被災者を支える、地元ケーブルテレビの死闘 (前編)(3/4 ページ)
一通りセッティングが終わったところで、お昼にお弁当をごちそうになった。NCTの食堂では、女子社員が中心となって豚汁の炊き出しを行なっている。既に市内ではほぼライフラインは復旧し、コンビニやお弁当屋も営業を始めているので、もう炊き出しの必要はないのだが、やはり暖かい手料理があると士気が上がるのだという。
だがスタッフの表情には、思ったより悲壮感のようなものはない。既に「信じられない出来事」から、現実を受け止める段階に移ってきたのだろうか。
NCTは、JR長岡駅から歩いて10分ほどの場所にある。社員は総勢60名ほどだが、その9割が今回の地震で被災した。車中泊も経験し、今も避難所から通ってきている社員も多い。地元タレントとして民放でレギュラー番組を持っていたこともあるという、変わった経歴を持つ放送制作部の伊能(いよく)部長も、外国人の奥さんを一人残して、避難所から通勤を続けている。月曜日からは一時帰宅が許されるという。
だが考えてみれば、小中高校が避難所になっているということは、被災から2週間、まだ学校が始まっていないということでもある。8日・月曜日から授業を再開するところも多いが、受験生にとってはこれまでの遅れも深刻な問題だ。
本当に必要な情報
災害時の情報源として、テレビというのが有効なのか、という議論もある。一日中テレビを見ているわけにもいかないのではないか、それだったら情報をこちらのタイミングで引き出せるインターネットのほうが優れている、という意見は、原理的にはその通りだ。
だが実際には、被災地でWebを見るためには、有線にしろ無線にしろ、ネットワークが生きていなければならない。ろくに電話も通じない状況で、それは可能なのか。さらにPCの普及率から考えても、それを操作できる人は子供から老人まで含めると、おそらく1割程度の人になってしまうだろう。デジタルデバイドは、補修工事では埋まらない。
NHKは震災直後に、各避難所に合計約70台のテレビを設置した。あの大混乱の中、電気屋を回ってかき集めることはできないから、自前でテレビ70台を持っていたということだろう。公共放送でなければできないことの一つだ。
例え避難していても、動ける人は仕事に行く。したがって残っているのは、子供やお年寄り、体の不自由な人、けが人、病人および介護のために残っている人たちになる。そういう状況では、ただ寝転がっていても次々に情報が送られてくるテレビは、インターネットよりも情報のリーチ率が高い。
NHKは今回の地震報道に、300人を動員した。一方NCTの番組制作スタッフは、10人。うち4人は女性だ。ただNCTは現地の事情をよく把握している点で、大人数の報道に劣らぬ活躍を見せる。もちろんNHKと対抗して番組を作っても、勝負にならない。彼らの作る番組は、現実を受け入れはじめた人々の暮らしに役立つ情報や、復興への決意を促すための、ポジティブなスタイルだ。
NCTが放送している情報は、多岐にわたる。ボランティアの内容とその連絡先、道路の開通状況、飛行機や電車の臨時便の時刻表、イベント中止のお知らせ、臨時の入浴施設の場所と時間などを、お天気カメラをバックにテロップにして延々と流す。さらに、ショックを受けた子供たちの心のケアの方法、エコノミー症候群を防止するための体操などをナレーションで放送する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
7
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR