小寺信良
「ワンセグ」が変えていくテレビの存在意義(3/3 ページ)
反対に韓国メーカーのPMP(Portable Media Player)は、日本のワンセグに対して積極的にトライしてくる可能性が高い。今手元にCOWON D2をベースにしたワンセグ搭載バージョン「D2TV」の試作機がある。価格は未定だが、この秋発売ということである。
COWON D2はメモリタイプの小型PMPで、音楽、動画、写真、テキストメモ、FMラジオ、ボイスレコーディング機能を備えている。またFlashも動作するため、Flashアニメーションの再生やタッチスクリーンを使ったゲームなどもプレイ可能だ。
もともと韓国バージョンのD2には、韓国独自のモバイル放送である「DMB」に対応したモデルがあった。DMBは方式の違いなどから、日本のワンセグよりも受信感度が高く、内蔵アンテナだけで受信できるのだが、日本向けワンセグ機の開発には、受信感度の向上に苦労したようだ。
ボディ横には、引き延ばせば20センチを超える長いロッドアンテナが格納されている。そのおかげもあってか、受信感度は国産製品と遜色ないレベルとなっている。
今のところ番組表は表示できず、予約録画機能もないが、放送中の番組をその場で録画することは可能だ。このあたりの使い勝手も、ファームウェアのアップデートで改善されるのかもしれない。
現在ワンセグなしの4Gバイトモデルが2万9980円、2Gバイトモデルが2万4980円なので、ワンセグ付きモデルがどのような価格設定になるのかは興味があるところだ。国産ワンセグ複合機がほぼ3万円台であることを考えると、2Gバイトモデルでそれぐらいならば、十分競争力はあるだろう。
iPodの台頭や商習慣の違いから、韓国製PMPは店頭から姿を消しつつあるが、アキバのショップやオンライン販売では強いところを見せている。これは一般層ではなく、かなり「分かった」顧客層に支持されているということだろう。
それにしてもCOWONが面白いのは、まだメーカーから発表していない試作機を送ってきて、記事にしていいというおおらかさである。市場規模が違うということもあるだろうが、これがAppleだったら発表前の製品が筆者のところに送られてくることはまずないわけで、その文化や商習慣が極端に違うのがおもしろい。
地デジ対応デジタルテレビで沸く家電業界だが、今後そのターゲットは、都市部から地方部へドーナツ状に広がっていくことになる。一方でワンセグは、都市部と地方部で完全に分離したソリューションになるはずだ。都市部ではケータイや音楽プレーヤーなどと一体化したポータブル複合機として。地方部ではカーナビと一体化した車載受像器として。
また、テレビに対する接し方によっては、大型テレビを買わずにワンセグで十分とする層も現われるかもしれない。それは携帯電話が固定電話の存在意義を駆逐したことと、似た話かもしれない。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は小寺氏と津田大介氏がさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社) amazonで購入)。
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