スピーカーの“群遅延”を解消する「フルバンド・フェイズコントロール」とは?(4/5 ページ)
ネットワーク回路を類推することで群遅延特性を特定
スピーカー設計では、使用するユニットを選定し、クロスオーバー周波数を決め、どのようなアプローチで位相を揃えていくのかという順で、さまざまな選択肢の中から仕様を決定していく。
元々、スピーカーメーカーとして出発し、プロフェッショナル向けのスピーカーユニット開発元としても世界的に知られるパイオニアだけに、どのような手順でネットワークを設計するのかは熟知していた。そして、試行錯誤の中で取られた計測データも数多くあり、「どのようなユニット構成で、どのようなネットワーク設計を行えば、計測結果がどうなるかといった膨大なデータベースがあった」(細井氏)という。
そこで、計測結果を基にして補正値を決めるのではなく、位相の計測結果を元にして、ネットワーク設計がどのように行われているかを判別するという手法を用いることにした。回路構成さえ類推できてしまえば、位相特性が各ユニットごとにどのように変化するかを計算で求めることができる。スピーカーネットワークをシミュレートし、その逆の位相へと補正すれば、環境などの影響を排除して純粋にスピーカー特性だけを整えることができるからだ。
例えば、計測値をまじめに補正しようと処理を行おうとすると、壁からの反射波まで打ち消そうと誤動作する可能性があるが、ネットワークのシミュレーションでスピーカーが本来持っている特性だけを補正するのであれば、誤動作は発生しない。
この結果、非常に高い確度(99%程度)で、スピーカーの位相特性を判別できるようになった。残りの1%は? というと「ツイーターとウーファーが、前後に1メートルぐらいずれていると、うまく検出できません」(細井)と、かなり極端な例(各ユニットを別エンクロージャに収め、異なる位置に置いた場合など)を除けば安心して良いという。
また最低域に関しては、量感を演出するため、あえて位相をズラして設計しているシステムもあるため、計測は150Hz以上のみ、補正は200Hz以上の帯域のみに対して行う。類推するネットワークの種類は、複数のアルゴリズムとパラメータの組み合わせで5500通りあり、このパターンに合致しない場合は、測定結果からパラメータ値を補正して対処している。もちろん、フルレンジスピーカーでは、処理そのものを行う必要がないが、フルレンジスピーカーを検出した際に“何もしない”というアルゴリズムも入っているそうだ。
補正処理は、各ユニットが担当する帯域ごとに分割し、それぞれの位相をズラして合成すれば簡単……に思えるが、実際にこうした処理を行うと周波数特性が大きく損なわれ、音が全く良くない。そこで、この機能を実装する際に服部氏、は「ネットワークと逆の位相特性となり、周波数特性に影響を与えないFIRフィルタを作成し、パラメータを調整することで対処しました。異なるアルゴリズムのネットワークに対しては、それぞれに個別のフィルタを設計しています」と話す。
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