麻倉怜士のデジタル閻魔帳
Blu-ray Discの現在地、進歩するプレーヤー(1/4 ページ)
2008年2月。対抗規格であるHD DVDを推進する東芝の撤退というかたちで規格戦争に幕が下ろされ、Blu-ray Discは“次世代メディア”から“新世代メディア”となった。まだDVDほどの市場規模を獲得するまでには至っていないが、BDレコーダーの低価格化も進んだほか、パッケージソフトも充実し、レンタルも開始された。
昨年冬から今年夏にはプレーヤーも高級機から実売2万円台のエントリークラスまで各社から多くの製品が投入され、BDを取り巻く環境は充実の一途をたどっている。そして、HD DVD最大の推進役であった東芝もBDの事業化について、具体的な計画はないとしながらも、「可能性はある」と前向きな検討段階にあるとコメントしている。
前身規格である「DVR-Blue」を搭載した製品が2001年に参考展示されてから8年、いよいよDVDからのメディアチェンジが行われようとしている。デジタル・メディア評論家 麻倉怜士氏による月イチ連載「デジタル閻魔帳」。今回はBDの“現在地”と、昨年秋より新製品多く登場しており、2万円台の製品まで登場したBDプレーヤーについて、麻倉氏に分析してもらった。
東芝がBD参入を検討、今夏の注目はプレーヤー
――BDについて、東芝が事業化へ前向きなコメントを出しました。「RDシリーズ」を擁する同社のBD参入を歓迎するユーザーは多いように思えます。
麻倉氏: デジタルレコーダーにおいてBDが主流となった今、プレイリスト作成に秀でた機種はなくなっていました。現在のBDレコーダーはそのほとんどが、HDDの録画した後にまるごとBDへ移動/コピーするという、いわばHDDをテンポラリな記録領域としてしか使っていません。ですが、東芝の「RDシリーズ」は映像をチャプターに区分けし異なるタイトル間で容易に編集できる機能を備えており、これはエアチェックファンにとって非常に魅力的な仕様でした。
ある歌手に興味のあるひとからすれば、歌番組でうたう映像もバラエティーに出演した映像も、ドキュメンタリー番組のインタビュー映像も、その「ひと」を軸に、自から編集し、簡単にコンピレーションを作り出せたのがRDシリーズでした。RDシリーズは、編集画面を呼び出すことなく、再生しながら頭出し信号を入れるだけでその部分をチャプター化できます。これは編集重視派には重宝するのです。
ダビング10の時代になり、保護されたデジタル放送についても編集/プレイリスト機能を活用できるようになりましたが、ソニー/パナソニックのいずれも編集については旧来のままで、極端に操作性が悪いです。「編集の東芝」がBDレコーダーへ参入するならば、これは朗報といえるでしょう。
BDへレコーダーではなく、どこかからのOEMで調達したプレーヤーを用意するならば簡単に参入できますが、これはよくないでしょう。RD系のBDレコーダーでなければ、存在価値はないですね。単なる“レグザリンク合わせ”ではなく、真面目にレコーダーで取り組んで欲しいです。
ただ、東芝の意思決定に至る経緯がよく分かりません。HD DVDからの撤退を発表した際、同社の西田社長(当時)はワーナーのBD採用など、外的要因にその理由を見いだし、BDに参入せず、DVDで十分とも言っていました(HD DVD事業終息、東芝が宣言) (BD製品展開は「検討していない」――東芝 西田社長)。ですが、今に至るまで「HD DVDがなぜ失敗したか」という、本質的な総括はまだ済んでいないように思えるのです。
HD DVDで新時代を築こうとしていた訳ですから、それまでの決算を済ませ最大限に反省して、ゼロから再出発し、BDへ全力で取り組くませていただくという真面目な恭順の姿勢が必要でしょう。藤井さんの土下座もないままに、なし崩し的にBDをやるなら、けじめをつけなくとも次のステップに容易に行けるのかというモラルハザードの問題にもなるでしょう。
――BDレコーダーについては各社の夏モデル(春発表モデル)が、店頭をにぎやかせています。夏モデルはどの部分に特徴があるのでしょう。
麻倉氏: 夏モデルは各社とも搭載HDDの容量増大など、基本的には昨年冬モデルの延長線にあり、本質な部分に変更はありません。個人的にいま注目しているのはBDプレーヤーです。
これはまではBDプレーヤーを選ぼうとするとほぼPS3しか選択肢のない状態でしたが、昨年から今夏にかけて、ハイ~ミドルクラスではソニー「BDP-S5000ES」、デノン「DVD-A1UD」「DVD-3800BD」、パイオニア「BDP-LX71/91」が登場し、ミドル~エントリークラスでも、ソニー「BDP-S350」、シャープ「BD-HP21」、パイオニア「BDP-LX52」「BDP-320/120」、パナソニック「DMP-BD60」、日本ビクター「XV-BP1」など、非常に充実してきました。
少し昔を振り返ってみましょう。DVDの時代はまずPS2の登場もありプレーヤーが普及し、その後にレコーダーが普及しました。BDは幸か不幸かレコーダーから製品展開が行われ、規格の主導者であるソニー/パナソニックはレコーダーとしてもプレーヤーとしても素晴らしい製品を当初から投入しました。
そうなると、AV機器としてのBDプレーヤーという製品は必要か?という問いが根底に残ることになり、AV指向の強い層には高性能なレコーダー、低価格を求める層にはPS3という住み分けが行われるに至ったのです。
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