反日デモ暴動に「あまりに愚かで悲しい」「義和団や文革のようだ」──中国のネット「理性愛国」の声(2/2 ページ)
行動で反対を示す人も
暴動に行動で反対を示す中国人もいたことを紹介したい。広東省広州でのデモでは、広州を代表する高級ホテル「花園酒店」(ガーデンホテル)がロビーを中心に破壊されたが、一方で掃除をする学生達の写真も貼られ転載された。日本と中国の合弁メーカーの車が破壊されたが、手書きの紙でこの先危険なので迂回してくれと訴える男性もいた。この男性を反害国のネットユーザーは支持し、転載した。
また先日起きた雲南大地震の被災地でボランティア活動をしていた日本人男性が襲撃されるという極めて残念な事件が発生した。その後微博でホットトピックとなるほどこの事件は話題となり、微博や掲示板では日本人ボランティアへの謝罪のコメントが多数投稿された。
陝西省西安のデモではホテルが襲撃され、この映像は日本のテレビでもたびたびが報道された。だがネットユーザーは「デモの黒幕は誰か」を追跡し、正体を暴き(これを「人肉捜索」という)、黒幕が地元の派出所の所長ではないかとした(西安市公安局はプレスリリースでそれを否定している)。そんな西安当局は17日には他の地域に先駆け、あらゆるデモを禁止にしたというプレスリリースを発表している。
ほかにも、中国各地でのデモが「地元民ではない集団」や「前科持ちの集団」によって起きているという指摘が微博のつぶやきやブログなどにより広がっていった。デモの中で「暴動なき愛国、理性ある愛国」を訴える集団もいた。「中国政府こそ問題」とお手製のプラカードで訴える人もいた。暴動を起こしたデモ隊の数は様々な映像で見てのとおりだが、一方でこういう中国人もいるのだ。
当局も「いい愛国」への誘導を開始
中国のネット規制を見ると、短い時間内ながら、デモ情報どころか反日などのキーワードまで削除が行われた。平時から無数のサイトで無数の書き込みがされている上に、ましてやネット上で問題への注目が集まるこの時期、ネット監視の仕事量は計り知れない。ネットユーザーの関心事や投稿を知るために、中国では「ネット世論監視ソフト」(輿情監控系統)が複数のソフトウェアベンダーから政府機関向けにリリースされている。
このネット世論監視ソフトの細かな仕様については割愛するが、簡単に言えば、「気になるワードをセットすると、ほぼ全ての中国語サイトを対象に、どこでそのワードが書き込まれたかを1分置きなど短い周期で検索し、ネガティブな書き込みを自動的に抽出した上で、レポート画面を出し、さらに問題があるサイトや警察に通報する」というもの。興味があればこのワード「輿情監控系統」(簡体字)で画像検索なりPDFなどの文書検索なりしてみるといい。プレゼンテーションファイルや説明書などが確認できよう。
ネット世論監視の権威的存在である人民日報のネット世論部隊「人民網輿情中心」などのネット世論リサーチセンターは、毎日ネット世論レポートを発表している。が、反日デモ後は一時的に珍しく更新が行われていなかった。何が話題なのか、どう導くべきかは、外部には出さないでいるわけで、異例なほど対応にナーバスになっているに違いない。
こうした中で「反日デモの書き込みがあっという間に消された!」という中国人の声をネット上で多く見かけた。当局によるネット規制の手段の1つ、「声を消す」という作業では、フォロワー41万人を抱えるオピニオンリーダー「笑蜀」氏を始め、複数人の微博アカウントが消されるという事態も起きた。さかのぼれば今年4月、微博の返信機能を停止した前例がある。つまり当局は微博そのものを封鎖し使わせないという手段もとってきた。
「声を消す」に加え、「ネットの意見を誘導する」という手段もメジャーだ。中国政府、地方政府各部署の担当者が積極的にプレスリリースを微博で発表し、フォロワーから誘導していこうというものだ(これを「微博問政」という)。中国人の政府不信が言われがちだが、とはいえ信じる人も結構いて、数十万のフォロワーを抱えるアカウントもある。
前述の人民網輿情中心によるレポートでは、前日の書き込み数、アクセス数、転載数などから話題のトピックや書き込みをまとめている。17日は「暴動ではなく理性あるデモを各担当者が訴えよ」と呼びかけた上で、「暴動ではなく理性」に誘導するつぶやきをしていない政府・政府系メディアの微博アカウントを名指し、暗に非難した。人民網輿情中心の記事を政府機関が無視したという前例は聞いたことがないので、今後、各政府微博アカウントは暴動を止める投稿を全力で行うだろう。各中国メディアも「日本による尖閣国有化に反対の声を挙げよう」と掲載した上で、「しかし暴力による愛国は禁止」と訴えている。
中国漁船1000隻が尖閣周辺海域に出発したという報道に対し、ネットでは過激な愛国も穏便な愛国もそれぞれある。船団が尖閣諸島に行った結果、よほどの結果がない限り、“害国”な暴力的愛国者の発言が煙たがれているいま、当局の誘導によりネット世論は「理性ある、暴力なき愛国の支持」に収束していくだろう。ただ、全てが収束するのではなく、“黒幕”のならず者による暴動が起きても不思議ではない(例えばターゲットがデパートや家電量販店なら、強盗上等な害国の人々にとっては非常に魅力的だ)。しかし内心うんざりしていた多数派の中国人庶民のベクトルに、ネット世論のコントロールが乗ってきた結果、庶民はより冷静に愛国を訴えるようになるだろう。
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