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れこめんどDVD:「サンキュー・スモーキング<特別編>」(2/2 ページ)
センス抜群の2世監督、さてその父親とは!?
こういう情報操作は日本でも行われていたりするが、特にアメリカでは湾岸戦争時のオイルが海に垂れ流しにされているという映像で国民の感情を煽ったり、9.11とは全く関係のないイラクがいつの間にか攻撃の対象になっていたり、戦争や政治の世界だけでなく、食品業界や学習グッズ、おもちゃに至るまで、形を変えて情報操作が日常的に行われている。
そして誰にとっても悪い面しかないはずのタバコでさえ、民衆は情報操作に踊らされるという危険性をあぶり出しているのだ。そんな重いテーマを扱う社会派映画であるにも関わらず、別にそれを批判するわけでも、説教するわけでもなく、スピニングに踊らされる民衆の狂騒をシニカルに笑い飛ばしているところが気持ちいい。監督の絶妙なバランス感覚と全編を貫くスタイリッシュなそのセンスに脱帽する。
主役のアーロン・エッカートをはじめ、ウィリアム・H・メイシー、ロバート・デュバル、マリア・ベロ、ロブ・ロウら、渋すぎるキャストを演出した監督はなんと28歳の新鋭、ジェイソン・ライトマン。ライトマンという名に反応した方(すでにテーマソングが頭に流れ出している方)、そう、彼はあの「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督の息子。
2世監督と言うと最近の日本では「バトル・ロワイアル」「ゲド戦記」を思い出すが、彼の場合は己の力で着実に道を切り開いてきている。大学2年のときに「Operation」で短編監督デビューし、以後、短編を中心に世界各国の映画祭で多くの賞を受賞。短編、テレビCMを中心に撮り続け、そして今回、満を持して初の長編映画となった。父のコネはほとんど利用せずに原作者を自ら説得し、映画化にこぎつけたという骨のある男だ(音声解説の途中に堂々とトイレに行く、この人。ある意味すごい)。
本人自身、有名監督の息子と思われるのを毛嫌いしているが、面白いことに、この作品は父と子の絆を描く物語としても成り立っていることだ。主人公ニックのロビー活動を描きながらも、彼の息子ジョーイ(キャメロン・ブライト。「X-MEN:ファイナル ディシジョン」のボウズ少年)の視点を入れることでさまざまな問題を提起している。別れた妻の再婚相手からジョーイの前ではタバコを吸うなと注意されたり、息子の目の前でマルボロ・マンを買収するハメになったかと思うと、絶体絶命のピンチに唯一味方してくれたのが息子だったというエピソードも。
主人公ニックの仕事におけるモラルや家族の関係、倫理観、自己責任論などが息子の視点を入れることによってひとつのスパイスとして効いてくる。それはまるで幼少期の多くを父の仕事現場で過ごしたジェイソン・ライトマン監督自身の視線のように感じられる。
彼自身実際に「ツインズ」「ゴーストバスターズ2」「キンダーガートン・コップ」などにカメオ出演し、仕事現場で父の背中を見て育った自分の経験を投影しているのだろう。ジョーイが父と2人で行くロサンゼルス出張時の映像がなんと美しいことか。
映画の本質を覆す衝撃の未公開シーン集
映像特典の話に入る前にひとつだけ。全世界的に禁煙運動が高まるこのご時世、しかもその急先鋒国であるアメリカで、タバコを擁護する男を描いたこの作品。かなり挑戦的な内容だが、この映画の恐るべきところは、ここまでタバコ業界に関わる人たちを描きながらも、本編中で誰1人タバコを吸わないどころか、1本たりとも火のついたタバコが出てこないところだ。タバコが良いのか悪いのか、怪しげな情報に惑わされず、自分の頭で考えよと警告しているようだ。
喫煙シーンをひとつも盛り込まずに、この映画を創り上げた監督の手腕に改めて……、と本文2回目となる帽子を取りかけたところで映像特典を観たところ、未公開シーンに入っていた!喫煙シーンが。
“人気者”に収録されている未成年者の喫煙撲滅キャンペーンCMだけでならまだしも、“復帰後の一服”でニックまでもがタバコを吸っている。あげく、“ジョーイとタバコ”では息子ジョーイがタバコを吸おうとしてニックに止められる。これはニックが真っ当な父親としての道を歩み出す当初のラストシーンとして撮影したと監督が音声解説で打ち明けるが、喫煙シーンをひとつでも撮影していたという事実は、この映画の本質を大きく揺るがすことと思うのは考えすぎか。
少なくとも喫煙賛成映画にするか、反対映画にするか最後まで立場が揺れていたわけで、この映画全体の印象を大きく変えてしまうほどの破壊力を持った未公開シーン。怪しげな情報に惑わされず、自分の頭で考えよということですかね?監督。
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