“動画解像度”に関するいくつかの懸念(2/2 ページ)
話を戻そう。apdc方式の動画解像度には、当初からいくつかの疑問が投げかけられていた。たとえば、移動するパターンがモノクロのため、色割れによる階調表現の悪化が動画解像度に反映されにくいという指摘。これが数値にどの程度影響するのか分からないが、指摘には頷ける。
パターンの移動速度を「端から端まで5秒」に設定している点も挙げられる。これは対液晶というより、むしろ有機ELやSED、FEDなどの次世代テレビとの比較においてプラズマに利するかもしれない。インパルス駆動のSEDやFEDなら、apdc方式で測定すると1080TV本(フルHDパネルの場合)がフルに見えるはずだが、フルHDプラズマの900TV本と比べても“液晶 v.s.プラズマ”ほどの差は感じないからだ。
しかし、測定の条件をきつくする――パターンをより高速にスクロールすると、プラズマと次世代パネルとの差は広がるはず。先月の「Display2007」会場でエフ・イー・テクノロジーの担当者が話していてた「プラズマ陣営は12pixel/fieldで比較して“動画に強い”と言っているが、FEDはそれ以上」という言葉はそういう意味だろう。
また、個人的に気になるのは、apdc方式では評価映像の動きが水平方向のみである点だ。解像感に最も影響する水平方向を最初の指標にしたこと自体に異議はないが、ドラマや映画でパンだけではなくティルトも多用されるし、サッカーの試合で横方向にしかパスを出さないなどあり得ない。将来的に拡張することは検討するべきだろう。
たとえば、近い将来に倍速以上で駆動する液晶パネルが値下がりし、コスト競争の激しいエントリーモデルにまで波及したとき、動画解像度を利用して“見かけ上のスペック”を向上させた製品が出てこないとも限らない。倍速駆動の液晶テレビでは中間フレーム生成の精度が画質を大きく左右するため、各社とも上下左右・斜め方向を含めたベクトル演算技術を一生懸命開発したわけだが、測定方法が横方向だけでは、CPUパワーやメモリ容量をケチって水平方向だけを監視する……「考え過ぎ」と言われるかもしれないが、過去の低価格ハイビジョンテレビの中には、パネルがWXGA解像度だからといってデジタル放送のデコードを半分しか行わない“ハーフデコード”機だってあった。
さて、いろいろとケチをつけてきたが、個人的にはapdc方式の“動画解像度”測定法は悪くない指標だと思っている。理由は割と単純で、数値が非常に分かりやすく、また画面を実際に見て感じた印象にかなり近いからだ。とくにブラウン管と比べて液晶の動画表示に首を傾げていた人たちにとっては、「我が意を得たり」と思える結果が出ているわけで、動画解像度という言葉が急速に広がった背景には、そうした事情が絡んでいると思う。
液晶テレビのサイドに立って考えても、倍速駆動など最新技術の成果が見えやすいという点で「モノは使いよう」だろう(パナソニックは実践している)。とくに液晶の場合は、「応答速度」というスペックが信用をなくして久しく、新たに提案されたMPRT(Moving Picture Response Time:液晶パネルの応答速度をより客観的かつ人の目に近い形で数値化する指標)もまだ普及は見えていない。もちろん、MPRTが普及して状況が変わる可能性はあるし、液晶テレビメーカーの技術者からは、「apdc方式は、MPRTの測定が難しいプラズマ陣営が出した苦肉の策」という意見があったことも併せて紹介しておく。
apdc方式の動画解像度は、いくつかの問題を内包しつつも認知度を高めてきた。apdcでは、「現在の測定方法は、いわば“ver.1”。将来的に改善や拡張をくわえる可能性はある」としており、今後の展開にも期待できそうだ。ただ、すべてのメーカーとユーザーを納得させるのなら、むしろプラズマ陣営の枠を超えて、標準化機関に提案するくらいの意気込みで臨んだほうがいい。ユーザーはいつだって、分かりやすい指標を求めているのだから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
4
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
-
5
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
6
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
7
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
8
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
9
「若手はAI使うな」は“老害”なのか? 新人教育で「AI禁止」した企業の1年後
-
10
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR