麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ステレオの復活、HDオーディオの充実(1/3 ページ)
オーディオ&ビジュアル。対として表現されることも多いこの2つの概念だが、映像は薄型テレビの普及でより高品位な映像が一般的となったものの、オーディオについては市場全体でみると活況を呈しているとは言い難い。しかし、市場として停滞感があることとは別として、新たな潮流も生まれている。
そのキーワードは「ステレオの復活」と「HDオーディオ」だ。
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回は評論・執筆活動のほか、大学(津田塾大学)で音楽理論の教べんもとる麻倉氏にオーディオの“今”を理解するために必要な2つのキーワードについて語ってもらった。
――オーディオの市場全体ですが、テレビやレコーダーをはじめとしたビジュアル関係に比べて元気がないように感じられます。これはオーディオ全体の不況といえるのでしょうか。
麻倉氏: 確かにオーディオ「市場」は長い間、不況と形容できる状態にありますが、愛好する人の数そのものは、団塊世代の退職によるミュージック・ラバーの参入もあり、確実に増えています。不況面を説明しますと、いわゆるミニコンポは確実に毎年、売り上げが下がっています。この落ち込みは原因がはっきりしています。
オーディオの基本要素はプレーヤーとアンプとスピーカーです。ミニコンポは低価格ではありますが据え置き型なので、音楽を外へ持ち出すアウトドアユースを重視する若者には受け入れられず、その音質から本格的な音を欲する層には物足りないとという、どっちつかずの状態になっているからです。これでは売れないでしょう。
ですが、オーディオ全体を見渡してみますと、2つの山があることがわかります。1つはiPodをはじめとしたデジタルオーディオプレーヤーです。つい最近登場したiPhone 3Gのように、ミュージック・エブリウェアというものはもはや何ら珍しいものではなくなりました。
もう1つの山が本格的な単体オーディオで、ここに来て注目度が高まっているように感じられます。復権と表現するほどの激しい潮流というわけではありませんが、このカテゴリーに属する製品の勢いが増しているのは確かです。
その勢いを確認できるのが店頭です。専門店に限った話ではなく、一般的な大型量販店でも、ここにきて単体オーディオの売り場を充実させるところが増えています。大型店でも、2~3年前ならば大衆向けの製品しか販売していませんでしたが、最近ではのハイエンド製品も販売されてるようになっています。その一例がラックスマンです。
以前、ラックスマンは主に専門店へ製品を出荷していましたが、最近では流通の幅を広げ、より来店者の多い大型販売店へも製品を展開しています。ここで特徴的なのは、価格にかかわらず、10万円クラスから数百万円クラスの製品まで、すべてを出荷していることです。結果としてより多くの人が優れた製品に触れる機会が増え、本格単体オーディオの入り口として機能しています。
日本でいわゆる本格単体オーディオを手掛けるのは同社やエソテリック、アキュフェーズなどですが、各社に話を聞くと高級製品が好調だといいます。ラックスマンからは真空管システム「NeoClassico」が、エソテリックからは高級CDプレーヤー、アキュフェーズからはCD再生に特化したプレーヤーがヒットしているということです。
私が店頭で観察してると、若年層がスピーカーへ関心を持っているように感じます。スピーカーは好みが反映されやすいパーツですし、なによりも、“聞けば分かる”パーツです。仮にオーディオワンセットが10万円で欲しいという話があるとしましょう。単純に考えれば、プレーヤーとアンプとスピーカーの3つへ3万円程度という割り振りになりますが、10万円のスピーカーを試聴したひとが、即決してそのスピーカーを買っていったという話を聞いたことがあります。
自分が感動できるならば、3万円ほどの予算を考えて来店しても、10万円の製品を買うことは決して珍しい話ではないのです。
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