「The Netに新しいサービスレイヤを」Intel CTOが提案するネットの未来(2/4 ページ)
ARPANETの思想を受け継ぎながら実装を容易に
サーフ氏は「ARPANETでは優れた広域分散ネットワークが構築されましたが、物理ネットワーク上に直接アプリケーションを実装する必要があり、すべてのアプリケーションがARPANETの作法を組み込まなければなりませんでした。そこで我々は物理ネットワークとアプリケーションの間に、パケットの制御を行うための標準的な手順を作りました。それが、TCP/IPです。ネットワークを実装する上で面倒な部分を、アプリケーションから隠そうとしたのです。既存のネットワークの上にオーバーレイとして被せることで、アプリケーションの実装を簡単にしたのです」と当時を振り返る。
「ネットワークの物理的な状況を、アプリケーションのプログラマが一切知らなくても、ネットワーク内のどこかにデータを落とせば、必ずそのデータが目的のコンピュータに届くよう、ゲートウェイやルータといったようなものも作りました(サーフ氏)」
冒頭のゲルシンガー氏の言葉ではないが、まさか30年もの間、そのプロトコルが生き続けるとは、サーフ氏本人も考えてはいなかっただろう。そもそも、インターネットがここまで普及するとは思っていなかったのかもしれない。
「世界中で9億人がインターネットを使っているとはいえ、まだインターネットの構造や仕組みは例えるなら石器時代でしかないと考えています。利用方法が多様化し、ユーザーが爆発的に増える中、色々な既存アーキテクチャのバリエーションを作っていかなければなりません。現在のTCP/IPにはたくさんのアーキテクチャ上の制約がありますが、それらを改善することで、まだまだインターネットは進化することができます」とサーフ氏。
巨大な既存インターネットの置き換えは不可能
30年前に開発した本人が、アーキテクチャ上の問題があるというTCP/IPは、現在はIPv6にまで進化しているが、すでに普及してしまったIPv4からの移行はほとんど進んでいないと言っていい。にも関わらず、9億人のユーザーが存在し、さらに進化を継続してる。
「9億人どころではありません。世界中にいるほとんどの人は、インターネットにアクセスしていないのです。今後、さらに50億人がつながるネットワークに成長させなければなりません。家電や各種センサーも繋いでいく必要があります。ホットスポット、携帯電話、その間に挟まるネットデバイスをどんどん増えていきます(サーフ氏)」
これに対してゲルシンガー氏は、センサーネットワークを例に挙げる。たとえばIntelは石油会社のBritish Petroleumと共同で、ガソリンタンクのセンサーネットを作り上げ、様々なステータスをネットワークを通じて報告する仕組みを構築。大幅な経費の削減を実現しているという。センサーネットワークが商用で広がれば、インターネットに接続するデバイスの数は飛躍的に増加するだろう。ワインセラーのワインにセンサーを取り付け、温度状態を定期的にWebにアップロードさせ、温度が以上だとメールが届くといった仕組みも考えられる。また2009年には、火星にセンサーを送り、インターネットに情報を送信させるプロジェクトも進んでいる。加えて、アメリカのGDPの6%は電子商取引によって生み出されているというデータもある。
インターネットはその適応範囲を今も拡げ続け、ノード数も増加し、ビジネスに対する影響も増加し続けている。こうなってくると、様々な問題が発生してくるのは自明だ。
「これからインターネットに接続されたデバイスは、数10億のオーダーに増加します。ですから、IPv6に切り替えなければIPアドレスは不足してしまいます。しかし、問題はそれだけではありません。現在のインフラでは、デバイス数の増加に絶対にうまく適応できないでしょう。これはネットワーク帯域の問題だけではありません。特定のサイトにトラフィックピークが集中したり、パケット伝送の遅延時間やサービスレベルが、デバイスのロケーションによる差が出てきます。故障や障害が発生する可能性の高いポイントもその数が急増するはずですから、信頼性にもばらつきが出てきます」
「ちょっとしたことでダウンする可能性があるネットワークに、経済が大きく依存することになりますから、これは大変な事です。デバイスが増えればハッキングをする人も増えれば、攻撃しやすいポイントも多くなりますから、セキュリティ問題も雪だるま式に増えきます。CMUの調査では攻撃は年に2倍のペースで増えているのです(サーフ氏)」
では解決方法は無いのか?
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