トーンモバイルは“自社スマホ”をやめるのか? 石田社長に聞く「TONE IN」と「エコノミーMVNOの成果」:MVNOに聞く(3/3 ページ)
トーンモバイルは、これまでの戦略を大きく転換する「TONE IN」を導入する。ドコモで販売しているスマートフォンに、トーンモバイルのサービスを対応させる。端末からサービスまでを一気通貫で手掛けていたトーンモバイルだが、このタイミングでなぜ回線やサービス単独での提供に踏み切ったのか。
LLMを使ったSNS見守り機能は、新卒入社のチームから提案があった
―― 次に、テクノロジープレビューとして公開したLLM(大規模言語モデル)によるSNSの見守りですが、この開発経緯を教えてください。
石田氏 SNSのフィルターとしてLLMを使おうというのは、新卒入社チームからの提案でした。僕たちの年代はビフォア・インターネット、アフター・インターネットのように世代が分かれていますが、今、入社してくる人たちは学校で普通にAIを使っている。フィルターをかけるのであれば、そっちの方がいいのではといい、勝手に作ってそれを証明してきました(笑)。そこが大きかったですね。
―― 仕組みとしては、通知に表示されたメッセージを読んでいるのだと思いますが、X(旧Twitter)やFacebookのように、タイムラインにあまり好ましくない投稿が出る場合もあります。こういったものにフィルターをかけることは可能でしょうか。
石田氏 今ならできるかもしれませんが、仕組みとしてアプリの中身をテキストで取るのがなかなか難しい。やるのであれば、画面のキャプチャーを取り、それをローカルのLLMに解釈させることはいくつかの端末であればできると思います。リモートサポート用に画面を飛ばすということはやっているので、それを飛ばさず端末内のGPUに送り込んで処理するようにすればいいですからね。ただ、今だとちょっと動きがボヤっとしてしまう(遅くなってしまう)かもしれません。いつかはできると思いますが、フィルターの仕組み自体がアプリに入る可能性もあります。
―― それが進んでいくと、端末によって動く機能、動かない機能、動いても遅い機能などが出てくるのでしょうか。
石田氏 それはこれからだと思います。今のところ、テキストベースの機能であれば、普通にできます。写真がベースのTONEカメラをそちら側に持っていくこともできると思います。ただ、PixelだとTensorが載っていますし、あの辺はもっと使ってみたいですね。
―― 処理として、クラウド上でやることもできたと思いますが、端末ローカルで動作させているのはやはりプライバシー的な理由からでしょうか。
石田氏 そうです。携帯電話の先にあるのがスーパーノードだと思っていて、それを考えた時にはやはり全てローカルで動かすというポリシーがあります。リアルタイム性が担保できるのであれば、やはり自分のデータはローカルサイドにあった方がいい。バックアップがクラウドになることはあってもいいと思いますが、そういう形にしておかないと怖いですからね。
―― 動作はしていますが、テクノロジープレビューという位置付けなのはなぜでしょうか。商用化にあたって解決すべき点はどこにあるのでしょうか。
石田氏 クオリティー的には、かなりいいところまで来ています。ただし、ミスをしてしまったときに、それを報告したら何らかのインセンティブがあるものを「TONE Chain」(トーンモバイルの開発したEthereum互換のブロックチェーン)の中で用意しようとしています。報告していただけたら、TONE Coinが入るような仕組みです。Web3的な貢献の仕方を丁寧に組み合わせた形を考えています。
スマホとは違う形でのデバイス開発を視野に
―― そのTONE Coinですが、今はトーンモバイルの料金に充当できるだけです。売買できるようになったり、何か他の使い道を考えているのでしょうか。
石田氏 将来的にはあるかもしれません。今はトーンモバイルのスマホを充電しているときにたまる仕組みですが、その次として、株主還元でTONE Chainのネットワークに入ってこられるようなことも発表しています。これを抽選などに使えれば、もっといいかもしれないですね。
―― 最後に、TONE INでドコモ端末に対応しましたが、独自端末の開発はやめてしまうのでしょうか。
石田氏 スマホの基盤をベースにしながら、スマホを作るのか、スマホではない違うものを作るのかの話だと思っています。次の中期経営計画はグループ戦略を中心にしています。今はモバイルが目立っていますが、フリービットにはギガプライズというマンションインターネットを引いている会社があり、今はトップシェアに立っています。毎年、15万戸に回線を引き入れているので、そこにセンサーを入れるようなこともできます。シニアの方に必要なスマホとはこういう形だったのかというようなところを目指しています。
取材を終えて:料金体系やサービスの訴求がいっそう必要に
専用に作り込んだ端末とネットワーク、サービスを一体化させ、MVNOとして独自性を出していただけに、TONE INの発表は衝撃的だった。iPhone対応はその布石だったが、Androidは自社端末路線を続けると思っていたからだ。一方で、石田氏が語っていたように、ハードウェア開発はビジネスとしてリスクが高く、MVNOにとっては効率もよくない。
同じサービスが実現できるのであれば、他社端末を活用できた方がサービスを広げやすくなる。とはいえ、端末という目立ちやすく、かつユーザーが直感的に理解できるトーンモバイルの“顔”ともいえる存在がなくなってしまうのは事実。今後は料金体系やサービスを、今まで以上にアピールしていく必要がありそうだ。
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