日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)(3/3 ページ)
それは僕の構え方の問題だね。やっぱり僕は、はてなが大好きだし、近藤には相変わらず期待しているし、みんなの批判を受けたように、「おまえたちが制度設計し、日本語圏のネット空間が良くなるようにすればいいんだろう」と言われればその通りだし。そういうことを思ったよ。
今、近藤もブログ書いてないじゃない。彼だってアメリカから帰ってきてブログ書かなくなっちゃったじゃない。近藤に聞かないと真意は分からないけど。
はてなって特異なポジションにあるじゃない。最初のうちは無邪気にみんなやっていた。僕も含めて、ウェブ進化論にはてなのことを書いたし。そういうことをやってきた。
そのサービスというのは非常にニュートラルなものだから。確かに制度設計といわれても、できる限りオープンにしたいというのがあるからね。
強権的に何かを削除するとしても、ほかのブログなら何も考えずに消すけれども、うちはむしろ、もうちょっと違うところを目指したりするじゃない。そこが原点になって何か問題が起きたときに、直接的に利用者に対して「君たちがこういう使い方をしているのは良くない」と主観でものを言うのは、はてなの取締役を辞めるまでしないということを、あの事件の時に思ったんですよ。
そしたらさ、新聞記者が、「辞めてくださいよ。辞めて、その発言を日本のためにしてください」と言ったんだよ。僕は「ふざけるな」と。「どうしてそんな失礼なことを君は言うの?」と僕は言ったわけですけどね。
良いインターネットとは
――はてなに日本のネット空間を良くしてほしい、とおっしゃいましたが、「良い」インターネットとはどういうものでしょう。
それもなかなか言いにくいところではあるが……。
ウェブ進化論で書いたような世界というのは、あれは理想郷であるとか空想であるとか言う人もいるよね。日本語圏のネット空間はぜんぜんああなっていない、と。「ウェブはバカと暇人のもの」によると、(ウェブ進化論は)「頭のいい人の世界だ」という。
ウェブ進化論の中では「総表現社会」という言葉を使っている。高校の50人クラスに2人や3人、ものすごく優れた人がいるよね。そういう人がWebを通じて表に出てくれば、知がいろんなところで共有できるよね、というところまでは書いている。
そういう、「総表現社会参加者層」みたいなのが、人口比で言えば500万人とか出てくると。少なくとも英語圏ではそういう層が分厚くて、そこがある種のリーダーシップを取っているわけだよね。
今の日本のネット空間では、そういう人が出てくるインセンティブがあまりないわけさ、多くの場合。「アルファブロガー」的なものも、最初のうちにぽーんと飛び出した人からそんなに変わってないじゃないですか。それが100倍、1000倍になり、すごく厚みをもって、という進展の仕方と違う訳じゃない。
日本のネットは、能力を生かし切れていない
良いインターネットと悪いインターネットというというと善悪の基準が1つあるみたいで良くないけれど。それは僕の好みだと言ってもらってもかまわないけど。
英訳のプロジェクト(梅田さんが、「シリコンバレーから将棋を観る」を翻訳してWeb上にアップすることを自由と宣言したところ、有志が短期間で英訳して公開。仏語版プロジェクトも進行している)も、僕が好きだからやってるんだよね。
やる気のある若い人たちが、日本文化の将棋を世界に広げたい。この本(シリコンバレーから将棋を観る)を読んで、こういう日本のすばらしいことを英訳したい、仏訳したいとか、そういうような人たちのエネルギーを集める能力を、ネットというものは持っているんだよね。
僕はウェブ進化論でそういう可能性について描いた。それを高校生で読んだという人が大学の初年ぐらいになってて、かなり多くの人がそういうことにわくわくした経験があって、日本語圏ではなかなか起きてないねと思っているわけですよ。
英訳プロジェクトのリーダーシップ取った子が書いた文章を読むと「日本のWebをポジティブにしたい」と。そういう“良い”じゃなくてもいいけどさ、こういうことが起こるという可能性を自分はネットに期待してたというからそれをやってくれて。そういうのは僕は好きです。個人的に。
そういうような世界が僕は好きで、人間だから、有限の時間で英語圏で何を見ているんだ、英語圏の悪いところをどこまで知っているんだと言われるけど、少なくとも自分が見たい世界はものすごくたくさんあるよ、英語圏には。大学の教材が全部出てくるとか。
――ニコニコ動画では、ユーザーが作った音楽に、別のユーザーが動画を付けるなど、ユーザー同士の協力によって新しいものができています。
サブカルチャー強いよね、日本は。それも全然否定してないよ、日本のサブカルチャー。日本発グローバルでさ。ただ僕自身がサブカルチャーはそんなに……。僕は漫画読まないしアニメみないしさあ。志向性がちがうだけで。
日本のサブカルチャー領域でのWeb文化の隆盛は十分に分かっていて、敬意を表しています。だから、今さらそういう事例について議論しても、日本のWeb文化が特に変化したとは思えないんだよね。
ただ、素晴らしい能力の増幅器たるネットが、サブカルチャー領域以外ではほとんど使わない、“上の人”が隠れて表に出てこない、という日本の現実に対して残念だという思いはあります。そういうところは英語圏との違いがものすごく大きく、僕の目にはそこがクローズアップされて見えてしまうんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
-
10
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR