ソフトバンクの「空飛ぶ基地局」は衛星通信より「圧倒的に速い」 HAPS商用サービスまでのロードマップを整理(2/2 ページ)
ソフトバンクが、「空飛ぶ基地局」を用いた通信のプレ商用サービスを、2026年に開始する。2026年に開始する予定のプレ商用サービスでは、LTA(Lighter Than Air)型の機体に通信機器を搭載して運用する。LTA型は、空気よりも軽いヘリウムガスの浮力で上昇でき、HTA型よりも長時間の滞空性能を持つことを特徴としている。
当面はLTEを使用、通信は衛星通信サービスよりも「圧倒的に速い」
HAPSで用いる周波数については、「総務省と相談をしながら制度化を進めていくが、バンド1(2.1GHz帯)を考えている」(上村氏)とのことで、変更の可能性もある。5Gにも対応できるが、まずはLTEでの通信を想定する。これは、5G対応スマートフォンよりもLTE接続できる端末の方が普及しているためだ。
通信速度は現段階では非公開だが、(Starlinkなど)衛星との直接通信サービスと比べて「圧倒的に速い」と上村氏は説明した。特に上り速度の改善が期待される。衛星通信では、数100km上空から電波を飛ばすのに対し、HAPSは20km上空とより地上から近いので、電波が減衰しにくい。下り通信については、衛星に搭載するアンテナの技術が進化することで高速になる可能性はあるが、上りについては「スマートフォンのアンテナが大きくならない限り、厳しいのでは」と上村氏はみる。
カバー率も気になるが、まずは災害対策として導入するため、日本全国のカバーは考えていないとのこと。「平時にHAPSを使ってキャパシティーを増強する位置付けにするのかは未定」と上村氏。山間部や離島のエリア化や、地上局と周波数を共用したエリア強化(3Dエリア化)を含めて検討している。
将来的には直径200km以上に渡る広範囲のカバーを目指す。プレ商用サービスでは限定的な環境での運用となるが、2027年以降は直径200kmに近づける運用を目指す。その際、どれほどのトラフィックを処理できるかが課題となるため、災害状況に応じて、カバー範囲と容量を柔軟に調整する。災害が発生した際は、数時間以内に対象エリアに到着するように運用するという。
翼を持つHTA型も並行して開発を進める
HTA型の商用化は当初の予定通り、2027年よりも先になり、背景には技術的な課題がある。日本(北緯36度付近の東京)では、太陽光発電による充電と夜間の電力放出サイクルが、赤道付近に比べて難しい。また、長期間滞空させるには、モーター性能の向上やバッテリー容量の増加、軽量化が必要になる。
HTA型の機体を通年で飛ばすためには、これまでの航空機の概念にはない新しい構造を持つ機体開発が必要となる。ソフトバンクは、2027年までに要素技術、バッテリー、モーター、ソーラーパネルを完成させる見通しだ。
2026年のプレ商用サービスは技術検証が目的
2026年のプレ商用サービスは災害時の利用を想定し、一般ユーザーではなく、社内関係者や特定の限定されたユーザーを対象とした技術検証が中心となる。利用できるのはメッセージングだけでなく、音声通話やWebブラウジングなど、地上局と同等のサービスを目指す。2027年以降は、災害時通信に加え、山間部や離島など一般ユーザーへの提供を予定している。
HAPSはバックホール回線として利用するわけではなく、HAPS自体が直接スマートフォンと接続する形で通信サービスを提供する。上空から地上基地局とスマートフォンと接続させる形になるため、ユーザーは自分の端末がHAPSで通信をしているかどうかは分からず、ピクトの表示も変わらない。
プレ・商用サービスの料金は未定だが、「災害対策ソリューションとして、基本的には追加料金を徴収しない方針」(上村氏)とする。
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