小寺信良の現象試考
アナログ停波までに片付けねばならない5つの課題(2/3 ページ)
B-CASの廃止と解体
先日、エスケイネットのUSB地デジチューナーが、出荷停止されるニュースがあった。ハード的な改造をすることなく、ドライバにパッチを当てるだけでコピーフリーのファイルを取り出す方法が発見されたことが原因であると言われている。
しかしこの方法も、一回録画したあと別のリーダーにB-CASカードを入れて変換するという操作が必要で、必ずしも便利とは言えない。しかしそれでも、一般のPC用チューナーに比べると3倍ぐらい売れているという。いい機会なので、今後ネットへ流出する違法動画コンテンツの増加率を調査するといいだろう。
出荷停止はリリース文を読む限り、自主的な措置のように見える。その一方でこの発表があった当日、エスケイネットがB-CAS社に呼び出されているという情報もある。実際にそこでどういう話になったのかは不明だが、もしB-CAS社が販売停止を命令できる立場にあるとするならば、それはB-CASカードの発行を停止するという実力行使をちらつかせる以外にはないだろう。
ここで考えなければならないのは、一般市民がソフトウェアの改造を行なった責任は、メーカーがとらなければならないのか、という点である。もちろん改造情報をエスケイネット自身がリークしたというのなら別だが、そうでなければユーザーが自力でなにかしたものも、メーカー責任になるということである。これは大変なことだ。
そもそも、そういったDRMの穴があるかどうかをチェックするのが、もともとB-CAS社が行なうとされている「審査」ではないのか。ということは、自分たちのザル審査の責任をメーカーに取らせていることになる。こんな無茶な話は、過去聞いたことがない。
例えば今米国で売られている50ドルチューナーは、韓国LG電子製だという。国内だけで5000円チューナーが難しければ、当然国外の力にも頼ることになる。そのときにB-CAS社のこんな無茶が通るのでは、国内外問わず今後低価格チューナーで参入してこようとするメーカーに対しての、参入障壁となるだろう。
NHKの構造改革
アナログ停波の影響として、これをきっかけにテレビを見るのをやめる人も相当数出るだろう。実際に昨年アナログ放送を停波したフィンランドでは、別途取り付けたデジタルチューナーの操作について行けない老人層、ゲームやDVD、ネットがあれば放送はいらないとする若者層を中心に、公共放送の解約が相当数あったと聞く。フィンランドは元々情報インフラの発達した国ではあるわけだが、日本でも同じような状況になる可能性は高い。
もし家庭にデジタル放送対応の受信機がなければ、アナログ停波と同時にNHKの受信料を払う義務もなくなる。もちろん解約しなければ、そんな事情とは無関係に銀行引き落としなどで引かれ続けるわけだから、もしテレビを見なくなると言う人があったら、忘れずにNHKの受信契約を解約すべきである。今から2011年7月24日にNHK解約と、Googleカレンダーに入れておくといい。
一方NHKでは、大量の解約に備えて構造改革が必要である。NHKというとつい放送事業だけを見てしまって、受信料が唯一の収入源のように思ってしまうが、実際にはグループ会社が多数存在する。
すべて株式会社であるから独立採算ではあるものの、実際には会社名にNHKの三文字が付いているから仕事が取れているという現状は間違いなく存在するし、公共放送という立場ではできない営業活動によって、NHKのリソースを消費しながら収入を得ているわけだ。これらをNHKの公式事業として吸収し、NHK本体へ利益還元すれば、受信料が減少してもNHK本体へのダメージは少ないだろう。
これには放送法の改正が必要だが、放送と通信の関連法を一本化する「情報通信法」の構想も進められている。その中でこの点は検討されるべきだろう。もちろんNHK本体のスリム化は、それ以前の条件としてなされなければならない。そしてそれは民放キー局も同じである。なぜならば、テレビ離れが確実になれば、広告収入も当然、それに応じて減少するからである。
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