IntelのMcAfee買収、その意味は
半導体大手の米Intelによるセキュリティソフトメーカー米McAfeeの買収は、単に2つの会社を合わせて1つの大きな会社にするというだけではない。Intelが自社の製品ライン全体で、セキュリティのレベルを引き上げると決断したことの表れでもある。さらに、Intelが重要性の高い独自製品を提供することで、米Cisco Systemsなどのネットワーク・通信機器ベンダーに対抗する準備をひそかに進めていることも示している。
Intelの方向性がうかがえる手がかりの1つが、同社が先に米Texas Instruments(TI)のケーブルモデム事業を買収したことだ。これもまた、数年前にケーブルインタフェース技術大手の米Scientific Atlantaを買収したCiscoに対抗する動きだ。Ciscoの買収はほとんどが表に出るものではなく、Scientific Atlantaのケーブルモデムは5年前とあまり変わっていない。
Intelはこの状況に新たな要素を加えている。ファイアウォールや侵入検知、マルウェア検出などのセキュリティ機能が組み込まれたケーブルモデムを想像してみてほしい。McAfeeは既に、こうした機能を持つソフトウェア技術を有しており、エンジニアリングのノウハウもある。だがもちろん、これは優れたケーブルモデムだけにとどまらない。いずれにしても、Ciscoは手持ちのファイアウォール技術を自社のケーブルモデムに簡単に統合できる。
セキュリティ機能付きケーブルモデムを作ればIntelとその顧客にとって大きなチャンスになるかもしれないが、Intelが手がけているのは半導体や最近買収したケーブルモデム事業だけではない。同社は長年、ネットワークアプライアンスから他社のブランド名が入った受託製造のプロセッサ基板まであらゆるものを作ってきた。McAfeeの買収で、Intelは、社内リソースを活用して、自社で作るものほぼすべてにセキュリティを組み込む手だてを得ることになる。
さらにこの買収は、McAfeeがPCとその関連製品以外にも市場を広げられることを意味する。ゲーム機からBlu-rayプレーヤー、テレビまで、セキュリティはインターネットに接続するほぼすべてのデバイスの問題になるだろう。現在、先進的なマルウェア作者には、Wi-Fi機能つきビデオプレーヤーなどを使ったボットネットという未踏の地がある。これらのデバイスにはファイアウォールはない。この種のデバイスがCATV会社のテレビサービスに接続された場合、攻撃の手段は1つではない。ユーザーはデバイスがどのように機能するか、何をやっているか、ほかに何が動いているかをほとんどコントロールできない。
時に、ユーザーは大容量HDD、高速インターネット回線、高速CATV接続を備え、有効な監視の手段がないそこそこ強力なコンピュータを持っている。それはDVR(デジタルビデオレコーダー)と呼ばれるかもしれないが、マルウェア作者にとっては攻撃の機会だ。だが、McAfeeを子会社に収めたIntelがこうしたデバイスにセキュリティを組み込んだら? 少なくともIntelのケーブルデバイスはセキュリティのないデバイスと比べて魅力的なターゲットではなくなる。
こうすることで、Intelは大きな競争上のアドバンテージを得られる。CATV会社はたいてい、エンターテインメント企業である上にISPでもある。こうした企業にとって、マルウェアは少なくとも、トラフィックを増やし、顧客サポートへの問い合わせを増やすため、間接費を増やす大きな原因となる。ユーザー、特に小規模企業がケーブルモデム経由で攻撃されたら、法的な問題になる可能性もある。現実的で有効な組み込みセキュリティは誰にとってもメリットがある。
CATV会社は、自分たちのネットワークは安全だと主張するだろう。外部からの攻撃を防止する取り組みをしているところもあるのは事実だ。だがCATV接続を少し監視してみれば、マルウェアによるプローブが見えてくるだろう。このため、例えばわたしは、自宅のケーブルモデム内でファイアウォールを走らせている。
デバイスがスマートになり、コンピューティング技術が広まるにつれて、リスクも高まる。今や多数のデバイスがインターネットに接続されている。たとえ汎用コンピュータが難攻不落になったとしても、感染対象となるプラットフォームはたくさんある。もちろん、コンピュータは難攻不落にはならない。マルウェア作者も挑戦をやめない。「ネット対応デバイスという巨大な未踏の地は、攻撃に無防備だ」とマルウェア作者が判断することは確かだ。ほかに選択肢があるのに、防御されたものを攻撃して時間を無駄にするわけがない。
IntelのMcAfee買収は、少なくともIntel製デバイスにある程度の防御力が備わるかもしれないということを意味している。この買収がどう展開するかを理解するには学ぶことがたくさんあるが、その根拠はおかしくはないと思う。Intelは、広範なスマートデバイスの市場が、次のセキュリティの戦場にならないようにしようとしているのかもしれない。
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