災害時の通信対策は非効率だった? 4キャリアが連携強化で無駄を解消、「事業者間ローミング」実現へ加速:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、大規模災害時の避難所支援でエリア分担などの連携を強化していく。非常時での連携は、KDDIがNTTの用意した船舶に相乗りして、海上からエリア復旧を行った他、KDDIとソフトバンクで給油拠点の共同利用を行った。年度内のスタートが予定されている事業者間ローミングのスムーズな実現にもつなげていく。
強化した協力体制は事業者間ローミングにも生かせるか
こうした事業者同士の連携を強化していくことで、年度内に開始される予定の「非常時事業者間ローミング」をスムーズに運用できるようになる可能性もある。同サービスの詳細な開始日はまだアナウンスされていないが、現状の制度検討や開発、周知体制などはおおむねスケジュール通りに進んでいるため、遅くとも2026年3月にはサービスが始まる。次の検討に進むタイミングが、近づいてきているといえる。
総務省では非常時事業者間ローミングの検討が大詰めを迎えている。サービス開始は、年度末を予定する。画像は、「情報通信審議会 情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 非常時における事業者間ローミング等に関する検討作業班(第6回)」に提出された「非常時における事業者間ローミング等に関する検討作業班報告(案)概要」から抜粋(以下同)
NTTの倉内氏は、「(この取り組みは)ローミングのためにやっているわけではない」と前置きしつつ、「ローミングをやっていく中では事業者間がしっかり連携して、どういうところで、どこのローミングをするかの密な連携が必要になる」と語る。「災害対策メンバーがそれを活用できるよう、連携方法や仕組みも含めて検討していくのが次に考えていくこと」(同)だ。
特に災害時には、基地局が倒壊や停電などで停止する一方、被災地から離れた場所で通信を制御するコアネットワークには影響がないことが多い。そのため、国際ローミングや楽天モバイルとKDDIのローミングに近いフルローミング方式が適用されるケースもあり、災害対策としての期待も高い。倉内氏が、「ローミングは来年度(2026年度)からの大きなポイントになる」と述べていたのは、そのためだ。
事業間ローミングは、現在、サービス名称が「JAPANローミング」に決まり、その方式が「フルローミング」と「緊急通報のみ」の2つに定められた。その発動条件や実際の運用フロー、ユーザーへの周知方法、さらには端末の設定方法や実際の接続方法など、さまざまな要素が固まりつつある。
中でも運用フローについては、キャリア同士が災害などによって事前に発動が予想される場合に備え、連絡体制の事前構築を行う必要性が指摘されている。事業者間ローミングは、発動要件の確認や、依頼書の作成、さらにはネットワークの設定などで、実際に開始されるまでには数時間を要する。
この時間を短縮するためには、事業者間連携や事前の共同訓練などが必要になる。また、端末によっては設定の変更などを行わなければならないが、避難所での協力体制をその周知に生かしていくこともできそうだ。事業者同士の連携体制を強化してきたことが、事業者間ローミングのスムーズな導入の一助になることを期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
NTTグループと携帯3キャリア、大規模災害時の連携強化 避難所の支援エリア分担や情報発信の共通化など
NTTグループと携帯3キャリアは、大規模災害発生時に避難所支援のエリア分担と情報発信の共通化を行うと発表。被災地での避難所支援を広域かつ速やかに行うため、通信事業者間の協力体制をさらに強化する。
携帯4キャリア8社、災害時の協力体制を強化 首都直下地震や南海トラフ地震への備えも視野に
NTTドコモやNTT東西を含むNTTグループ5社と、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの国内通信事業者8社は12月18日、大規模災害時におけるネットワークの早期復旧に向けた新たな協力体制を発表した。
4キャリアが能登半島地震のエリア復旧状況を説明 “本格復旧“を困難にしている要因とは
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が合同で、能登半島地震のエリア復旧状況について説明した。道路が寸断して通れない、基地局へ向かえないことで復旧が難航している。船上基地局や衛星通信なども活用しているが、本格復旧のめどは立っていない。
ドコモとKDDIが「船上基地局」を運用 能登半島地震を受け、海上から通信を復旧
NTTドコモとKDDIは能登半島地震に伴い、船舶上に携帯電話基地局の設備を設置する「船上基地局」を共同で運用する。両社が1月6日、発表した。具体的には、NTTドコモグループのNTTワールドエンジニアリングマリンが運用する船舶「きずな」に、ドコモとKDDIの携帯電話基地局の設備が設置される。
災害時の無料Wi-Fi「00000JAPAN」、通信障害発生時でも利用可能に
災害時に利用する無料Wi-Fiサービス「00000JAPAN」が、通信障害が起きた際にも開放されることになった。00000JAPANは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが中心となって提供している、災害時に利用できる無料の公衆Wi-Fiサービス。総務省の有識者会議で、通信障害時にも活用したいとの要望が通信キャリアから挙がっていた。



