麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ソニーの「大爆発」(1/4 ページ)
お盆休みを過ぎ、8月も末に差し掛かるとAV関連各社の新製品発表が相次いで行われる時期に突入する。いささか気が早い気もするが、今年は9月末に国内最大級の展示会「CEATEC JAPAN」の開催を控えており、展示会でのお披露目や年末商戦を勘案すると、各社からの新製品がこの時期に相次いで発表されるのにも納得がいく。
今年はなかでもソニーの勢いが止まらない。ポータブルオーディオ「ウォークマン」から、デジタル一眼レフカメラ「α」、コンパクトデジタルカメラ「サイバーショット」をはじめ、“BRAVIA史上最高画質”の薄型テレビ、Blu-ray Discへ完全にシフトしたレコーダーも「2011年画質」をうたう新製品を投入し、全ジャンルに渡って新製品を投入するのではと感じさせる勢いだ。
デジタルメディアのトレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。「ソニーの革命児たち」や「ソニーの野望」など、同社に関する著作も多い“鬼のソニーウオッチャー”でもある麻倉氏の目に、今秋のソニーはどのように映るのだろうか。
――今秋のソニーは例年にも増して新製品を多く投入しており、非常に勢いを感じさせますね。
麻倉氏: 今秋のソニーは「こんなソニーは見たことがない」いうぐらいアグレッシブで、「大爆発」と表現できるほどです。各社と同様、ソニーも毎年この時期には多数の新製品を発表していますが、今回は類を見ないほど「世界初」「世界最高」といったフレーズを冠した製品が並びます。これほどまで技術の優位性をアピールしてきたのは21世紀に入って初めてのことではないでしょうか。
ソニーは21世紀に入った当初ネットワークやサービスに注力しましたが、結果的にそれらは失敗に終わりました。そして2005年にストリンガー・中鉢体制へと変わった際、「ものづくりの復権」を掲げるに至りました。わたしがソニーをウォッチし始めてからかなりの時がたっていますが、今秋ほど「最薄」「最高画質」など、“最も”という文字を使ってアピールするのは見たことがありません。
薄型テレビもそうですが、BD製品にも非常に力が入っています。これまでソニーのBD製品はほとんど画質訴求をしてきませんでしたが、「こんな技術をどこに隠していたのか」と驚かされるほど、今秋の新製品は画質向上に結びつく技術の訴求を行っています。「新しい技術を開発して訴求する」というソニー本来の姿に戻ったという感がありますね。
テレビに3つの世界初
――それでは、代表的な2ジャンル、薄型テレビとBDレコーダーについて解説をお願いできますか。まずは「BRAVIA史上最高画質」「最薄」など“最”の文字が多く躍る薄型テレビです。
麻倉氏: BRAVIAの新製品には、3つの“世界初、世界最~”があります。KDL-55/46XR1の「部分輝度制御付きLEDバックライト」、KDL-40/46W1の「4倍速(240Hz)駆動」、KDL-40ZX1の最薄部9.9ミリという「最薄」です。
知られているように、液晶テレビの駆動速度アップと薄型化はソニーが先陣を切った訳ではありません。速度アップは日本ビクターが、薄型化は(ソニーは有機ELというアプローチを行っていましたが)日立製作所がそれぞれの先頭でした。出遅れていたこの2分野で、今回ソニーが先頭に躍り出たのは、以前からターゲットを今秋にあわせて技術を開発し、製品化の準備を進めていたからです。
ではなぜ、ここまでの“狙った”技術訴求をし始めたのでしょうか? ひとつは、全世界的な製品価格の下落に対して「画質」と「デザイン」という高付加価値化で対抗すること、もうひとつは、パネルや画像処理エンジン業界の再編――パネルに関しては、ソニーもパネルをシャープから導入する――によって業界的に部品の均一化が進む状況が進んでいるからこそ、“ソニーならでは”というオリジナリティある製品を作り上げる必要に迫られているからです。
マーケット的な必然性から言えば、ワールドワイドでサムスン、国内ではシャープと戦うわけで、オリジナルな技術開発からアセンンブルまで「ソニーここにあり」というイメージ戦略を行う必要に迫られているからです。
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