ラジオとネット──似て非なる文化
「『ラジオは時代の1番バッター』と言っていた時代があった」――ニッポン放送デジタルメディア局長の近衛正通氏は8月30日、パネルディスカッション「ラジオコミュニティの未来」(デジタルガレージ主催)で、そんな過去を振り返った。
「オールナイトニッポン」の放送内容が翌日、学校で話題になっていた20年ほど前。“4番バッター”のテレビが動き出す前に、ブームの種を真っ先に見つけ出すのがラジオだった。
しかし「今は、誰もが1番バッターになれる」と近衛氏は言う。ネットを使えば誰でも簡単に情報発信できる現代。テキストを簡単に公開できるブログが普及し、音声を発信できるポッドキャスティングもブームの兆しを見せ始めた(関連記事参照)。
2月に国内で初めてブログをポッドキャスティングに対応させたシーサーのチーフプロデューサー・舟田善氏によると、同社サービスでポッドキャスティングを公開しているサイトはすでに1500以上。「当初は、年内に100サイトくらいを想定していた」(舟田氏)というから、予想を大きく上回った。
コンテンツとして多いのは、アマチュアミュージシャンによる音楽。漫才や語学教材を配信しているユーザーもいるという。語学教材なら、音声を無料配信してテキストを販売するという、ラジオの語学番組のビジネスモデルがそのまま適用できる。
しかし、「ブログが新聞とは異なるように、ポッドキャスティングはラジオとは違う」と舟田氏は考える。ラジオでは考えられなかったようなコンテンツ配信やビジネスモデルが今後展開されるだろうと期待する。
ネットを使った音声配信を考える際に避けて通れないのが著作権の問題だ。音楽業界と古くから付き合いのあるニッポン放送ですら、一部の人気楽曲のネットラジオ配信の許可が取れないという。「ネットで色々な音楽を聴いてもらいたいのに、著作権が壁になってなかなか進まない」(音楽情報サイト「BARKS」を運営するソフトバンク・メディア・アンド・マーケティングの今野多久郎バークスエグゼクティブ・プロデューサー)
P2Pや音楽DLでは、楽曲の背景が見えない
「ダウンロードやP2Pでは、音楽を作った人間が見えてこない」――今野氏は、音楽のネット配信とラジオの違いをこう語る。ラジオなら、DJが音楽の背景を語ったり、アーティストがゲスト出演するなどして、どういう人が何を思って曲を作ったかが見えやすい。しかしダウンロード販売やP2Pソフトによるファイル交換だと、曲名だけで楽曲が手に入り、音楽の背景を知る場がほとんどない。
近衛氏は「ラジオは音楽に対してもっと影響力を持つべき」と考える。期待するのは、来年から始まる予定の地上デジタルラジオ。チャンネルが増えるため、音楽の専門番組も配信できるのではと期待する。「専門特化した音楽番組が増えれば、ラジオの音楽に対する影響力は増すだろう」(近衛氏)
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