小寺信良
エルゴノミックキーボードにヤラレる(2/3 ページ)
古くからあるエルゴノミックキーボード
エルゴノミックキーボードは最近登場したものではなく、少なくとも筆者が知る限りでは、10年では利かない歴史がある。実際に現物を見たことがある中でもっとも古いモノは、おそらくAppleの「Adjustable Keyboard」あたりだろうか。
発売された1993年当時、筆者はMac使いであったが、さすがにこのキーボードは買えなかった。当時はキーボードもそこそこの値段したのだが、これはその中でも5万円以上はしたのである。
エルゴノミックキーボードが高いのは、もちろんその機構的な部分にコストがかかるということだろう。可動部があればそれだけ部品数も増えるし、構造も複雑になる。またキートップの形状も、普通のキーボードのように同じ金型で大量に作って、文字の印刷を変えるだけ、というわけにはいかない。
それにもまして、「売れない」というところが大きいだろう。資本主義経済の原理からすれば、例え作りが複雑でも、大量に売れさえすれば原価は下がるものなのである。だがエルゴノミックキーボードの場合は、値段が上がることはあっても、下がることはまずない。
だがそんなエルゴノミックキーボード業界、といえるほどの業界があるのかは知らないが、その中でほぼ唯一と言えるほどリーズナブルな価格で健闘しているのが、実はMicrosoftなのである。
元々ソフトウェアの会社である同社だが、ハードウェア製品でも知られるようになったのは、茄子のように曲がった形状で「意外にやるじゃん」と好評だった「マイクロソフトマウス」が最初だったろう。その後ホイールが付いたり光学式になったりワイヤレスになったりといった改善を加えながらも、そのエルゴノミクスな形状は人気が高い。
キーボードに関して同社製品には、ホットキーを大量に装備したような路線の製品も多いが、エルゴノミックキーボードも古くから作っている。今となっては資料もないが、おそらく同社の最も古いエルゴノミックキーボードは、「Microsoft Natural Keyboard」であったろう。発売時期は記憶に頼るしかないが、Windows98よりも前だったので、おそらく1997年ごろだったのではないかと推測する。
その後「Natural Keyboard Pro」になり、「Natural MultiMedia Keyboard」になり、途中マウスとのセット「Wireless Optical Desktop Pro」などを経て、最新モデルが「Natural Ergonomic Keyboard 4000」という変遷をたどったようだ。
また同社には、左右にキーが分かれた「Natural」シリーズのほかに、分かれてはいないが配列が湾曲した「Comfort」シリーズもある。これをエルゴノミクスと呼ぶかは議論が分かれるところだが、少なくともそこに人間工学的な配慮があることには違いない。
斬新な手法
「Microsoft Natural Ergonomic Keyboard 4000」以下(NEK4000)は、従来の同社製エルゴノミックキーボードとは異なる部分が大きい。その最大の特徴とも言えるのが、「パームリフト」の存在である。
パームリフトとは、キーボードのパームレストの下に装着する台座である。これを装着することで(というかデフォルト状態ですでに装着されているのだが)、キーボードの手前側が高く上がり、相対的に奥側が下がる事になる。
これまでのキーボードのあり方と全く逆なのである。従来のキーボードは、角度を付けると言えば奥側が持ち上がるのが普通であった。NEK400の場合、この高くなったパームレスト部分に手首を乗せることで、緩く手を下げた状態になる。
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