小寺信良の現象試考
思い切って放送行政のちゃぶ台をひっくり返してみよう(2/3 ページ)
ワンセグだけあれば十分
デジタル放送は、これまでの設備投資やインフラが無駄にならないように、ワンセグだけ残そう。セグメントが1/12で済むので、今後の設備投資もずいぶん楽になるはずである。
現代人の生活は、昔のように9 to 5ではない。これまでどおりの生活の人もいる一方で、仕事開始が遅く終わりも遅いといったスタイルの人も増えている。テレビの番組編成に対して生活が合わないため、「テレビが見られる時間に見たいものがやってない→テレビはつまらない」といった連鎖反応が起こっている。
それならば、ワンセグはサイマル放送でなくてもよくなったので、アナログ地上波の番組編成のままで2時間、ぐるっと後ろにずらしてしまえばいい。そうすれば今よりも多くの人のライフサイクルに合うはずである。また地上波で見逃した人は、2時間後にワンセグで見ればいい。そうすれば見逃し防止のために録画しなくてもすむようになる。
ワンセグでは画質が悪い、と思われるかもしれない。だがそれはケータイなどのモバイル状態で、電波受信状況の悪い中で見ているから画質が悪いイメージを持っている、という部分も結構あるのではないだろうか。受信状態のいい場所で固定して携帯などでみると、結構見られる画質である。
ワンセグはもともと普通の地上デジタル放送波の中に含まれているものなので、家庭用UHFアンテナでも受かる。固定受信で小さな画面なら、耐えられるだろう。いやもともと番組をつまらなくする方針で制作するので、そんなに一生懸命見るほどでもないから、画質や画面サイズなど心配することはない。
それでも見逃すのが困るという場合はどうしようか。それならばUSBワンセグチューナーを7つぐらいセットして、全チャンネル録画するような小さなレコーダーを作ればいい。その中から見たいものだけ、携帯などにムーブできれば十分だろう。そもそもデジタル放送の12セグ全部をそのまま録ろうとするから、やれHDDが1テラだ2テラだと必要になるのだ。これをH.264にエンコードして小さくしようにも、エンコーダが7つ必要となり、HDDをたくさん搭載するより不経済である。
ワンセグなら1時間番組が約170Mバイト程度である。これを1日20時間、7チャンネル1週間録画しても、170Gバイトぐらいだ。PC周辺機器でも十分対応できるレベルだろう。
放送が斜陽になった原因は?
今のダビング10と補償金の議論とは逆方向をシミュレーションしてみたが、なんだか消費者にとってはいいことだらけになってしまった。ということは今の放送にまつわる議論は、消費者にとっては非常に後ろ向きであるという事が分かる。
デジタル放送を行政主導で無理矢理始めたのは、経済政策的な意味合いが強かった。しかし実際には、テレビとレコーダーの売り上げで、メーカー間の格差が大きく開いてしまった。うまく波に乗れた会社はほくほく顔だが、うまく乗れなかったところは会社が傾くほどのところも出てきたわけである。まあ全体的に景気が上昇気味だから良かったものの、全体がコケれば官製不況も招きかねなかった大博打であったわけだ。
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