楽器とエフェクターをクラウドに――ヤマハが示す、IT×音楽(2/3 ページ)
既に動いているクラウド型VST
では、具体的にはどのようになるのか。3月1日に行われたデモでは、Windows版CubaseにPlugin Dockというソフトを組み込んだものが使われた。ユーザーは、Plugin Dockを経由してDAWに入力されたデータを操作し、その処理をクラウドで行い、その結果をまたマシンに戻す。Plugin Dockからはまだ組み込まれていないプラグインを選択可能になっており、そこからさまざまなエフェクターを取得して、Cubaseに取り込まれているトラックに反映させる。
女優の浅井江理名さんが歌った「赤いスイートピー」のボーカルトラックを使ったデモでは、イコライザとリバーブ、そしてハーモニーエフェクトのPitch Fixを使用した。そのすべてがクラウド経由。ネット越しで処理されるため、レイテンシー(遅延)が発生する。この場合は約2秒。
レイテンシーが大きすぎると使いものにならないケースも存在する。そういうときのために、ローカルマシンのCPUを使って処理するLocal Processingというオプションが用意されている。クラウドではなくなるが、その分レスポンスは速くなる。ローカル処理するかクラウド処理するかはユーザーが決められるというわけだ。
クラウド化するメリットはローカルマシンの負荷軽減だけではない。VSTプラグインベンダーは、DAWソフトの中にショップを持つことができることになる。Plugin Dockの中に、1日利用とかフル機能とかのオプション付きでアプリを購入できる機能が付けば、iPhoneにおけるアプリ内課金のようなシステムも作り上げることができる。このコマースの部分でヤマハと組むのが、ビープラッツ。企業向けのSaaS提供で実績を持つ企業だ。海外への展開も視野に入れている。
iPhone、iPad、Androidも? クラウド型VSTの可能性
ヤマハはこの次世代VSTに、Windows、Macといった従来のプラットフォームの先を見ている。例えばiPhoneではPocketGuitar、iShredなどのギターアプリ、Manetron、Pocket Organ C3B3などのビンテージ鍵盤楽器、8bitone、nesynthといったチップチューン音源をはじめとするさまざな楽器アプリが毎日のようにリリースされ、大きな市場を作り出している。
iPhoneという小さな画面では実用性で二の足を踏む場合もあるだろうが、これがiPadになると、DAW用コントローラや鍵盤コントローラ、サンプラーとしても実用レベルとなる。自由自在にデザインできるタッチ画面があれば、マウスでコントロールする以上の操作性が実現できる。
そして、いずれは楽器コントロールに特化したAndroidデバイスが登場してくるかもしれない。クラウド型VSTは、そのときの標準的なソフトウェアプラットフォームとなる可能性を秘めている。従来のPC向けアプリと同じクラウド処理、コードで対応可能となることのメリットはデベロッパーにとって大きいし、同一ライセンスでPCからモバイルデバイスまで使えるとなれば、ユーザーも喜ぶだろう。
クラウド型VSTの中では、現在のVSTやVSTiはそのまま動作しない。ヤマハはこれからアプリの仕様を決め、SDKを作るなどしてデベロッパーに広めていくことになるが、そのスケジュールは未定だ。どのバージョンのCubaseからこの仕組みがバンドルされるかなどについても決まっていない。
しかし、バーチャル楽器市場を広げる仕組みとしてクラウド型VSTはかつてない可能性を秘めており、今後の展開を見守っていきたい。既にVSTiとして提供されているVOCALOIDがクラウド型VSTにのらないというのは考えにくいし。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
グッスマ、顧客の2800人のカード番号全16桁+セキュリティコードなど流出か 下4桁は40万枚分
-
2
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
3
楽天カード、本人認証をワンタイムパスワードに統一 27年2月から順次
-
4
「PayPay連携の銀行から、お金全部盗られた」被害報告……原因と対策は? PayPayに聞いた
-
5
松屋の公式アプリとWebサイトが停止 不正アクセスを検知、モバイルオーダーや弁当予約も使えず
-
6
ベネフィット・ワンの委託先に不正アクセス セゾン会員向け優待サービスで約2.9万人分の個人情報漏えい
-
7
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
8
ANAの予約情報に不正アクセス、JALと同じ委託先経由で 個人情報をのぞき見た痕跡も
-
9
不正アクセスによる漏えい人数、半年余りでのべ2億6000万人に 日本人口の2倍超
-
10
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR