こばやしゆたか
デザインで性能が変わる~Suica改札機のわずかな傾き(2/2 ページ)
会場には、これらのモデルが実際に触れる形で置いてある。自分の定期入れを使って(もちろんSuicaでも)、どのモデルがどんな感じか試してみよう(残念なことにアンテナは生きていないので、正しく読み取られているかどうかはわからない)。
そして、壁には、実験で撮影されたビデオが映されている。実験の生データだ。これが雄弁なのだ。それぞれのモデルについて、どういうミスが発生しているか、どういうミスを誘発しがちなのか、(私なんかは素人ながら)分析を追体験することができるのだ。
例えば、アンテナ部分以外に光っているところ(OKランプなのだけど)があると、そっちにカードを向けたがりがちになるなんてことが分かる。いくら「ここにカードをかざしてください」と大きく書いてあっても、だ。
この実験の結果、デザインされたのが1997年のプロトタイプだ。アンテナパネルは「13度」という傾きを持っている。これで、使用者は一瞬カードを止めてくれる。そして、光る部分はアンテナまわりにしかおかない。
もう一つ大事なのが、「かざしてください」から「ふれてください」(タッチ&ゴー)への変化だ。私は、Suicaが登場したとき、「非接触のICカードなのに、ふれてくださいはないだろう」と悪口をいったのだけど、それはあさはかな感想だった。
この1997年プロトタイプは、実用に十分な性能を示した。読み取りの成功率は磁気式と同等以上になったのだ。これにより、JR東日本は2001年のSuica導入に踏み出すことになる。
ここで、確認しておくと、1995年のプロトタイプも1997年のプロトタイプも(実際に設置された量産型も)、アンテナやICカードなどという“デバイスの性能”は全く一緒だということだ。変わったのはデザインだけ。それだけで、読み取り率というスペックが大きくアップする。“ユーザーインタフェースデザイン”というのは性能の一部なのだ。
山中さんたちの仕事はここまで。彼らは普通の意味でのデザイン=見栄えには全く関っていない。
「私たちがデザインしたのは、人と機械を結ぶ基本形である。そういうデザインもあるのだということを理解いたたければ幸いである」(山中俊治)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
2
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
3
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
6
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
7
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
8
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
9
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
10
松本デジタル相、24.6万件漏えい可能性について説明 「既知の脆弱性を対応前に悪用」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR