ハイレゾを最も手軽に楽しめる一体型ヘッドフォン(後編)――“フルデジタル伝送”のUSBヘッドフォン「AHT-DN1000USB」を聴く(1/2 ページ)
前回のソニー「MDR-1ADAC」に続き、紹介するもう1つのヘッドフォンは、オーディオテクニカが世界で初めて商品化を実現したフルデジタルUSBヘッドフォン「ATH-DN1000USB」だ。音源からボイスコイルまでのフルデジタル伝送に対応する。
オーディオテクニカは今年の春に192kHz/24bitのDACとヘッドフォンアンプを本体に内蔵したUSBヘッドフォン「ATH-D900USB」をリリースしているが、11月下旬に発売されたばかりの本機は「フルデジタル伝送対応」という新しいアプローチにより、PCオーディオ環境で一段と上質な再生環境を実現した注目機だ。
本機の革新のキーになるのは、Trigence Semiconductorの「Dnote」というデジタル音声処理技術。USB経由で入力されたPCMのデジタル音声信号をヘッドフォンに内蔵する「Dnote」のICチップに送り込んで、独自のデジタル信号に再変調された信号をドライバーユニットのマルチボイスコイルに伝えて振動を発生し、音を鳴らすという仕組みだ。
ボイスコイルは片側チャンネルに4つずつ搭載されており、それぞれに「0/1」で記録されているデータの粗密に加えて、「0を挟んで±4」の9段階の範囲で変化するマルチビットの値を“振幅”として伝えることで音を作り出すという、独自のアプローチがDnoteにはある。その効果はデジタル伝送ならではの高い解像感や、音の立ち上がり/立ち下がりのスピード感、SNの向上による透明なサウンドに結びついている。そこに加えてオーディオテクニカのエンジニアはさらに同社の40年間に渡るヘッドフォン開発のノウハウを投入することで、アナログ的な“ふくよかさ”や“濃厚さ”も併せ持つ、音楽性の豊かなサウンドに仕上げてきた。
PCのUSB端子に「つなぐだけ」
先端的なテクノロジーの説明ばかりしてしまうと、「もしかしてこのヘッドフォンをちょっと扱いが難しいのでは」と感じてしまうかもしれないが、本機の最大の魅力は「とてもカンタンにハイレゾが楽しめるヘッドフォン」だというところにあることを強調しておきたい。
まずセットアップの方法だが、Windows PCで使う場合はオンラインから専用ドライバーをPCにインストールしておく。Macの場合はドライバー不要だ。あとはPCに「foobar2000」や「Audirvana」などのハイレゾ対応プレーヤーソフトを入れておき、楽曲を再生するだけ。ハードウェアはPCと本機を揃えれば完結する、極めてシンプルなハイレゾリスニングのスタイルではないだろうか?もちろんハイレゾに限らず、iTunesなどでリッピングしたCDの音源を聴く際にも、フルデジタル伝送ならではのソースに忠実なサウンドの魅力が味わえる。
前回のソニー「MDR-1ADAC」はヘッドフォンの側でボリュームが調整できたが、ATH-DN1000USBは本体にコントローラーを持たず、ボリューム操作や曲送りは全てPCから行う仕様だ。ノートPCなどによるデスクトップリスニングがメインのヘッドフォンとしては妥当だと思う。ハイレゾ音源を再生すると左側のハウジングに搭載されているインジケーターが点灯し、再生する音源のサンプリング周波数に合わせて色が変わるようになっている。
ヘッドフォンを駆動するための電源はUSBバスパワーでPCから給電できるので、別途電源プラグ等は必要ない。AndroidスマートフォンやiPhoneとUSB OTGホストケーブルを介してつないでハイレゾ再生を楽しむことはできないので、そこは今後の展開に期待したいところではあるが、PCによるヘッドフォンリスニングを革新するヘッドフォンとして、十分に使いやすくて意欲的なモデルだと言える。
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