麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
CEATECで見つけた4つの次世代トレンド(4/4 ページ)
――最後のトレンドを教えてください。
麻倉氏: 4番目のトレンドとしては、ネットワークの高度化に注目しました。CEATECのカンファレンスとして行われたJEITAのシンポジウムで「放送と通信の融合のアプリケーションがユーザーに与える影響」というテーマで講演を行ったのですが、慣れないテーマなので自分なりにかなり勉強しました。そこで思ったのは、放送の通信の融合などというものは、融合するかどうかという議論より、融合したとこから何ができるかということを考えないとアプリケーションは見えてこないということです。融合といったときに、単にテレビにインターネットが入ってきてチャンネルが増えるというだけではメディアが増えただけなわけです。そうではなく、テレビを観る楽しみがより深まるという方向で融合が進めば、ユーザーベネフィットになると考えました。
そこで私がシンポジウムで提案したのが“全録”という発想です。「全録=全チャンネルを全部録画すること」というのは以前から私が提唱しているものですが、この全録対応HDDレコーダーがそろそろ出てきそうなのです。ためたコンテンツをどうやって楽しむかというところで、放送と通信の融合によるアプリケーションという考えが脚光を浴びるのです。全録とネットワークを組み合わせ、「Web2.0」のような、ユーザー指向の草の根的エアチェックができるというのは面白いです。もう1つは“タギング”という流れです。番組に勝手にチャプターをうち、それを多岐に利用するというもので、すでに先進エアチェッカーの間では話題になっています。放送と通信という固い言い方でなく、好きな場面を人に教えたい、見てもらいたい……という、草の根的ニーズに注目しなければなりません。
メーカーブースではビクターが良かったですね。ビクターは毎年、CEATECにブースを構えていますが、今年は抜群の出来でした。特に素晴らしいのは、同社自慢の4K2Kプロジェクターによる立体映像。CEATECでの立体映像はこれまで時折デモもありましたが、今回の「宇宙の生成」のような優れたコンテンツを観たのは、これが初めてでした。二つの小宇宙がひとつに合体するまでの、25億年を3分に超短縮化した映像は、ワクワクドキドキの連続。これが2次元ではやはり単調でしょうが、3次元になると、これほどエキサイティングで、興味深いものか、改めて感心しました。これもスーパーハイビジョン時代へのさきがけと思いました。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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