確実な実施により、年間で増益になるよう目指していきたい」と話す。なお、年間での営業利益1兆9500億円に変更はない。
島田氏は、能登半島地震での被災地の復旧状況についても説明。「面積ベースだと97%復旧しており、モバイル(回線)ファーストでの復旧活動をしている」という。ただし、道路にアクセスできない箇所があり、15局ほど、復旧に至っていない基地局が残っているとのこと。
震災での復旧にもかかわる通信サービスの全体像に、「ユニバーサルサービス」がある。ユニバーサルサービスは、日本全国で提供が義務付けられている通信役務のことで、2023年後半からたびたび議論に挙がってきたNTT法では、NTT東西とNTT持株にその義務を課している。一方、従来のメタル回線の固定電話サービスは年々契約が減っており、NTTにとっては採算の取れない事業になっているのも事実。総務省ではワーキンググループを立ち上げ、ユニバーサルサービスの在り方についての議論も進んでいる。
島田氏が、能登半島地震での復旧活動をモバイルファーストで行うように指示を出した背景には、「これからのユニバーサルサービスは、モバイルを中軸として考えて体系を作っていくべきだと思う」との意図がある。
「従来のメタルの固定回線は、住宅から事業所に対して点で通信するもの。今のお客さんが求めているのは、今回のような災害があったときの避難所や、避難する過程の主要な道路など、点ではなく面での通信。これからの時代は、まずモバイルを中心としたユニバーサルサービスをベースとして考えるべき」
NTT法の議論でも島田氏は主張していたが、NTTグループのみにユニバーサルサービスの責務を課すのではなく、他の通信事業者も含めて、どこが提供すべきか、政府と一体となって考えるべきとのスタンス。「そこに対して、どなたも手を挙げる人がいなければ、(NTT)東西会社がやる覚悟はある」(同氏)
災害時に通信障害が発生すると、公衆電話が貴重な連絡手段の1つになるが、平時はほぼ使われていないことから、「公衆電話の在り方も議論すべきだと思っている」と島田氏は話す。
「諸外国では、公衆電話自体は、設置の義務付けはほとんどの国でなくなってきている。モバイルでどうカバーさせるかが基本線だと思う。公衆電話の仕組みはメタルの回線で構成されている。光回線で公衆電話をやろうとすると、ソフトウェアとか課金の方式を新たに作り込んでいかないといけない。経済面や利便性を考えたとき、どういうやり方なら一番求められている便益を達成できるか、よく議論をする必要がある」(島田氏)
ドコモはARPU減少もirumoが好調 新たな金融サービスは2024年度から?
NTTドコモについては、第3四半期までの累計売り上げは1億3487億円で前年比529億円増、営業利益は2301億円で前年比76億円増となった。モバイル通信サービスは359億円の減益となったが、機器収支の改善などで514億円収益増となったため、コンシューマー通信事業が155億円の増益となった。
一方、ARPU(ユーザー1人あたりの売り上げ)は第2四半期の4000円から3990円にダウンした。これは、低容量帯プランのirumoが売れていることが要因の1つだという。「他社よりも遅れたが、セカンドブランド相当のブランド(プラン)をドコモが出したことの影響が出ている」と島田氏。間もなく春商戦が始まるが、「春商戦をどう対応していくかは、まさに今検討しているところ。将来のお客さまをいかに確保していくかが重要。若年の方に対して、魅力的なものをどう訴求していくかが大きな要素」とした。
ドコモは2023年からネットワーク品質の低下が取り沙汰されており、改善に追われている。「ドコモのネットワーク品質に嫌気がさしてやめてしまう影響は?」との質問に対して島田氏は「アンケートをとっているわけではないので分からないが、あまりいないのではないかと思う」とコメント。
ドコモは、2000箇所の重点エリアを「点」、主要な鉄道動線を「線」として、2023年12月までに9割以上の対策を完了させた。まだスポット単位では速度の出ない箇所が散見されるが、島田氏はここまでの取り組みを「着実に改善している」と評価する。
「コロナ明けのトラフィック量が倍ぐらい上がっており、そこに対しての対応が後手に回ったのは反省点だが、その後しっかり対応して、12月まで計画通り改善は行った。基地局を増設しないといけないところは、折衝に時間がかかって年を越えて、もしかしたら年度を越えるかもしれないが、着実に改善している。通勤路線の沿線も相当程度に改善している。これからも、アプリ(d払いアプリ)のところまでしっかり管理して、品質を向上させて参りたい」(島田氏)
ドコモは2023年10月にマネックス証券を連結子会社化して、金融サービスの拡充を目指しているが、KDDIやソフトバンクからは後れを取っている。この点について島田氏は「世の中のニーズは、1つのスマホのアプリの中でいろいろなものを完結できるようにすること。ドコモがその分野で出遅れたのは事実。金融機関や証券会社に対しても均等外交して自分たちで出ていこうとしなかった。保険もまとめてやってもらった方が、ポイントも付いていいというニーズが高くなってきたので、遅ればせながら整えているところ。できれば来年度(2024年度)くらいにはキャッチアップしていきたいと思う」とコメントした。
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