麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ビデオカメラ最新製品、その傾向と課題(1/3 ページ)
今年は9月にも大型連休があるためか、家族行楽を需要の大きな柱のひとつとする、デジタルビデオカメラの新製品発表が例年より速いペースで行われている。フルハイビジョン化は既に当然のものとなり、フォーマットもAVCHDでほぼ一本化されたため、各社が差別化にしのぎを削っている状態だ。
AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションで定評のあるデジタルメディア評論家 麻倉怜士氏に聞く月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回はフルHD/AVCHDが標準となった時代のビデオカメラについて考察してもらった。
麻倉氏: ついこの前に春モデルが発表になったと思ったら、もう秋モデルが出てしまいましたね。春モデルは記録メディアにHDDを採用したものが主流でしたが、秋の新モデルはすべてメモリタイプになりました。
メモリタイプの人気が高まっているので、いち早く対応しようとしたのが、秋モデル登場時期が早いことの理由のひとつ。また、この早期化はソニーが春モデルの「HDR-XR520V/500V」で仕掛けた、暗所での高画質と強力な手ブレというトレンドに対し、各社がどのように対処していくかの発露ともいえます。顔認識もポイントですね。行楽シーズンに向け、売り場の陣取りをするという作戦も垣間見えます。
画質面では、MPEG-2とのデュアルコーデック機を展開していた日本ビクターも今夏~今秋のモデルはAVCHDのみとなり、フルHD/AVCHDでの録画が完全なデファクト・スタンダードになりました。Blu-ray Discドライブ搭載機を投入していた日立製作所は春から動きを見せていませんから、トラディショナルなビデオカメラを製造する企業は、ソニー/キヤノン/日本ビクター/パナソニックの4社となってしまいました。
一方、独自路線を行く三洋電機“Xacti”や、これまでWebカムと呼ばれていた製品群も高性能化が進められています。従来からの延長線にある“子ども撮り”製品の画一化が進む中で、そうした製品がいわゆる“ビデオカメラ”を製造するメーカーへどのような影響を与えるかも興味深いところです。
――今春、ビデオカメラについて伺った際には全体の傾向から伺いましたが、今回は趣向を変えて、メーカーごとの傾向を教えてください。まずは先日“Everio”「GZ-HM400」をラインアップに加えた日本ビクターです。
麻倉氏: 今シーズンで大いに注目したのは日本ビクターです。実はこれまで画質面で特筆すべき部分は少なかったのですが、だいぶ変わりましたね。これまでの同社ビデオカメラは暗部画質がものすごく悪く、ホワイトバランスが安定しないという傾向がありましたが、最新製品の「GZ-HM400」はなかなかの意欲作と感じました。
的確なAFや色バランスといったものに支えられ、フルHDらしい先鋭感と情報量があり、既存製品の延長線上にはない、フレッシュな映像を作り出しています。これまではどっちつかずな印象が強かったですが、GZ-HM400は先鋭感を前面に押し出しており、「新世代のビクター」を感じさせますね。
強調するタイプの映像なので暗部ではノイズを感じますが、ノイズリダクションをかけすぎて大きく破たんするようなことも少なく、それなりに安定しています。色についても、あまり誇張感を感じさせないものです。久しぶりの“ビクター的な絵づくり”といっていいでしょう。ただしまだ課題は残っています。ひとつが室内撮影でのホワイトバランスをもっと精密にすること、暗部の感度を上げること、特に暗部でのカラーノイズに対処すること、手振れに弱いので対策すること――です。AFに関してはなかなか良いですね。
手にした際の密着感とシーソー式ズームレバーの堅さが非常に絶妙で、シーソーを操作しても本体が大きくブレることはありません。ズームレバーがシーソー式かスライド式はトータルバランスで問われるべきですが、今回は吉と出ています。シーソー式ズームレバーに指をかけると、テレ側に人差し指、ワイド側に中指となり、残りの指でボディを固定することになるのですが、その固定時のバランスについてもよく考えられていますね。しかし、小指がマイク穴に触れるのがよくありません。
スライド式の場合、ズームレバーを人差し指1本で操作して残りの指で本体を固定するのですが、これができている機種は意外と少ないのです。外観のスマートさを重視するあまり、撮影時の安定感に不安を感じる製品が増えているのは不満ですね。
日本ビクターに話をもどしましょう。液晶脇のセンサーをなぞることで操作する「レーザータッチオペレーション」も比較的、的確な操作が可能になりましたし、トータルとしての“もの作り感”を感じさせますね。ビクターはビデオカメラ最大手の1社ですから、ビクターらしいもの作りに戻ったのは評価できると思います。
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