麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
メディアの多様化が進むビデオカメラ事情(4/4 ページ)
またもや大ヒットの予感――ハイビジョンハンディカム「HDR-HC3」
――従来のテープメディアでも、大きな話題を呼んでいる製品がありますね。
麻倉氏: DVD/HDD/SDメモリーカードといったノンリニア系に対して、ついに出たのが「HDR-HC3」です。従来のDVテープにHD画質で記録できるハイビジョンビデオカメラとして昨年登場した「HDR-HC1」が予想以上に大ヒットしたのですが、今回のHC3もまちがいなく大ヒットするでしょう。春はビデオカメラの非常に大事な時期で、イベント性を重視している製品が多いのが特徴です。一期一会のイベントならば最高の画質で残したい、というのがイベントカメラの最大の存在価値ですが、この点では今ならハイビジョンビデオカメラの右に出るものはありません。
薄型テレビや次世代DVDなどでハイビジョン化が急速に進んでいますが、昨年、家庭用ハイビジョンカメラ第1号機として登場したHC1は、そういった時代のトレンドを読んだ動きといえます。HC3はビデオカメラとしても非常に小さくなりました。ハイビジョンビデオカメラの小型化をわずか半年で実現してきたソニーには、開発者魂のようなものを感じますね。
――HC3は、HC1に比べて容積・重量ともに約26%減らして“てのひらサイズ”になりました。
麻倉氏: 小型化したことで、いつでもどこでも常時携帯できるハイビジョン撮影環境が手に入ります。ハイビジョンで撮っておけば、その後DVDにしたり、ハイビジョン画質のままBlu-ray Discに保存したりと多目的活用が可能になってくるのです。ノンリニア系の台頭でメディアがいくら多様化しても、映像に関してはSD画質。いい画で撮って、将来見ても色あせない画質で、というところにハイビジョンビデオカメラの絶対的な存在価値があります。
現在のビデオカメラ市場で「先が楽しみだな」と感じる理由は、DVD/HDD/SDメモリーカードといったノンリニア系が現状のプラットフォームの中で新しい提案を行って市場を活性化しており、しかもハイビジョンビデオカメラでは将来のビジョンも指し示しているところです。現在おこっているノンリニアとリニアの関係が、そのうちハイビジョンビデオカメラの方にもおこるでしょう。その意味で、今後のビデオカメラ市場には大いに期待しましょう。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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