“音楽制作の最先端”だからできたハイレゾ音楽配信、「VICTOR STUDIO HD-Sound.」(2/2 ページ)
9月5日に配信を開始した第1弾には、ジャズ/フュージョンとクラシックを中心に20作品がラインアップされているが、鈴木氏のいう通り、音質にはこだわっても、ジャンルやカテゴリーにこだわりはない。中には「鬼太鼓座」(おんでこざ)のような純邦楽やフラメンコギタリスト・沖仁さんのアルバムなども含まれている。
配信フォーマットは、96kHz/24bitあるいは192kHz/24bitのWAV(非圧縮)およびFLAC(可逆圧縮フォーマット)が中心。ただし、沖仁さんのアルバムはDSD(1bit/2.8MHz)とWAVの両方で配信されている。これはハイレゾ音源配信のトレンドにのったわけではなく、「オリジナルDSDマスターがあったから」だ。「2011年8月に収録された『Concierto[コンシエルト]~魂祭~/沖仁』は、1bitレコーディングによるオリジナルDSDマスターと、オリジナル96kHz/24bitマスター音源の2つが存在した。マスターの音をそのまま家庭に届けたいので、両方をハイレゾ音源として配信した」。
配信タイトルには必ず「1インチアナログマスター」や「ダイレクトカッティング・レコード音源」「アナログマスター音源」「ハイレゾデジタル音源」といった音源に関する注釈が付いている。1インチアナログマスターとは、文字通り2.54センチも幅があるアナログテープに2チャンネル収録するというぜいたくなもの。「究極のアナログ音源」などと呼ばれ、機材もテープも高価なため、あまり使われることはない。逆にいえば、1インチアナログマスターに収録された楽曲は、当時の制作者が音質に対して強いこだわりを持っていたことを示している。
またダイレクトカッティング・レコードは、磁気メディアなどを介さず、マイクで収録した楽曲を直接レコード用ラッカー盤に刻む方式。「例えばアルバム収録などでは、最後の曲でミスをすると最初からやり直し。一発勝負のため、こちらも希少価値が高い」(秋元氏)という。音質にこだわるマニア向けに制作されたタイトルやアーティストの希望で作られたタイトルが多く、ラッカー盤自体は失われても同時録音のアナログマスターが残っているケースがあるという。
収録現場の雰囲気まで分かるコメンタリー
音源購入時に入手できるPDFファイルには、収録当時の機材からエンジニアの名前、スタジオ、録音手法までこと細かに記載されている。これは、同社サウンドプロデューサーの高田英男氏が、当時のエンジニアなどに取材して1つ1つ書き下ろしたものだ。
「録音時の状況や当時の制作環境はもちろん、そのときの苦労まで熟知しているエンジニアがいるのはスタジオの大きな強み。制作者の視点でアルバムの“聞きどころ”に関するコメントも入れ、ハイレゾ音源に新しい価値を提供したい」と鈴木氏。実際にコメントを書いている高田氏は、「楽曲の背景や“物語”を伝えることで、制作者の“思い”まで伝わったらうれしい」と話す。古いアナログ機器やエンジニアの感性を大事にするビクタースタジオならではのサービスといえそうだ。
なお、e-onkyoのビクタースタジオ特設ページでは、音源の購入前にも高田氏のコメント(要約)を読むことができる。好きなアーティストや好みのジャンルで楽曲を探すのも良いが、たまにはエンジニアやプロデューサーの“思い入れ”で楽曲を選んでみるのも楽しいかもしれない。
「今回は1970年代から80年代のフュージョンを多くラインアップした。聞き慣れた楽曲だからこそ音質の違いも分かる。もう一度、ハイレゾで聴いてみることの感動を提案していきたい」(高田氏)。
ビクタースタジオでは、2012年度中に70作品まで拡大する予定で、年内にも第2弾を発売する方針。また、CDマスター(48kHz/24bit)のみの作品も多いことから、今後は同社のK2 HD技術でアップサンプリングした音源の配信なども検討していくという。
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