麻倉怜士のデジタル閻魔帳
今春のビデオカメラに見る3つのトレンド(1/3 ページ)
今年も春の行楽シーズンを控え、各社からデジタルビデオカメラが多数登場した。ハイビジョンであることはもはや当たり前となり、各社は独自の方向性を模索し始めているようにも見える。
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に、AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションなどを聞き出す月イチ連載「麻倉怜士の『デジタル閻魔帳』」。今回はハイビジョンビデオカメラの今年の傾向について語ってもらった。
――まずはビデオカメラ市場全体の現状を教えてください
麻倉氏: 1年の間に2種類の作物を育て収穫することを二毛作といいますが、デジカメやレコーダーなどは、年に2回、新モデルが発表されています。同じ作物を1年に2回育てるのは2季作なので、あまり正確な例え話ではありませんが(笑)、毎回、マイナーチェンジしていますからね。ビデオカメラもここしばらくの間、年に2回、春と秋に新モデルが発表されています。
AV業界的に言えば2季作で新モデルが投入されるジャンルは成長領域なのですが、実はビデオカメラは市場的な規模はほぼ横ばいのまま推移しており、成長がみられません。新機種が投入し続けられているので、成長領域のように見えてしまうのですね。これはビデオカメラがいまだ、「家庭向けイベントカメラ」であることから変化していないとも言えるでしょう。1年の新生児数(約110万人)とリンクし続けているのが、ビデオカメラの市場ということもできるでしょう。
しかし、今春に登場したモデルを丹念に見ていくと、3つの傾向、トレンドといったものを発見できます。
今春モデルにみられる3つのトレンド
麻倉氏: 第1に挙げられるのは基本性能の向上です。SDがHDになり、フルHDでの撮影、つまりはフルHDプラットフォームが標準化したため、解像度という面では平均化が進みました。HDV(最高解像度は1440×1080ピクセル)からの移行が完了したという言い方もできます。フルHDが標準化したとなると、次はAVCHDという枠の中でどれだけ画質を高められるかという競争にシフトしますが、日本ビクターがついにコーデックをMPEG-2からAVCHDに変更したのは象徴的といえるでしょう。
高画質を実現するための手段は多数ありますが、今春に特徴的なのはソニーが「HDR-XR520V/500V」に採用した手法でしょう。裏面照射型CMOSを採用することで暗部撮影のS/Nを飛躍的に向上させていますし、手ブレ補正も広角側の補正量を高めることで、“手持ちでブレない”という快適さも実現しました。撮像素子からレンズ、各種回路まで垂直統合型でもの作りを行う同社の強みが発揮された好例ですね。基本性能を高く向上させており、今後の他社製品に大きな影響を与えるでしょう。
麻倉氏: 第2は製品企画において画一化が進んでいることです。日本ビクターは記録メディアこそHDDやメモリも採用していましたが、これまでかたくなに映像コーデックはMPEG-2でした。しかし、今春モデルはついにMPEG-2/AVCHDのデュアルコーデックも廃し、AVCHDに絞り込んできました。
パナソニックもこれまで「メイン記録メディアはリムーバブルのSDメモリーカード」というスタンスを打ち出してきましたが、今春からはHDDと内蔵メモリを主とするキヤノンスタイルに変更しました。また、グリップスタイルの「Xacti」を擁する三洋電機も、今春からは一般的な横型をシリーズに加えています。
細かく見ていけばもちろん各製品の性能や仕様は異なりますが、再生についてもハイライト再生機能を備える製品が各社から登場しており、機能、形状や採用規格が違うという相違点が少なくなってきました。確かに分かりにくさがなくなり、利便性が向上するというメリットもありますが、マーケティングのしすぎで「売れ筋」というカタチに収束しつつあるのでという危機感も覚えます。同じようなものばかりでは選ぶ楽しさが減ってしまいますからね。
麻倉氏: さきほどハイライト再生機能を搭載した製品が増えてきたと言及しましたが、「再生」に力を入れる機種が増えてきたことは、第3のトレンドとして挙げられます。
これまでは正直、「撮ったらおしまい」――撮ったら何度か再生はするものの、そこからは死蔵――という製品内容になっていた感があったことは否めません。ですが、今春登場した製品の多くが、何らかの“再生させよう”という仕組みを入れてきました。
本来はビデオカメラ本体やレコーダー、あるいはPCで編集するのが理想ではありますが、そこまではハードルが高いという人向けになんらかのギミックを設けることで、再生が楽しい→撮るのが楽しい→再生が楽しいというループに誘導しようとしています。
家庭向けイベントカメラとして、市場としては急落も急伸もしていないビデオカメラ市場ですが、これまであまり注力されていなかった「再生」について、各社が取り組みを強めたことはひとつのトピックといえるでしょう。
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