“埋もれた職人”に光を――ひろゆき氏に聞く「ニコ動(RC2)」(1/2 ページ)
「ニコニコ動画」に無名の“職人”が集まり、新たな創作が次々に生まれている。「初音ミク」でオリジナル曲を作る作詞作曲家、3Dアニメを発表する動画作家、ギター・ベース・ピアノを1人でセッションする音楽家、「ゼロによる割り算」の意味を教える先生――対価も求めず表現を続ける彼らに、「才能の無駄遣い」という賛辞が贈られる。
動画職人たちのモチベーションは、作品を見てくれる他ユーザーからの反響だ。再生数とユーザーからのコメントが、彼らの創作の糧になる。
「ニコニコ動画は職人さんとユーザーさんが集まる土台」と、運営企業・ニワンゴ取締役の西村博之(ひろゆき)氏は言う。10月にリニューアルした新版「RC2」には、職人たちとユーザーが、一緒になって遊べそうな新機能を詰め込んだ。みんながニコニコする機会が増えればうれしいという。
「ニコスクリプト」で動画ゲームも
RC2は「ニコニコ史上初の“前向きな”リニューアル」。投稿者は動画をアップするだけ、閲覧者はそれにコメントを付けるだけ――という従来の機能を大幅に拡張し、投稿者が自分専用コメントをアップロードできる機能や、迷惑コメントを非表示にする機能を搭載した。11月上旬には、投稿者と視聴者が一緒に“遊べる”目玉機能「ニコスクリプト」(NICOScript)を実装する。
ニコスクリプトは、コメント欄に専用コマンドを入力すると、動画にさまざまな機能を付けられるというものだ。「要はコマンドなんだけど、かっこ付けて『スクリプト』という名前にしてみた」。まずは以下のような機能から実装していく。
(1)投稿者が動画を丸い「窓」でくりぬいて一部分だけ見せ、その窓を視聴者が「上」「下」「左」「右」のコメントで動かせる「窓」、(2)投稿者が動画上に丸い玉を起き、「窓」と同様その玉を視聴者が動かせる「玉」、(3)特定の言葉が投稿されると「当たり」などとメッセージを表示できる「クイズ」、(4)視聴者に対して特定の数種類の言葉の投稿を促し、その言葉が投稿された回数を集計する「アンケート」(5)再生中に他の動画にジャンプできる「動画ジャンプ」、(6)コメントを目立たせられる「コメント・アート」――などだ。
発想のきっかけは「動画でゲームのようなものを作れるようにしてみたい」と考えたこと。例えば「窓」を使えば、動画上の隠れた場所から“答え”を見つける宝探しゲームを、「玉」機能なら、玉を動かしてゴールに入れるゴルフゲームのようなものを作成可能だ。動画ジャンプ機能を使えば「『かまいたちの夜』のように、選択肢によって異なる動画に飛べるサウンドノベルのようなゲームも作れるのではないか」とひろゆき氏は言う。
ただニコニコ動画には既に、コメント機能を駆使してゲームのような動画を作っているユーザーもいるという。アンケートやクイズ、コメント・アートも、ニコニコ動画で既に行われていたものをシステムとして取り入れ、利用しやすくしたものだ。「ユーザーさんは、思ってもみなかった意外な使い方を発明してくれる。ぼくらの想像力は、既に超えられてる」
スクリプトは10月18日に実装予定だったが、11月上旬に延期した。「開発環境では問題なく動いているのだが、実環境ではまだ負荷に耐えられない」というのが理由。「リリース後は、ゲームを作れる人が、クリエイターとしてニコニコ動画に参加してくれるとうれしい」
「動画を見るだけならGyaOでいい」
職人たちの創作を支援していきたいと、ひろゆき氏は言う。「動画それ自体を見るならGyaOに行けばいいと思うし、ニコニコ動画でGyaOと同じことをやっても仕方ない。ニコニコは、誰かが作ったものを与えられて楽しむんじゃなくて、自分たちがもの作りをして楽しめる場にしたい」
ニコニコ動画は、ブログシステムのような「創作のプラットフォーム」になりつつある。「Movable Typeは、コメントやトラックバックの仕組みで文章を書くモチベーションを高め、みんながブログを書くようになってネットに面白い文章も増えた。映像や音楽に関してはそういう仕組みが少なかったけど、映像にみんなで茶々を入れられるというニコニコ動画は、ブログのような仕組みを映像に取り入れられたんじゃないかな」
「埋もれた才能」に特に光を当てたいという。テレビなどメジャーなメディアには出てこない、ほんの趣味程度で作った作品がたくさん投稿され、ニコニコ動画に集まるユーザーのうち、誰か1人の心にでも届けば面白い。
例えば「組曲 ニコニコ動画」(ニコニコ動画で人気の楽曲を組み合わせたメドレー)をカラオケで歌い、「いい声」と人気が出た「いさじ」さん。「いさじさんは多分、本職の歌手の方ではないし、あの野太い声は今のメジャーレーベルの売れ筋ではないだろう。でも彼の声が好きだと思う人がニコニコ動画には1万人ぐらいはいる。彼のような人と、彼の声を聞きたい1万人とが出会えれば、みんな幸せになれるかなぁと」
「映画祭」「ニコペディア(仮)」でニッチを掘り出す
みんなでニコニコできる動画を掘り起こすために――動画コンテスト「国際ニコニコ映画祭」も11月から開く。手塚眞さんを審査員に迎え、月に1回ペースで優秀作を決める予定だ。
「面白い動画を集めてみんなで『これ面白いよね』と紹介する――ってのをやりたいと思ってて。『国際映画祭』をいう大層な名前を付けてみました。手塚さんが(めったに引き受けないという審査員を引き受けるなど)ノリノリだったのに驚いた」(ひろゆき氏)
「とかち」「MAD」など、ニコニコ動画でよく使われるキーワードを解説したり、他の動画の影響を受けて生まれた動画の“進化の系譜”を確認できたりする辞典も、年内をめどに作成する計画だ。「名前は『ニコペディア』とか『ニコニコ用語の基礎知識』とか言っているけどまだ未定」
ニコニコ動画では、他ユーザーが作った動画に触発されて新しい動画が生まれることも多く“元ネタ”を知らないと楽しめない部分もある。「流行がすごく早い上、どうしてもPC好き・理系の人が好きなコンテンツが中心で、一般の人たちが付いて来れない部分がある。映画祭や用語辞典など、もっと一般的なコンテンツを提示できるルートを増やしていきたい」
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