矢野渉の「金属魂」的、デジカメ試用記
心を豊かにさせる“くすぐり”――ペンタックス「K-7」(2)
この試用期の初回(→指2本で探る宝箱――ペンタックス「K-7」)で「K-7はハイアマチュアのための宝箱」だと僕は書いた。今回は、そのあたりをさらに掘り下げたいと思う。
K-7の付属品で目をひくのは「三角環(さんかくかん)カバー」だ。
おそらく40代半ばよりも若い世代にはこのカバーの本当の意味が理解できないかもしれない。このアクセサリーはカメラがまだレンジファインダーだった頃、主流だったものだ。
金属のリングがカメラのボディとこすれて傷をつけてしまうことを防ぐための工夫だが、僕はむしろデザインとしてとらえていた。ライカM3などのレンジファインダーカメラは、プリズムを持たない分ボディが小型軽量だった。当然ストラップも細い、1センチ幅ほどの牛革製がデフォルトになる。その両先端にこのリングカバーが雪洞(ぼんぼり)のようにくっついていると、そのバランスがとても可愛いのである。
周囲の人間も「あの人は自分のカメラを大切に思っているのだ」とやさしい気持ちになれる。プロが道具としてカメラを使うのとは対極にある、ハイアマチュアの心意気を凝縮したようなアクセサリーだったのである。
しかし一眼レフが主流になり、カメラが大型化し、そのデザインも未来的な有機生命体のようになってしまうと、クラシカルなリングカバーははやらなくなってしまった。
それをあえてペンタックスは付属品として付けたのだ。これはK-7が小型・軽量だというさり気ない主張だ。リングカバーをつけても確かにバランスのいいボディである。
そしてもうひとつのメッセージは「私たちはあの時代を忘れてはいませんよ」ということだ。フィルムの時代からずっとハイアマチュアであり続けたオヤジたちは心を打たれるだろう。K-7のこういった「くすぐり」はあちこちに見られ、持っているだけで心が豊かになるカメラだ。
K-7の機能面は、多彩すぎて書ききれない。おそらく現在できることはすべて網羅し、詰め込んである。しかし設計の対象は常に「ハイアマチュア」だ。例えば水平自動補正などはプロなら眉をしかめるような機能だが、アマチュアはぜひ使いたいと思うだろう。100%の視野率を持つファインダーを持ちながら、ライブビューもできる。そんなところがK-7の真骨頂だと言えるだろう。
もうひとつ、写真を長く趣味にしてきた人たちにとってうれしい事は「PCレス」という方向性だ。3型の背面液晶内ですべての作業が行えるのだ。撮影時の様々なパラメーターは細かく設定できるし、それをライブビューで見ながら作業ができる。また、RAWで撮影したデータをカメラ内で現像することさえ可能だ。この場合も、現像はカメラまかせではなく自分で色々といじることができる。
フィルムの時代を知っている人は、とりあえずRAWで撮影しておいて後は家に帰ってからゆっくりPC上でいじればいいや、という感覚に違和感を感じているはずだ。ありったけの注意を払い、緊張感でいっぱいになってシャッターを切るのが「写真」だったのに、と。
「PCレス」ができれば、その昔の感覚に少しだけ戻れるだろう。撮影時に液晶を見ながら試行錯誤をしてシャッターを切り、その場で完結する。これが静止画の本来の姿だ。PC上での後処理を前提とするならば、それはむしろ動画の感覚に近くなってしまう。
とりとめもなく書いてきたが、K-7はぜひ欲しいカメラだ。レンズは短焦点のリミテッドが2本ぐらいあればいい。ズームは買ってはいけない。コリッとはずしてカチャンとはめこむ。レンズ交換もカメラを楽しむひとつの行為なのだから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
2
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
-
3
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
4
GMO、PCのバックアップと電源オフ呼びかけ VPS利用者に きょう正午の攻撃予告受け
-
5
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
6
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
7
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
8
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
9
「若手はAI使うな」は“老害”なのか? 新人教育で「AI禁止」した企業の1年後
-
10
政府、サイバー攻撃の「緊急対策パッケージ」来週中に策定へ 高市首相がサイバー閣僚会議の初会合で指示
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR