YouTubeが日本戦略加速 成功のカギは「パートナー」(1/2 ページ)
「パートナーのビジネスが成功して初めて、YouTubeは成功する」――来日したGoogleのコンテンツ担当副社長デービッド・ユン氏は8月2日、都内で開いた記者会見でこう繰り返した。
日本のYouTubeユーザーは米国に次ぐ2位。6月19日に日本語版を開設するなど、「YouTubeにとって日本は重要な戦略拠点」(ユン氏)となっている。YouTubeは日本の強力なメディア企業とパートナーシップを結び、優良コンテンツを確保しながら、広告を中心にしたビジネスを展開していきたい考えだ。
ただYouTube活用に積極的な日本のメディアはまだ少数。多くのメディアはYouTubeの人気の高さを知りながらも、著作権侵害コンテンツを問題視して反発するか、態度を保留しているのが現状。パートナー拡大のために、YouTubeが著作権侵害への対策に本気で取り組んでいることを示し、理解を得ることが不可欠になっている。
ユン氏は「Googleは著作権侵害を望んでおらず、侵害コンテンツを見つけられる技術を開発している」と説明しつつ、「YouTubeはネガティブな面が強調されがちだが、ポジティブな面も真剣に検討してもらえれば」と話す。
“ポジティブな面”をいち早く評価し、YouTubeのパートナーとなったメディア企業もある。スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)、GDH、吉本興業はすでに公式チャンネルを設置した。ミクシィは、YouTube動画をmixi日記に投稿できるようにし、カシオ計算機は米国で「YouTubeデジタルカメラ」を発売する。角川グループも、YouTubeとの連携を模索している。
日本のパートナー企業幹部らも、同日の会見にそろって出席。YouTubeが動画のプロモーションにつながっていることを報告し、ネットの動画を新ビジネスにつなげていきたいと期待を述べる一方で、著作権侵害対策をもっと進めてほしい、とも話した。
パートナーのビジネスを意識しない限り成功はない
YouTubeは、日本を含む10カ国で展開中。「ある調査によると、米国の65の動画サイトのトラフィックのうち半分はYouTubeで、今年1月から5月の間に70%トラフィックが伸びた。1日当たり数億の動画が視聴され、数十万の動画がアップロードされている。1分間に6時間分の動画がアップされている計算だ」とユン氏はYouTubeの規模の大きさを説明する。
YouTubeのパートナーは、米国では1000社以上。「パートナーのビジネスを意識しない限り成功はない。YouTubeはパートナーの声を聞き、日本でも業界のリーダーと提携していきたい」(ユン氏)
著作権侵害対策技術、秋に投入
パートナーや、パートナー候補となるメディア企業からの最も深刻な“声”は著作権侵害対策だ。24時間体制でYouTubeにアップされる違法動画をチェックしているメディア企業も少なくない。
YouTubeは、侵害コンテンツを随時削除するなど対策を進めながら、日本の権利者団体などとの話し合いを続けているが、合意には至っていない(関連記事参照)。
「YouTubeに違法なコンテンツが投稿されることを望んでおらず、投稿ページには違法コンテンツをアップロードしないよう表示している。特定の動画と同じ動画が投稿されていないかを、声紋などからマッチングする技術を開発しており、実験も始めている。秋ごろに提供を始められる」――ユン氏は、Googleが開発中の技術で問題を解決できると展望する。
ただ、権利者団体側はこの技術では不十分と不満を示す。「日本の権利者に満足してもらえる形にはまだたどりついていないが、対策は進みつつある。人力ではなく、技術的に解決するめどを付けるほうが、最終的な解決につながる」(グーグルの村上憲郎社長)
ユン氏は「ネット動画はまだ初期の段階にあり、技術もまだまだ最低レベルにしか達していない。ビジネスルールも確立していないことを理解してほしい。これから技術水準を上げられるよう頑張りたい」と現状に理解を求めた。
「トルソー」コンテンツでYouTubeを活用してほしい
「YouTubeはネガティブな影響が強調されがちだが、ポジティブな面もある。権利者のみなさまには、メリットを真剣に検討していただければと思う」とユン氏は強調する。
ユン氏によると、YouTubeを最も生かせるコンテンツの1つは「トルソー」(胴体)。ロングテール理論で言う、ヘッド(頭)とテール(しっぽ)の間だ。
「YouTubeは、テレビ番組にするにはニッチすぎるものの熱烈なファンのいる“トルソー”コンテンツを保有している中小・中堅のオーナーのビジネスを改善できると思う」(ユン氏)
日本のパートナーが見るYouTubeのメリット
“ポジティブな側面”にいち早く目を付け、日本で最初のパートナー企業となったスカパーの田中晃専務は「YouTubeユーザーのボリュームに驚いている」と話す。
「最もアクセスの多いグラビアアイドルの動画は30万視聴、Jリーグの動画は1本当たり5万~6万ほど視聴される。YouTubeからリンクを貼っているサイトのアクセスは倍以上になった。プロモーションメディアとしての媒体力を実感している」(田中専務)
今後はプロモーション用の短い動画だけでなく、YouTubeでオリジナル企画の動画を配信していく予定。「ドラマの第一話をYouTubeで配信したいというコンテンツ企業もある。YouTubeで新しい展開も行っていきたい」(田中専務)と意欲を見せる。
地上波テレビ局として初めてパートナーとなったTOKYO MXの田沼純技術局長は「他の民放局はYouTubeのネガティブな側面を気にするようだが、当社はキー局系列ではない独立局。YouTubeのポジティブな部分に着目し、世界にコンテンツを発信したいとパートナーになった」と背景を説明する。
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