山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」
今年一番印象に残った4Kテレビ、三菱“REAL 4K”「LS1」の鮮烈な音(2/2 ページ)
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「本物の高級テレビをつくろう」
三菱電機にとって、LS1 シリーズは初の4K対応テレビだ。同社京都製作所の企画開発陣に何度か話を聞く機会があったが、企画が動き始めたときから「初めての4K対応テレビなのだから、妥協を排してブランド・イメージ向上に資する本物の高級テレビをつくろう」と、メンバーの士気はひじょうに高かったという。
三菱電機は、1970~80年代に熱狂的な信者を多数生んだ家庭用スピーカーの名門ブランド、「DIATONE」(ダイヤトーン)を擁している。現在はピュアオーディオ・ビジネスは止め、カーオーディオ用スピーカーに特化して意欲的な製品開発を続けているが、LS1 のアルミニウム製円筒型ステレオ・スピーカーや各種音質補正技術の開発にはそのカーオーディオ部隊が全面的にバックアップ、全ダイヤトーン態勢で製品化が勧められたのだという。
まず、LS1の美しい立ち姿を見てほしい。画面両サイドに配置されたアルミニウム製円筒型スピーカーの下にテレビ全体を支える脚が取り付けられ、ジョイントしたディスプレイ部が空中にぽっかり浮かび上がってくるようなデザイン。数ある4K対応テレビの中でも出色の美しいカタチだと思う。ブラウン管時代はともかく、薄型大画面時代になってからずっと影の薄かった三菱の、本機にかける想いの強さがそのデザインに結実しているかのようだ。
LS1の音のよさを実現した要素技術はさまざまだが、まず注目すべきはスピーカーの振動板素材NCVの採用だ。これはカーオーディオ用として同社が開発したもので、樹脂にカーボンナノチューブを配合した素材。金属のチタンなみの伝搬速度と大きな内部損失(=固有音が少ない)を併せ持つ。米国製の超高級スピーカーにも採用例がある、スピーカーの振動板として理想的な特性を示す注目の素材なのである。もちろん高コストな素材だが、「本物の高級テレビ」を目指して本機には楕円(だえん)型ウーファー、ドーム型ツィーター両方に採用されている。
LS1は一般的なバスレフ動作を採らず、 2基のパッシブラジエーターを用いて低域を強化している。最低共振周波数は、上側を65Hzに下側を75Hzに設定したというが、その値に落ち着くまでに何度も聴感テストを繰り返したという。また、このスピーカーで興味深いのは、高域を受け持つ40ミリツィーターが2基搭載され、上側のそれが上向きに配置されていること。これは高さ/ 奥行き方向の音の広がりを向上させることを意図してのことだと思うが、開発者に訊くと、その上向き角度を 5度ずつ変化させてその効果を確認し、最終的に20度に決定したという。このように粘り強くカット&トライを繰り返して音質を詰めていくことで、LSは「テレビ史上最強の音」を達成したのである。
ちなみにこのツィーターの高域再生限界は50kHz(-10dB)。スピーカーだけでいえば、立派にハイレゾ対応である。LS1はBluetoothで音楽再生が可能だが、HDMI接続したBDプレーヤー/レコーダーでCDやハイレゾファイルを再生しても、じゅうぶんにその良さが分かる音に仕上がっている。
もちろん本格的なHi-Fiスピーカーに比べれば、低音の伸びや量感で物足りないところはあるが、ヴォーカル帯域である中音域のニュアンスの豊かさは出色で、単なる「テレビ受像機」として活用するだけでなく、「リビングルームのステレオ」として本機を積極的に活用することが可能なのではないかと思うほどだ。
また、本機には圧縮音源で不足しがちな高域成分を類推補間する「ダイヤトーンHD」や倍音を活かして低音感を補強する「ダイヤトーンBASS」、内蔵スピーカーだけで自然な音の広がりを演出する「ダイヤトーンサラウンド5.1」など、同社オリジナルの興味深い音質補正回路が搭載されているが、その完成度もきわめて高い。
本機には2Tバイトの大容量HDDが内蔵されており、圧縮音声のAACで収録されたWOWOWなどの良質な映画・音楽コンテンツを本機内蔵HDDに録画・再生すれば、これらの音質補正回路の効用のすばらしさを誰もが実感できるだろう。とくに「ダイヤトーンサラウンド5.1」は逆相感があまり気にならず、とても快適。他社提案の疑似サラウンド方式に圧倒的な差をつけていると思った。
LS1の注目ポイントは音質だけではない。近年同社が推進してきた赤色レーザーとシアン色LED の組合せによる広色域バックライトを用いた色彩再現力にもいっそうの磨きがかかった印象だ。
昨年のLSR6までは、赤の深さ、パワー感を強調するあまりホワイトバランスが追い込みきれていない印象があり、とくに不自然に赤みがかる(イッパイ呑んでるような? )肌色に違和感があった。
しかし今回のLS1の「シネマ」モードでは、高彩度部と低彩度部できめ細かく色のチューニングが施されたようで、スキントーンのナチュラルさを保ちながら、マリリン・モンローがまとうラメの入った真っ赤なドレス(映画BD「紳士は金髪がお好き」)を鮮烈な色で描き、ぼくは静かにコーフンさせたのだった。
チェックした最終試作機はバックライト制御がまだ完璧ではなく、黒からローライトの再現にもう一工夫ほしい印象だったが、そのへんの詰めの甘さは同社技術陣も自覚しているようだったので、量産機は大きく改善しているものと期待したい。
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