麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ステレオの復活、HDオーディオの充実(2/3 ページ)
――では、なぜここに来てラックスマンやエソテリック、アキュフェーズといった本格単体オーディオ製品が勢いを取り戻しているのでしょう。ヒットの要因を個々に説明を頂けないでしょうか。
麻倉氏: ラックスマン「NeoClassico」のヒットは、もちろん真空管アンプによる音質が良いことに加え、積極的なマーケティングの成果ですね。これまで同社のマーケティングといえば専門誌への広告展開が主でした。マニアは愛読するものの、ライトな層が購買層に存在しない専門誌のみのアプローチは、結果的ではありますが、オーディオ不況という状況を自ら引き起こしたとも言えます。
しかし、興味を持ってもらう対象を広げるためには、製品価格もある程度は低く抑える必要があります。価格面でのハードルを越え、本格的な音楽体験へ興味のある層へよりリッチなリスニングをしてもらうために企画されたのが「NeoClassico」なのです。結果、大手新聞や中年向け雑誌といった一般的なメディアに、専門メーカーが入門用の真空管アンプシステムを発売したということ自体をニュースとして取りあげられる機会が増えたといいます。そうした媒体の読者層と真空管アンプを好む年齢層がマッチしていたのです。
ラックスマンの担当者は、「音にこだわりを持つ層、若い頃にオーディオを趣味とした層が、潜在的なユーザーからアクティブなユーザーに変化したのがヒットの要因」と話していました。私は「音が良かった」のが一番のヒット要因だと分析します。NeoClasscioは同社製品のなかでは安価な部類に入りますが、同社ならではの音楽的な音作りのエッセンスはきちんと感じられます。
「真空管の楽しみを知るかつてのユーザーの復活とはいえ、高級な――高価と言い換えてもいい――製品は手軽に買えません。それに、久しぶりの購入だからこそと慎重になる側面もあります」 担当者はそうも言っていましたが、オーディオ回帰層、とも評すべき層がある程度の数になってきたのは確かですね。
アキュフェーズからは、同社ならでは品質や企業姿勢がユーザーへ伝わり、ひいては製品のヒットに繋がったという話を聞くことができました。なかでも、「アキュフェーズを選択してくれる方はハイブリッドを好まない」という言葉が印象的でした。同社はAVアンプやSACD/CDのユニバーサルプレーヤーも用意しているのですが、シンプルな原点回帰とも言える製品が特にヒットしているということです。なかでもCD専用プレーヤー「DP-500」は品薄状態となるほどの人気を博していますね。
実は同社はこれまでソニーのメカを中心にアセンブルして製品を作っていましたが、ソニーがメカニズム供給を停止してからは自社で開発生産を行っています。CDにこだわるというユーザーが多いという需要を受け止め、CD専用かつ、2ch専用のトランスポート部分までも開発し、音質を高めたのがDP-500のヒット要因です。物づくりへのコダワリがその根幹にあるといえるでしょう。
団塊世代が退職後の生活を豊かに過ごすため、「最後の買い換え」として高級機を選択する傾向は存在します。エソテリックの製品はそうした基準からも選ばれています。ですが、40代以下の層からも支持を得ていることも見逃せません。SACDプレーヤー「X-05」はそうした比較的若い層からの問い合わせも多いそうです。
海外スピーカーメーカーの積極的な製品展開も注目したいところです。KEFやELACは近年、新しい価値観に基づくワイドレンジのスピーカー製品を次々とリリースし、いずれもヒットしています。アルミの振動板を上手に使いこなして豊かなサウンドを楽しませてくれるELACは新しい「240シリーズ」はウーファーのコーン形状を変更することで音のレンジを拡大し、現在的なヴィヴットで、積極的な音を奏でます。このシリーズは2007年から販売されていますが、非常に人気を博しており、これまでのトータルセールスを覆すほどだと言います。
ディナウディオも注目ですね。ヨーロッパ系の優れたスピーカーメーカーが積極的に国内進出し、広い層へ製品を展開しているひとつです。一般の家電量販店でもディナウディオはかなり売れているそうです。マニア向けだけではない製品作りやマーケティングが功を奏しているのですね。
国内メーカーではデノンの頑張りが目を引きます。スピーカーの「CXシリーズ」が評判で、それとのマッチングに適したアンプやプレーヤーも用意されています。10万~20万円という価格帯でしっかりとした音を出すよい製品をリリースしています。じっくりとよい音のする製品を作ってきたメーカーとして、同社は評価されているように思います。ブランドのロイヤリティが重視される世界だけに、良いものを作り続けてきたという、まじめな姿勢は高く評価できますね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
-
10
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR